第127話 ステフ歓迎会2

 おずおずと差し出されたステフのタグをシンシアと一緒に覗き込む。


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【名前】 ステファニー

【年齢】 22歳

【人種】 普人種

【性別】 女


【レベル】205

【ジョブ】盾闘士

【ジョブランク】 2

【スキル】

 ・頑堅 レベル8

 ・体術 レベル7

 ・短剣術 レベル5

 ・盾術 レベル10

 ・オーラ・レセプター


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 俺はステフのステータスを確認する。

 レベルやスキルはサード・ダンジョンに挑んでも問題ない値だ。

 レベルが高めなのは、今日のロード戦とガーディアン狩りでいくつかレベルアップしたからだろう。

 一日でいくつもレベルが上がることは通常ありえない。

 俺たちはもう慣れたが、ステフはレベルアップするたびに驚いていた。


 ひとつ気になるのは【オーラ・レセプター】というスキルだ。

 聞いたことがないスキルだ。

 ユニークスキルだろうか。

 今日の戦闘では使っていなかったようだが……。


 冒険者として必要な情報をひと通り読み終え、基礎情報に目をやり――。


「なッ!?!?」


 そこに書かれていた情報に、俺は腰を抜かしそうになった。


「えっ!? えっ!? ステファニー!?!? 女!?!?!?」


 驚きながらも、俺はステフの顔を再確認。

 綺麗に整った中性的イケメン。

 いや、ボーイッシュな美女……なのか!?


 混乱した俺は、確認しようとステフの胸を見やる。

 そこには女性にあるべき二つのものが、やはり見当たらない。

 タンクの割には薄い胸板だと思っていたが……。


 あっ…………!!!


 もしかしてコイツの二つ名の【絶壁】って……。

 性別が明らかになった今、俺はその意味を悟る。

 てっきり、守備力の高さからつけられたものだと思っていたが、まさかのダブルミーニングだったとは……。


 そりゃあ、二つ名で呼ばれたくないわけだ……。


 しかし――ステフが女性だとすると、いろいろと合点がいく。


 ステフに口説かれたシンシアが言っていた「そういう趣味じゃない」という言葉。

 イケメンには興味がないという意味だと思っていたが、ステフが女性であれば、まったく別の意味になってくる。

 「そういう趣味」ね……。


 そして、ボス部屋前で冒険者に言われた「ハーレムパーティーとか羨ましすぎる」という言葉。

 そのときは「なに言ってんだ?」と気に留めなかった。

 だが、知っている者にとっては、支部長は別枠として、俺が三人の美女・美少女をはべらかしているようにしか見えないだろう……。

 そういう意図はないのだが、妬まれてもしょうがない状況だ。


 ステフの「男嫌い」も、今まで男にしつこく言い寄られて来たからだろう。

 シンシアやサラほどではないが(俺の主観)、ステフも美しい女性だ。

 口説いてくる男は数えきれないほどいたのだろう。

 そして、中には悪質なヤツもいる。

 好みでもない相手に付きまとわれれば、嫌な気になるのも当然だ。


 いやはや、先入観とは恐ろしいものだ……。


 情報収集していると、自然と有名冒険者の名前は耳にする。

 ステフの名もそのときに聞いたが……冒険者の性別まで気にしないもんなあ。

 大抵は名前で性別分かるし、見た目で分かる。


 誤解に一役買ったのは、ステフの職業だ。

 盾職は男が多いからすっかりそうだと決めつけていた。

 ステフというのもステファンという男性名の略称だと思っていた。

 まさか、女性だったとはね……。


 となると……ロード討伐後、ステフに群がってきた女の子たちは「そういう趣味」なのか…………。

 中性的な美しさとイケメンな態度。

 その手の女の子には、抜群の人気だろう。


 ステフの性別を知って、もやもやしていた気持ちが一気に晴れた。

 シンシアへのちょっかいに、思っていた以上にストレスを感じていたようだ。

 だがそれも相手が女性と分かり、だいぶ緩和された。


「えっ、もしかして、ラーズは知らなかったの?」

「ああ、すっかり男だと思っていた」

「なっ!? この気高き私を男などと一緒にするとはっ! 失礼な奴だなっ!!」

「いや、すまん」


 これに関しては勘違いしていた俺が悪いので、素直に頭を下げる。


「シンシアは知っていたんだな」

「もちろんよ。この街じゃ有名よ。女の子と見たら、手当たり次第に声をかけるんだもの」


 知らなかった俺の方が珍しいみたいだ。

 『無窮の翼』でこの街にいた頃は、早く攻略する事と、強くなる仲間たちに置いていかれないようする事で、いっぱいいっぱいだったからな……。


「私を口説いてきたのも、遊び半分よ。本気じゃないわ」

「そうだったのか……」


 男だと思い込んでいたから、シンシアに近づこうとするステフに過剰に反応してしまった。

 最初から女性だと知っていたら、また違った対応をしていただろう。

 シンシアを取られまいと、過敏すぎたかもしれない。


「いや、そんなことはない。私はいつも本気だ」

「みんなにそんな事言ってるんでしょ」

「それはその通りだが、私はどの子に対しても本気だよ。女の子は皆、それぞれ魅力的なのだから仕方がないではないか」

「…………」

「…………」


 呆れてしまうが、ここまで開き直っていると逆に清々しいかもしれん。


 一段落ついたところで、俺は忘れていたことを思い出した。

 ステフの性別問題ですっかり後回しになってしまったが、彼女のステータスに関して、もっと大切な問題があった。

 冒険者として一番大切なのは、性別ではなくスキル欄にあった【オーラ・レセプター】というスキル――おそらくユニークスキルだ。


「そういえば、オーラ・レセプターってどんなスキルなんだ? 今日は使っていなかったみたいだが」







   ◇◆◇◆◇◆◇


【後書き】

 百合っ子でした。


 次回――『ステフ歓迎会3』


 ユニークスキル。わくわく。

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