第584話
『一時的にレベルが下がっちまうから、この未開の地を歩くのに不安がねぇわけじゃないんだが……いいんだな?』
「少しでも竜神さまの助けになれるように、ちょっとでも早く強くなりたいです! それに、竜神さまが守ってくださるのなら、何の不安もありません!」
俺が尋ねると、アロが力強く頷いた。
『ああ、任せてくれ』
信頼には報いなければならない。
こんな場所で手頃な魔物が本当に出てくるのかは怪しいところだが……いざとなったら過去にやったように、近くのものを〖フェイクライフ〗で魔物化してレベリングするという手段もある。
……ある意味で、〖フェイクライフ〗で生み出した魔物はアロやトレントの兄弟みたいなもんだ。
殺すために生き物を作るっつうのはあんまりやりたい手段じゃねえが、アロ達の安全のためには手段を選んじゃいられねぇ。
アロの進化はこれで五回目になる。
F級の〖ワイト〗からE級の〖スカル・ローメイジ〗D級の〖レヴァナ・メイジ〗、C+級の〖レヴァナ・ローリッチ〗、そして現在の姿であるB+級の〖レヴァナ・リッチ〗だ。
次はA級といったところか。
多分、+は付かねぇだろう。
A級とA+級はステータス面で差が大きい。
できればA+級が来てくれれば、とは思うがその可能性は低い。
見かけてきた数が全然違うからだ。
俺はアロと向かい合う。
〖
アロは目を瞑り、垂らした腕でぎゅっと握りこぶしを作った。
トレントは幹や枝を落ち着きなく揺らし、ハラハラとした様子でアロを見守っていた。
「グゥオオッ!」
俺は吠える。
〖
そのとき、黒い光が螺旋を描くようにアロへと結びつき、彼女へと吸い込まれていった。
俺は息を呑む。
今まで、こんなことは起きなかった。
光がアロに吸い込まれ切った。
アロは瞑っていた眼を開く。
瞳の色が、赤と金のオッドアイに変化していた。
纏っていた衣服が、黒いドレスのように変わっていた。
【〖ワルプルギス〗:A+ランクモンスター】
【〖不滅の魔女〗と恐れられるモンスター。】
【朧げな存在であり、首を切られても、心臓を貫かれても死ぬことがない。】
【世界の各地を影から支配する、外法によってリッチとなった者達の女王であると言い伝えられている。】
エ、A+ランクモンスター!?
ってことは、俺のほとんどすぐ下じゃねぇか!
今のアロがレベルを上げれば、Aランクモンスターであったセラピムやエルディア、カオス・ウーズなんかよりも強くなるってことか……。
首刎ねられても、心臓潰されても死なねぇのか。
……なかなか物騒な物言いだが、これまでも既に怪しかった気はするが……。
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名前:アロ
種族:ワルプルギス
状態:呪い
Lv :1/130
HP :49/49
MP :750/1168
攻撃力:325
防御力:263
魔法力:888
素早さ:291
ランク:A+
特性スキル:
〖グリシャ言語:Lv4〗〖アンデッド:Lv--〗〖闇属性:Lv--〗
〖肉体変形:Lv9〗〖死者の特権:Lv--〗〖土の支配者:Lv--〗
〖悪しき魔眼:Lv7〗〖アンデッドメイカー:Lv--〗〖石化の魔眼:Lv7〗
〖飛行:Lv1〗〖不滅の闇:Lv--〗〖不吉な黒羽:Lv--〗
耐性スキル:
〖状態異常無効:Lv--〗〖物理耐性:Lv8〗
〖魔法耐性:Lv6〗〖物理半減:Lv--〗
通常スキル:
〖ゲール:Lv8〗〖カース:Lv6〗〖ライフドレイン:Lv7〗
〖クレイ:Lv7〗〖自己再生:Lv8〗〖土人形:Lv7〗
〖マナドレイン:Lv8〗〖未練の縄:Lv6〗〖亡者の霧:Lv6〗
〖魅了:Lv6〗〖ワイドドレイン:Lv6〗〖ダークスフィア:Lv6〗
〖吸血:Lv7〗〖デス:Lv7〗〖ミラージュ:Lv7〗
〖黒血蝙蝠:Lv7〗〖暴食の毒牙:Lv1〗〖暗闇万華鏡:Lv1〗
称号スキル:
〖魔王の配下:Lv--〗〖虚ろの魔導師:Lv8〗〖朽ちぬ身体:Lv--〗
〖アンデッドの女王:Lv--〗〖不滅の魔女:Lv--〗〖最終進化者:Lv--〗
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め、めっちゃスキル増えてる……!
つーか、なんだこのピーキーなステータスは。
魔法力が極端に高いのは今まで通りだが、HPがクソ低い代わりにMPがとんでもないことになっている。
HPの二十三倍あるMPなんて初めて見た。
こ、これ、大丈夫なのか?
何かの拍子にHPがゼロになっちまったりしねぇか?
気になる特性スキルは〖不滅の闇〗、〖不吉な黒羽〗か。
〖飛行〗が増えているのは〖不吉な黒羽〗との関係なんだろうか。
【特性スキル〖不滅の闇〗】
【その身体の本質は闇であり、魔力である。】
【魔力がある限り、魔女は滅ぶことはない。】
【HPが尽きたとき、MPを消費して自動的に再生する。】
な、なるほど……。
これがあるから実質HP=MPみたいなもんか。
躓いてHPがゼロになるような珍事は警戒しなくてよさそうでほっとした。
【特性スキル〖不吉な黒羽〗】
【背から黒翼を生やすことができる。】
【黒翼の羽は見かけより硬く、攻撃や守りに使うこともできる。】
ほほう……翼を生やせるのか。
〖飛行〗とセットなので、きっと飛ぶこともできるはずだ。
なんだか格好よさそうだ。
後でちょっと見せてもらおう。
通常スキルで気になるのは〖黒血蝙蝠〗、〖暗闇万華鏡〗、〖暴食の毒牙〗、か。
これも確認しておこう。
【通常スキル〖黒血蝙蝠〗】
【己の血から〖ブラッドバッド〗を造り出すことができる。】
【〖ブラッドバッド〗とは視覚を共有する。】
【MPの消耗は激しいが、〖ブラッドバッド〗を取り込めば消費MPの大半を回収することができる。】
おお……!
これもなかなか偵察などに使いやすそうだ。
ベルゼバブの放っていたハエみたいなもんだろう。
……取り込むっつうのが、どういう感じになるのかちっと気になるところだが。
【通常スキル〖暗闇万華鏡〗】
【魔力を用いて自我を持つ己の分身を生み出すことができる。】
【MPの消耗は激しいが、分身体を取り込めば消費MPの大半を回収することができる。】
な、なるほど……。
これは〖黒血蝙蝠〗の自分の分身版みたいなものらしい。
……取り込むって、なんかグロテスクな気がするんだが大丈夫なんだろうか。
【通常スキル〖暴食の毒牙〗】
【身体全身を開いて巨大な口となり、目前の相手へと喰らいつく。】
【噛みついた対象からHPとMPを奪い、多種の状態異常を付与する。】
……強そうだが、巨大な口……?
身体全身を開く……?
…………深くは考えねぇ方がいいかもしれない。
「ど、どうですか、竜神さま!」
アロがぎゅっと両手に握り拳を作り、そう尋ねてくる。
俺は大きく頷いた。
『A+ランクだ! やったなアロ!』
「本当ですか!」
アロが表情を輝かせた。
『ああ! この森の探索がてらに、新しい力を見せてくれ!』
「任せてくださいっ! これで竜神さまの足を引っ張ることはないはずです!」
トレントはアロの嬉しそうな様子を、やや不安げに眺めていた。
『あっ、主殿! は、早くレベル上げに向かいましょう!』
そ、そんなに焦らなくても……。
元の世界がどうなってるのかわからねぇから、急いだ方がいいのは間違いねぇんだけどよ。
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