第315話
俺は洞窟の中を見回し、敵を確認する。
敵は合計七人。そこから弓使い、双子の剣士を無力化した。
双子の剣士の片割れはまだ生きてはいるが、もうまともには戦えないだろう。
武器も手許にはない。
一応この場に留まってはいるが、残りは四人と考えても問題なさそうだ。
さっき俺の腹部に一太刀入れたフェリス・ヒューマの剣士に、弓使いの生き残り。
桜色の髪の魔術師と、魔術師を守るように前に立っている大柄の剣士だ。
洞窟の奥には、縄で縛られたリトヴェアル族の子供が乱雑に並べられている。
口許にも縄を嚙まされており、涙ぐんだ目で俺の方を見ていた。
俺が何者なのかはわかってはいないはずだが、状況から味方側であると判断しているようだった。
それでも不安が混じった目ではあったが。
しかし……あの白顔の男と、トールマンがいねぇ。
俺を迎え討とうとしている割には、主力を別行動させてんのか?
ここで時間を稼いで、別の隊が森小人にちょっかいを出すつもりなのかもしれねぇ。
尚更、さっさとここを突破しねぇと。
あいつらが以前にキレたときには、集落が一度崩壊したんだったか。
「なんだピンピンしてるじゃねぇか。浅かったんじゃあないのか、ネル? おいおい、しっかりしやがれよ」
魔術師の護衛についていた大柄の剣士が舌打ちをした。
あいつは……。
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〖バリス・バラデンダ〗
種族:アース・ヒューマ
状態:パワー、クイック
Lv :27/45
HP :162/162
MP :99/99
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バリス・バラデンダ……。
ステータスは、典型的な剣士向きの人間だな。
芸のあるスキルはないが、体力と攻撃力、速さに優れた、魔物でいうなら赤蟻のタイプだ。
半端なスキル持ちよりはこういう奴の方が厄介だが、大したステータスではない。
敵兵の中ではやや強めではあるが、そこまで警戒する必要もないだろう。
さっきの双子剣士の弟の方がステータスで優っていた上に、多少厄介なスキルも備えているようだった。
体力は高めだが、直撃を取れれば戦闘不能に追い込めることに違いはない。
ただ、連携して動かれると仕留めるのに手間が掛かるというだけだ。
注意すべきは……バリスが守っている、女魔術師の方か。
後方の女へと目を向ける。
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〖ノーウェル・ノグマルク〗
種族:アース・ヒューマ
状態:通常
Lv :36/60
HP :176/176
MP :142/274
攻撃力:49+14
防御力:78+55
魔法力:277+62
素早さ:53
装備:
手:〖ミスリルの長杖:B〗
体:〖ミスリルの胸当て:B〗
特性スキル:
〖グリシャ言語:Lv7〗〖魔術師の才:Lv6〗
耐性スキル:
〖魔法耐性:Lv4〗
通常スキル:
〖ハイレスト:Lv1〗〖ワイドレスト:Lv4〗〖ケア:Lv3〗
〖クイック:Lv4〗〖ワイドパワー:Lv5〗〖ファイアウォール:Lv4〗
〖フラッシュ:Lv3〗〖バーサーク:Lv4〗〖ストーンスピア:Lv2〗
称号スキル:
〖白魔導士:Lv6〗〖黒魔導士:Lv3〗
〖戦場の天使:Lv--〗〖飢えた狩人の大部隊長:Lv--〗
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ノーウェル・ノグマルク……大部隊長格か。
バリスにステータス補正効果の魔法を掛けたのはこいつみてぇだな。
支援と回復と、一応の攻撃手段も持ち合わせているようだ。
ちまちまと回復と妨害をされていたらキリがねぇ。優先的に片付けちまうべきか。
ただ、決定打を持ってんのは、あっちの壁に張り付いてるフェリス・ヒューマの方だ。
スキルでの加速が半端じゃなかった。
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〖ネル・ネフェリアス〗
種族:フェリス・ヒューマ
状態:パワー、クイック
Lv :38/90
HP :192/192
MP :65/65
攻撃力:212+65
防御力:151+55
魔法力:82
素早さ:398
装備:
手:〖ミスリルソード:B〗
体:〖ミスリルの胸当て:B〗
特性スキル:
〖戦闘本能:Lv--〗〖獣神の加護:Lv--〗〖グリシャ言語:Lv4〗
〖剣士の才:Lv8〗〖野性の勘:Lv8〗〖気配感知:Lv7〗
〖忍び足:Lv6〗〖暗視:Lv6〗〖動体視力:Lv7〗
耐性スキル:
〖物理耐性:Lv6〗〖斬撃耐性:Lv7〗
〖麻痺耐性:Lv2〗
通常スキル:
〖噛みつく:Lv7〗〖引っ掻く:Lv6〗〖キャットフェイク:Lv7〗
〖神速の一閃:Lv5〗〖精神統一:Lv6〗〖竜落千斬:Lv3〗
称号スキル:
〖獣人:Lv--〗〖狩人:Lv8〗〖元剣奴:Lv--〗
〖曲芸:Lv8〗〖剣王:Lv8〗〖隼の剣士:Lv--〗
〖飢えた狩人の隊員:Lv--〗
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素早さ398!? あいつメチャクチャ強いじゃねぇか。
なんだあの桁外れな素早さ。
さすがに素では俺の方が圧勝してるが、〖クイック〗の補助とスキルで底上げしてさっきの一撃を俺に当てたのか。
剣関連の特性スキルや称号スキルも異様に高い。
かなり剣の扱いに慣れていると見るべきだろう。
偏ったステータスではあるが、他の大部隊長クラスより普通に手強い。
敵も、俺を迎え討つのに選りすぐりの兵を出してきたと見える。
散らばらせていた大部隊長格、部隊長格を合わせて投入してきていやがるようだ。
今までの奴らとは違う。
俺も人化時の身体を完全に使いこなせているわけではない。
あまり余裕のある戦いとはいえなさそうだ。
フェリス・ヒューマの剣士ネルを真っ先に倒すか、大部隊長のノーウェルを潰してから援護のない状態のネルを倒すかで、大分戦い方が変わってくるだろう。
「ジェムさん! 手は止めないでください! とんでもない反応速度です! 隙を見せたら、全員殺されます! 当てるのは難しいとは思いますが、常に意識を分散させる必要があります! ベルモンドさんはどうにか逃げてください! ウロボロスは、僕達がどうにか引き付けますから!」
ネルが叫ぶ。
それを聞いて、呆気に取られたように突っ立っていた弓使いが慌てて矢を取り出し、構え直した。
俺が剣を弾き飛ばした双子剣士の生き残りである兄が、壁に手を置いて呼吸を荒くしながら立ち上がる。
「ちっ……悪いが俺は、撤退させてもらうぞ。無駄死にするつもりはないからな!」
「それを決めるのは、貴方じゃありませんことよ。せっかく私の魔力を使って強化しているのだから、無駄にされては困るもの。〖バーサーク〗!」
ノーウェルが杖を振るう。
杖先から放たれた光が、ベルモンドと呼ばれた双子剣士の兄へと当たる。
光が触れた瞬間、ベルモンドの顔つきが変わる。
「ぐぅ……ぐううううう!」
弱々しく壁に置いていた手が、壁を掴んで土を削った。
片割れの剣士をぶつけたときに身体の骨がいかれているはずなのにまっすぐに立ち上がり、剣を手にしていないにも拘らず正面から向かって来た。
「頭が足りなくなるのは困りものなのだけど、壁になる分、臆病者よりはいくらかマシでしょうね」
ノーウェルはそう言い、くすくすと笑った。
……やっぱし、後方支援から潰した方がよさそうだな。
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