第223話
人骨は祠の壁に凭れて座り込み、自分のばらけた足の部位を抱える。
カタカタと、寂しげに顎の骨を鳴らしていた。
ひょっとして、人間の意識あんのかな……。
だったら下手に壊すわけにも……ああ、やっぱし変なことするんじゃなかったか。
「ガァッ!」
相方が鳴くと、再び人骨を黒い光が包む。
ばらけていた足や腕が、元の部位へとくっ付いた。
なるほど、〖
ステータスチェック……できんのかな、これ。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
種族:ワイト
状態:呪い
Lv :1/5
HP :7/7
MP :2/2
攻撃力:2
防御力:1
魔法力:3
素早さ:2
ランク:F
特性スキル:
〖グリシャ言語:Lv1〗〖アンデッド:Lv--〗
〖闇属性:Lv--〗
耐性スキル:
〖状態異常無効:Lv--〗〖物理耐性:Lv1〗
〖魔法耐性:Lv1〗
通常スキル:
〖ゲール:Lv1〗〖ポアカース:Lv1〗
〖ライフドレイン:Lv1〗
称号スキル:
〖邪竜の下僕:Lv--〗
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
ワ、ワイト……。
やっぱりこれ、駄目なんじゃ……。
外見で薄っすらわかってたけど、完全に人間辞めてんじゃねーか。
状態異常無効か……なんか、進化したら強くなりそうだな、うん……。
つーか〖邪竜の下僕〗ってなんだよ、んなもん俺望んでねぇよ。
壊すか? やっぱり壊した方がいいのか?
このままにしとくのって、絶対死者弄んでるよな。
本人も苦しかったりするんじゃねぇのか。
〖状態異常無効〗なのに、呪い入ってんもん。
〖
でも復活させて即殺すっつうのもなんか、なんか……。
ワイトがなんなのか、ちょっと一回見てみっか。
うん、それがいい。それを見てから考えても遅くはない。
【〖ワイト〗:Fランクモンスター】
【死体に悪霊が憑依したモンスター。】
【さほど強くはないが、ただの人骨の振りをして人間を襲うことがあるため危険。】
【動物に乗り移っているものは〖ビーストワイト〗と呼ばれるケースが多い。】
人間ですらないじゃねぇか!
悪霊っつうか俺の魔力だよな。
〖
これで後腐れなく心置きなく壊せるわ。
中途半端に人魂戻ってたりしたら手詰まりだったかもしれねぇ。
良かった良かった。
とりあえずあれだ。
死体に使っちゃいけねぇってえことがよくわかった。
悪いなワイト、壊させてもらうぞ。
俺が腕を向けると、ワイトはそっと膝をついて頭を下げる。
〖邪竜の下僕〗ってあるくらいだし、俺に絶対服従なのかもしれねぇな。
俺が造った魔物みたいなもんだもんな。みたいっつうか、そんままか。
俺に刃向かって来たらむしろクソスキルだわ。
さくっとバラバラにして森に埋めるか。
俺はそうっと、ワイトの項部分に爪を立てる。
それでもワイトは、抵抗しなかった。
「ガァ……?」
相方が、じぃっと横から俺を見つめてくる。
『壊していいの?』と俺に問いかけてきているようだった。
や、やめろよ。やり辛いじゃねぇか。
これ、ただの魔力だから。人間どころか生物じゃねぇから。
むしろ生物の身体乗っ取って死体操ってる奴だから。
……操ったのは俺か。
いや、だからこそ元の持ち主のためにも、きっちりとトドメを……トドメを……。
カタカタと、ワイトが顎の骨を鳴らす。
笑った……?
いや、震えてんのか?
絶対服従だとしても、やっぱりちょっとは意思が……。
……………………。
俺は持ち上げた前足をそっと降ろし、ワイトを観察する。
ワイトが骨を鳴らしながら、不思議そうに俺を見上げ、首を傾ける。
その仕草はどこか幼く、いじらしかった。
まるで悪戯を見つかった子供が、怖々と親を見ているようだった。
ワイト越しに、小さな骨の所有者だった子供の姿が見えた気がした。
……壊せねぇ。
ど、どうしよ、これ……。
とりあえずリトヴェアル族には絶対見せらんねぇわ。
絶対まずいことになるわ。
「グゥオ……」
俺が首を祠の奥へと向けるとワイトは立ち上がり、よろめきながら示した方へと歩いて行った。
どうするよ、どうするよあれ。
子蜘蛛育てるのとはワケが違うぞ。
骸骨なんか絶対育たねぇよ。成長期終わってるよ。
人生が終わってんだから間違いねぇ。
仮に大きくなったとしても、自然に返そうなんてできねぇよ。
骸骨の魔物なんか野放しにできねぇよ。
ちょっと目を放したら、なんかめっちゃ
や、やっぱり、死者への冒涜だよな。
いやでも、生前の面影が……。
第一同居人が骸骨と蜘蛛って、マジでどうすんだよこれ。
お化け屋敷かよ。
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