第742話 side:トレント

 私の身体が青い光に包まれてどんどんと大きくなっていく。

 あっという間に私の目線の高さは、魔獣王に等しいところまで来ていた。


【特性スキル〖愚鈍な身体:Lv--〗を失いました。】

【特性スキル〖グリシャ言語〗のLvが3からMAXへと上がりました。】

【特性スキル〖HP自動回復〗のLvが7からMAXへと上がりました。】

【特性スキル〖MP自動回復〗のLvが8からMAXへと上がりました。】

【特性スキル〖飛行〗のLvが4から8へと上がりました。】

【特性スキル〖世界樹の樹皮〗のLvが3からMAXへと上がりました。】


 頭の中に一気に声が響く。

 私のスキルのことを言っているのか、これは……?


 主殿が口にしていた〖神の声〗とやらにも似ているような気がする。

 先に手にいれただのと言っていた〖神の知恵〗とやらが何か関係しているのだろうか。



【特性スキル〖命の天秤:Lv--〗を得ました。】

【特性スキル〖神霊の盾:Lv--〗を得ました。】

【特性スキル〖因果率の魔眼:Lv--〗を得ました。】

【特性スキル〖楽園創造:Lv--〗を得ました。】

【耐性スキル〖状態異常無効:Lv--〗を得ました。】

【耐性スキル〖七属性耐性:LvMAX〗を得ました。】

【通常スキル〖アーカシャカウンター:LvMAX〗を得ました。】

【通常スキル〖ジェネシスマギア:LvMAX〗を得ました。】

【称号スキル〖世界樹〗が〖生命の樹〗に変化しました。】


 なんだ……?

 これが、私の手にしている力なのか……?

 呆気に取られると同時に、私の身体にそれらの力が馴染んでいることが、本能的に理解できる。


 どうやら今の私は大きな口があり、四足歩行のようであった。

 身体は今まで通り木のようであるが、〖不死再生〗発動時のように青く発光している。

 後ろには、大きな尾があった。


 この姿は主殿にも似ていた。

 そう……まるでドラゴンのようであった。


 この力があれば、もしかすれば、魔獣王を倒してアロ殿を助けることもできるのか?


【特性スキル〖崩神:Lv--〗を得ました。】


 続いて頭に声が響く。

 崩神は聞いた覚えがある。

 届かぬはずの力へ手を伸ばした者に訪れる、絶対死の未来であると。


【特性スキル〖崩神〗】

【不相応の力を手にした者は、必ず朽ち果てる。】

【最大HP・最大MPが急速に減少していく。】

【このスキルが消えることはない。絶対に。】


 念押しするように、重ねてそう告げられた。


 だが、不思議と絶望感はなかった。

 むしろ安心したくらいであった。

 それくらいの代償がなければ、魔獣王に敵うとはとても思えなかった。


【〖セフィロトの樹竜〗:ランクL(伝説級)】

【万物の死と再生の循環を司るとされているドラゴン。】

【その樹が現れたとき、あらゆる生命は循環し、新たな世界が生まれるとされている。】

【また、世界そのものとリンクする力があり、そこから世界に刻まれた叡智を自在に引き出すことができる。】


 セフィロトの樹竜……。

 どうやらそれが、今の私の種族名のようであった。


 私には過ぎた、大層すぎる名のように思えた。


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

種族:セフィロトの樹竜

状態:崩神

Lv :1/155

HP :28/2075

MP :14/555

攻撃力:195

防御力:755

魔法力:445

素早さ:189

ランク:L(伝説級)


特性スキル:

〖闇属性:Lv--〗〖グリシャ言語:LvMAX〗〖硬化:Lv7〗

〖HP自動回復:LvMAX〗〖MP自動回復:LvMAX〗〖飛行:Lv8〗

〖癒しの雫:Lv6〗〖不屈の守護者:Lv--〗〖重力圧縮:Lv5〗

〖忍び歩き:Lv5〗〖生命力付与:Lv--〗〖世界樹の樹皮:LvMAX〗

〖妖精の呪言:Lv--〗〖命の天秤:Lv--〗〖神霊の盾:Lv--〗

〖因果率の魔眼:Lv--〗〖楽園創造:Lv--〗〖崩神:Lv--〗


耐性スキル:

〖物理耐性:Lv8〗〖落下耐性:Lv9〗〖魔法耐性:Lv7〗

〖状態異常無効:Lv--〗〖七属性耐性:LvMAX〗


通常スキル:

〖根を張る:Lv5〗〖クレイ:Lv5〗〖ハイレスト:Lv6〗

〖ファイアスフィア:Lv7〗〖アクアスフィア:Lv4〗〖クレイスフィア:Lv6〗

〖ウィンドスフィア:Lv4〗〖念話:Lv5〗〖グラビティ:Lv6〗

〖ポイズンクラウド:Lv4〗〖フィジカルバリア:Lv6〗〖アンチパワー:Lv6〗

〖デコイ:Lv6〗〖スタチュー:Lv6〗〖メテオスタンプ:Lv6〗

〖木霊化:Lv6〗〖バーサーク:Lv5〗〖ウッドストライク:Lv5〗

〖ウッドカウンター:Lv5〗〖鎧破り:Lv5〗〖ガードロスト:Lv5〗

〖クレイウォール:Lv5〗〖地響き:Lv5〗〖熱光線:Lv5〗

〖樹籠の鎧:Lv4〗〖死神の種:Lv5〗〖不死再生:Lv6〗

〖人化の術:Lv2〗〖アーカシャカウンター:LvMAX〗〖ジェネシスマギア:LvMAX〗


称号スキル:

〖魔王の配下:Lv--〗〖知恵の実を喰らう者:Lv--〗〖白魔導師:Lv7〗

〖黒魔導師:Lv7〗〖竜の落とし物:Lv--〗〖生命の樹:Lv--〗

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


 やはり主殿から聞いていたものと同一である。

 これが、今の私のステータス……。


「トレント……さん? その姿は……」


 地面に倒れているアロ殿が、私を見上げてそう口にした。


『安心してくだされ、アロ殿。アロ殿も……アロ殿の故郷も、絶対に守ってみせますぞ』


 たとえそのために全てを失ったとしても、私は本望である。


『コノ土壇場デ、進化シタ……? 有リ得ヌ、神聖スキルヲ持タヌ身デハ、伝説級ニハ到達デキヌハズダ。ソノ姿ハ……』


 魔獣王が私を睨み付ける。

 随分と驚いていた様子だったが、すぐに表情を戻して首を振った。


『イヤ、タカガ伝説級……ソレニ、レベル1ノハズ。何ヲシヨウトモ、今更悪足搔キニ過ギン。我ハ疎カ、キマイラ共ノ一体ニモ敵ウマイ……』


 魔獣王が鼻で笑う。


「アア……」

「アァアア……」


 周囲のキマイラ達が、私を取り囲んで詰め寄って来た。


『ヤレ。コレ以上、コイツラニ時間ヲ掛ケルツモリハ……』


 そのとき、私に近づいていた先頭のキマイラ達が動きを止め、全身を痙攣させ始めた。


「ア、ア、ア……?」


『ドウシタト……』


 私を囲んでいた先頭のキマイラが急速に痩せ衰え、全身が黒ずんでその場に倒れた。

 キマイラの亡骸の周囲の地に、急速に花畑が広がっていく。


【経験値を5010得ました。】

【〖セフィロトの樹竜〗のLvが1から45へと上がりました。】


『ナニ……?』


 魔獣王が四つの目を見開いた。


 私のスキル……〖命の天秤〗である。


【特性スキル〖命の天秤〗】

【周囲の者から生命力と魔力を吸い上げ、自身の糧とする。】

【対象は自身の意思で制御することができる。】

【〖命の天秤〗の威力は、自身の最大HPと現存HPの差に依存する。】


 続けて急速に、周囲のキマイラ達がバタバタと倒れていく。

 私のレベルが上がったことで、どんどん最大HPが伸び続け、回復した傍から現存HPと最大HPの差が広がり続けて、威力が保たれているようであった。


 私に挑もうと飛び掛かってくるキマイラもいたが、途中で身体が朽ち果てて花畑へと変わっていく。

 敵わないと判断したキマイラ達が、一斉に私の前から逃げて行く。

 あっという間に辺りは一面の花畑となり、キマイラの亡骸だけがその場に残っていた。


【経験値を44460得ました。】

【〖セフィロトの樹竜〗のLvが45から74へと上がりました。】


『……〖森羅転生〗ガ裏目ニ出タカ。ダガ、結果ハ何ラ変ワリハセン』


 魔獣王が私の前へと立った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る