第360話

【経験値を3840得ました。】

【称号スキル〖歩く卵:Lv--〗により、更に経験値を3840得ました。】

【〖ウロボロス〗のLvが99から100へと上がりました。】

【特性スキル〖支配者の魔眼:Lv1〗を得ました。】


【経験値を4288得ました。】

【称号スキル〖歩く卵:Lv--〗により、更に経験値を4288得ました。】

【〖ウロボロス〗のLvが100から101へと上がりました。】


 二体のアダムが力尽きたのを、神の声のいつもの告知で確認する。


 フー、久々に命の危機を感じた。

 速攻で仕留めるために、回復は二の次で相方共々叩きまくってたからな。

 二体ともなれば、経験値がとんでもねぇ。ウロボロスのアホみたいに高いレベル上限も、ここに居座ってたらその内達成できちまいそうだな。


 ん……なんだ、あのスキル? レベル100記念みたいなもんか?

 〖支配者の魔眼〗?

 いや、今はいいか。確認している時間も惜しい。


 俺は相方がアダムを咥え上げたのを尻目に、〖自己再生〗で近接戦や〖グラビドン〗でアダムにぶっ壊された体表と臓器、足の骨を、動くのに不自由ない程度に応急処置的に再生させた。


 つつ……ちっと、決着を焦り過ぎたか。

 イヴの回復さえなければごり押しできるはずだと思って二体のアダムへ一気に攻撃したはいいものの、身体中あちこち蹴飛ばされるわ、終盤では二体並んで〖グラビドン〗乱発されるわと酷い目に遭った。


 だが、その甲斐あって、思ったよりも長引いたものの、無事短期の範囲内で仕留めることができた。

 身体に〖グラビドン〗を受けながらも近接に持ち込み、〖転がる〗で脅しを掛けて〖ハイジャンプ〗での回避を誘導し、素早く〖転がる〗バックスピンバージョンをぶち当てて、奴らの身体をぶっ壊して動けなくしてやったのである。

 そこから死を覚悟したアダム達が、MPが尽きるまで〖グラビトン〗を放ってきやがったが、どうにか辛勝することができた。


 人間……いや、ドラゴン、なんでもやればできるもんだな。

 〖転がる〗の最中に破れかぶれで尾を使っての百八十度即座に反転ができるとは、思いもしてみなかった。

 次からもこの動きを取り入れていこう。


 イヴの足止めをしているアロ達が危なければ、アダムから戦線離脱してアロ達を逃がすつもりだったのだが、アダム二体相手にそんな余裕はなかった。

 思ったよりも長引いていたこともあり、内心かなり焦っていたのだが……イヴを足止めしているアロ達の元へと向かえば、アロ達はどうにか無事であった。


 イヴは、相方が二体のアダムを呑み込んだのを見て、呆然と口を開ける。

 やや間があって、イヴは一本足に力を入れる。

 足をぐっと曲げて、大きな一つ目で俺を睨んだ。


「ア……アァァァァァァァッ!」


 破れかぶれといったふうに俺へと突撃してくる。

 その足からは想像もつかぬ速度で左右に身体を振るいながら走り、地面を蹴って俺へと飛び掛かってくる。


 速い。

 それに、フェイントを交えてきている。

 だが、狙いが安直すぎた。

 もっとも、今この場で俺相手に細かいダメージを与えても何の意味もないので、決定打となり得る部位を狙っていることは、突撃してきた時点で隠しようもなく明らかであったのだが。


 俺は前足を上げて頭をガードした。

 イヴが俺の前足へと踵を打ち付ける。本当は、頭を狙ったのだろう。

 俺はそのまま振り払うついでに、イヴを地面に叩きつけた。

 俺の足の下に、イヴがぐちゃりと潰れる感触があった。

 一撃であった。


【経験値を3584得ました。】

【称号スキル〖歩く卵:Lv--〗により、更に経験値を3584得ました。】

【〖ウロボロス〗のLvが101から102へと上がりました。】


 HPの低い魔物は、Aランク下位でも十分ワンパンできるな。

 物理特化型のアダムでも俺の近接攻撃は、当たり所によっては致命傷となる。

 サポート型のイヴではまず堪え切れんわな。

 逃げていれば追いつけなかったのに、意地になって向かって来るとは。


 相方が、地面の潰れたイヴを舐めとって、バリボリと噛み砕いた。

 ぺっと頭蓋骨の一部を吐き出す。


『マズクハネェカ』


 あんまし、そういうの喰ってほしくねぇんだけどな……。

 まぁ、もう、なんか吹っ切れて来たわ。

 相方見てると、人型の化け物喰らう忌避感が薄れてきちまった。これはこれで注意しねぇと……。

 んなことより、アロの回復を頼む。ダメージが深刻だ。


 トレントさんとナイトメアは無傷であったが、正面から奴の蹴りを受けたらしいアロは大ダメージを負っている。

 身体に大穴が空いており、ぐったりと床の上に伏していた。

 相方が「ガァッ」と鳴くと、アロを黒い光が包み、晴れたときにはすっかり元通りとなっていた。


 悪い、もうちっと早くにアダムを片付けて、速攻でイヴを追っ払うつもりだったんだが、思いの外に奴らが強かった。

 セイレーンやバジリスクにいいようにされてんのを見て、ちょっとアダムを低く見過ぎてたのかもしれねぇ。

 ともかく、全員無事でよかった。


 アロ達のレベルを確認して見る。

 アロは【Lv:14/85】から【Lv:22/85】へ、

 ナイトメアは【Lv:18/70】から【Lv:20/70】に、

 トレントは【Lv:5/60】から【Lv:10/60】にまで上がっていた。


 アロのレベルがあっさりとナイトメアを追い越した。

 まぁ……レベル差あっても、ランク的にもステータス的にもスキル的にも、アロが一番強いからな。

 下手したら俺より優秀なスキルぽんぽん持ってっし。

 トレントさんも5アップと、ここに来てナイトメアへの追い上げを見せ始めている。


 アダムとイヴはマジで経験値の塊だな。

 そらこの島変なバケモンばっかりになるわな。

 まぁ、アダムは普通に強いから、その分返り討ちにもしてそうだが……。


 とと、それよりも、さっき得たレベル100突破記念スキルとやらを、ちっと試してみるか。

 スキルの詳細は……。


【特性スキル〖支配者の魔眼〗】

【目に魔力を込めた状態で目を合わせることで、対象の動きを数秒間封じる。】

【魔力差が大きい場合か波長が合っている場合には、動きを操ることができる。】


 お、おおっ! これ結構当りスキルじゃねぇのか?

 ちょっと、試しに使ってみてぇな……。

 ……ト、トレントさん、ちょっと……ほら、ダメ?


 トレントはぶるぶると幹を振るう。

 あ……ダメですか。


 さっと、トレントの前にアロが躍り出て、期待した目で俺の方を見る。

 さ、さすがに女の子にこういうスキル使うのは抵抗感があるんだけど……。


「わ、私、受ける! 受けてみたい!」


 え、ええ……いや、でも……。

 じゃ、じゃあ、ちょっとだけ……。


 アロが顔を赤くしながら、じーっと俺に目を合わせる。

 い、行くぞ? いいんだな?


 俺はぎゅっと目に魔力を込めてアロを見る。

 フンッ! 〖支配者の魔眼〗! フンッ!


 ……特に、変化はなかった。

 アロは目を大きく見開いたまま、目線で俺を急かす。

 い、今やったんだけど……アロは状態異常無効があるから、効かねぇのかもしれねぇな。

 でも、そもそも何も発動してねぇような……。


「ガァッ」

『オイ、相方ァ』


 うん? どうした?

 俺が相方を見ると、相方の赤い眼が、ギラリと真紅の光を放った。

 俺はその眩しさに目を閉じようとしたが、瞼が麻痺した様に動かねぇ。


 も、持ってかれた!

 嘘ォ! このスキルも相方専用!?

 おかしいだろ、オイ! これは両方だろ! どっちも持ってていい奴だろ!


 俺が嘆いていると、前脚が自然と持ち上がり、相方の首元を掻いた。

 相方が心地よさげに「ガァ」と鳴きながら、首をグイッと曲げる。


『オオ、コレ、良イ技ダナ』


 か、身体乗っ取られた!?

 波長合う相手なら動かせるって、そういうことかよ!


「グゥオッ!」


 俺は相方の魔眼の拘束を払い、前脚をダンッと地面に着ける。

 ハー、ハー……。

 これ、マジで相方が本体になりかねねぇぞ。

 なんてとんでもねぇスキルだ。


 相方の方を見ると、得意気に相方は鼻を鳴らした。

 ク、クソ……マジで今後、相方に頭上がんねぇぞ。こんなスキルがあったんじゃ。


 ふと振り返ると、アロが、じとーっと白けた様な目を俺へ向けていた。

 な、なんか悪い……。え、えっと、ほら、相方に掛けてもらう?


「……もう、いいです」

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