第10話 続・真菅怒られる

若めの男性からの注文。「異世界にあるスタミナ丼」謎な肉とか。謎な昆虫食?とかとか普通の生活では見たことなかったものを多数使った料理。

いや、今までも異世界――というような感じの注文はあったが――ここまで謎なものオンパレードは初めてでね。俺かなり心配――というか。まあ香りは良し。味は――不明だからな。

もしかしたら「食えん」「マズイ」「なんだこれ!?」とかいう反応も予想しながら見ていると――。

男性は一口。さらに一口と食べていき――。


「—―美味いな。なんだこれ。初めて食べたが。美味すぎる。おかわりありますか?多分もう1杯行けます」

「……マジですか」


そんな声が若めの男性から聞こえてきたのだった。ちなみに、注文が入れば――この店の棚とか冷蔵庫いつものように――。


「——」


バタン。


「真菅さん?」


うん。また先ほどと同じ状態の物登場である。いや、一度調理したから扱いはそりゃ先ほどよりかはわかっているが――ってそもそもおかわりってのもかなりレアなような――あっ。そうか。年齢層が今まで高かったかそこまでバクバク食べる人が居なかっただけなのかもしれない。


「真菅さん?大丈夫ですか?フリーズしてますよ?」


おっと、香良洲の声が聞こえていたんだな。ちょっと再度の衝撃映像で俺意識が飛んでいたよ。本当に死ねたかもしれない。


「大丈夫だ」

「どうしたんですか?」

「なあ香良洲」

「はい?」

「調理するか?気分転換に?」

「なんのですか?」

「今俺が作ったどんぶり」

「……」

「あっ。香良洲が次はフリーズした」


ちょっと交代と思ったのだが――俺の作戦失敗である。声をかけて見たら香良洲固まったである。全く動かず――いや、動いている。そして、水を再度準備して――。


「オミズノオカワリイカガデスカ?」


突然片言で話し出したのだった。なお、若めの男性はそんな香良洲を見て。


「おっこれはさらに異世界に来た感じだな。良いサービス」

「……」


そんなことを言っていたのあった。ある意味このお客さんすごいわ。そんなことを思いつつ俺は第2ラウンドを開始したのだった。


ダンダンダン。


ブニブニブニ。


ポヨンポヨン。


ダンダンダン。


ブニブニブニ。


ポヨンポヨン。


絶対おかしい音が調理場に響いていたが―—お客さんも香良洲も触れてくることはなかった。

それから少しして――。


「お待たせしました」

「おお、キター、もう1杯まだいけるかもだけど――あっ、すみませんこの粉。追加できますか?」

「——かしこまりました」


つん――バサッ。


まるでマジックかのように俺はすぐに粉を出した。いや、これはこれで謎だよな。突っついたら粉になるって。どう見てもその前の状態。昆虫?の形の時は普通に持てるのに。その後まな板の上で突っついたら粉に――謎だ。でもまあ――謎な肉とかを扱うよりかははるかにマシだ。あっという間に終わるしな。


それから俺が大変なことになってた流しを片付けている間——いや、使えなかったところ多数でね。ポイポイとりあえず処理していたら――えらいことになっていたのでその片付け中である。まあそんな中、美味しそうに若めの男性は異世界にあるスタミナ丼。とやらを2杯完食し――よかったよかった再度のおかわりはなかったのだった。マジで良かったよ。さすがに3度目は――だったからな。


「美味かったー。いや、ありがとう。満足だ」

「いえいえ、よかったです」


若めの男性はそう言うと席を立った。そして出口へと歩いて行く。本当に体力回復――いやスタミナ丼だから――持久力アップ?まあいいか。とりあえず男性の後ろ姿は――元気そうなので良しとした俺だった。


「……凄いな。美味しいのか。って俺が凄いのか」


こういう料理もありなんだな。というのと、調理したことなくても何とかなる。肉は肉。などと俺が思いつつ若めの男性の後ろ姿を見ながらつぶやくと――。


「いやいやマスター。試食しました?」


ふいに香良洲がそんなことを聞いてきたので俺は正直に――。


「いや、雰囲気で作った。あれは食えん」

「してくださいよ!得体のしれないものお客さんに出さないでください!」

「あー、はいって――じゃあ香良洲食えるか?」

「無理です」

「香良洲が作った場合は?」

「無理です」

「——」


……まあ従業員に怒られた俺だった。でもお客さんは美味しかったらしく喜んでいたからまあいいだろうである。俺と香良洲が何か言い合っている間に、若めの男性は――他の人と同じようにお店の外へ。そして――。


気配が消えたのだった。


「—―もう来るなよ。絶対。しばらく異世界物はいらん。マジでしばらくいらん。だから絶対来るなよ」

「——真菅さん必死すぎます」


さすがに言う言葉が多かったからか。香良洲に突っ込まれた俺だっ――。


「って、ホント味見はしましょうよ。真菅さん。お客さんに出す料理なんですから。特に初めて作るものは」

「またか。って、香良洲も無理言っただろうが」

「無理です。私は無理です」

「なら俺も無理だ」

「真菅さんはここの店長なんだからしないとダメですよ」

「なら店長命令で、従業員に――そうだな。1人だと味がわからなくなるかもしれないから」

「私従業員じゃないです」

「ノリノリで接客してたよな?」

「してませんよ」

「エプロン貸してぞ?」

「これは――」


ちなみにその後、俺と香良洲は2人でそんなことを言い合って――結果。


「——食ってみるか」

「——これで死んだら真菅さん呪いますから」

「大丈夫だ死んでるはずだし」

「……でわ」

「ああ」


少しだけ残っていたもので俺と香良洲同時に試食をしてみたのだった。


結果は――。


「美味い」

「美味しい――」


だった。

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