第202話

 地上での戦いはすぐに終わった。

 援軍のなくなった敵の赤蟻はすぐに陣形が崩れ、そこへこちらの赤蟻が一斉に飛び出していったのだ。

 俺が手を出す隙もないほどスムーズな運びだった。

 赤蟻同士の戦いでは定石なのかもしれない。


 こちらの赤蟻の生き残りは、二十体。

 戦闘で力尽きたものが五体と、巣の入り口の倒壊に巻き込まれた回り込み部隊が五体だ。


 辺りには、八十近い数の敵赤蟻の亡骸が転がっている。

 こちらの被害が十体で、相手の被害がその八倍。充分善戦といっていいだろう。

 敵の赤蟻の巣の方が規模が大きかったにしても、もう半分以上は戦力を削いだはずだ。


 

 俺はひとまず、自らのステータスを確認する。


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

〖イルシア〗

種族:ウロボロス

状態:通常

Lv :41/125

HP :842/1156

MP :51/1112

攻撃力:509

防御力:362

魔法力:546

素早さ:410

ランク:A


特性スキル:

〖竜の鱗:Lv7〗〖神の声:Lv4〗〖グリシャ言語:Lv3〗

〖飛行:Lv7〗〖竜鱗粉:Lv7〗〖闇属性:Lv--〗

〖邪竜:Lv--〗〖HP自動回復:Lv8〗〖気配感知:Lv5〗

〖MP自動回復:Lv6〗〖双頭:Lv--〗〖精神分裂:Lv--〗


耐性スキル:

〖物理耐性:Lv5〗〖落下耐性:Lv6〗〖飢餓耐性:Lv5〗

〖毒耐性:Lv5〗〖孤独耐性:Lv6〗〖魔法耐性:Lv4〗

〖闇属性耐性:Lv4〗〖火属性耐性:Lv3〗〖恐怖耐性:Lv3〗

〖酸素欠乏耐性:Lv4〗〖麻痺耐性:Lv4〗〖幻影耐性:Lv3〗

〖即死耐性:Lv2〗〖呪い耐性:Lv2〗


通常スキル:

〖転がる:Lv7〗〖ステータス閲覧:Lv7〗〖灼熱の息:Lv5〗

〖ホイッスル:Lv2〗〖ドラゴンパンチ:Lv3〗〖病魔の息:Lv6〗

〖毒牙:Lv7〗〖痺れ毒爪:Lv6〗〖ドラゴンテイル:Lv2〗

〖咆哮:Lv2〗〖星落とし:Lv2〗〖くるみ割り:Lv3〗

〖人化の術:Lv7〗〖鎌鼬:Lv5〗〖首折舞:Lv4〗

〖ハイレスト:Lv6〗〖自己再生:Lv5〗〖道連れ:Lv--〗


称号スキル:

〖竜王の息子:Lv--〗〖歩く卵:Lv--〗〖ドジ:Lv4〗

〖ただの馬鹿:Lv1〗〖インファイター:Lv4〗〖害虫キラー:Lv4〗

〖嘘吐き:Lv3〗〖回避王:Lv2〗〖救護精神:Lv9〗

〖ちっぽけな勇者:Lv6〗〖悪の道:Lv7〗〖災害:Lv7〗

〖チキンランナー:Lv3〗〖コックさん:Lv4〗〖卑劣の王:Lv6〗

〖ド根性:Lv4〗〖|大物喰らい(ジャイアントキリング):Lv3〗〖陶芸職人:Lv4〗

〖群れのボス:Lv1〗〖ラプラス干渉権限:Lv1〗〖永遠を知る者:Lv--〗

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


 ……ついに、四桁いっちまったか。

 さすがAランクだけはある。

 攻撃力も魔法力もあっさりと500台に乗っちまった。


 このMPだと、人化すれば二十分は持つ。

 いや、〖MP自動回復〗を考えれば三十分以上は連続して使えるはずだ。


 あの勇者のステータスは一瞬見ただけなのであまり覚えていないが……確か、600くらいだったか?

 確か、何かが600以上あったのは覚えている。

 平均するとギリギリ600くらいだったかもしれない。あまり自信はないが。


 勝算がないことはないが、かなりの苦戦を強いられそうだ。

 これからの後半戦でどれだけレベルを上げられるかが勝負だな。


 このステータスならば、俺単独でも赤蟻の巣を相手にできそうだ。

 相方が仕事をしてくれれば、死角を潰せる。

 俺の横へ赤蟻に立ってもらって、回り込みの防止に徹してもらうのもいいかもしれねぇ。

 とにかく、次は先頭に立たせてもらうことにしよう。


 自軍の赤蟻達は、一度崩した入り口を掘り返している。

 中に攻め入るためだ。

 第二ラウンドは、敵の巣の中で行うつもりらしい。


 大分掘り進めたところで、赤蟻達の動きが慎重になってくる。

 どうやら反対側には敵の赤蟻が張りついているらしく、それを警戒しているようだった。


 下手に開通させれば、先制を取られかねない、ということだろう。


 あれ、今の俺の素早さと攻撃力なら、ここで不意打ちで〖転がる〗をぶちかませばいけるんじゃねぇのか?


「グゥォッ!」


 俺は赤蟻達へと吠える。

 隊長赤蟻が、こちらを振り返る。


「クチャッ?」


 どことなく、隊長の態度が丸くなったように思う。

 声調というか、物腰というか。


 玉兎、通訳頼む。


『一旦、離レロ。俺ガヤルッテ』


 隊長赤蟻は不思議そうに首を捻るが、その後他の赤蟻へと声を掛けてくれた。

 赤蟻が左右へと散っていく。

 俺は助走を充分につけられる距離まで下がる。


 俺は首を捻って玉兎を落とし、口でキャッチする。

 玉兎もそろそろ慣れていたのか、抵抗はしなかった。

 目は死んでいたが。


「ガァッ?」


 相方が不思議そうに俺を見る。


『丸マッテッテ』


 玉兎がすかさず〖念話〗で伝えてくれた。

 相方は不安そうにしながらも、首をぐっと縮めた。


 俺は地面蹴って宙に飛び、身体を丸めて一直線に転がった。

 ステータスが上がったおかげか、全然速さが違う。

 これが素早さ400台の〖転がる〗の世界か。

 全力だとコントロールに難がありそうだが、今はとにかく直線で突き抜ければいい。


 崩れていた巣穴の入り口へ、そのまま飛び込んだ。

 分厚い砂の壁へと身体が直撃する。

 全身に大きな反動が来た。


 その後、辺りが一気に暗くなる。

 無事に赤蟻の巣の中へと入り込めたようだ。

 そのまま減速せずに突き進む。


「クチャッ!」「クチャッ!」

「クチャァァァァッ!」


 十体近い数の赤蟻を撥ね飛ばしたのがわかった。


【経験値を604得ました。】

【称号スキル〖歩く卵:Lv--〗により、更に経験値を604得ました。】

【〖ウロボロス〗のLvが41から45へと上がりました。】


 仕留めたのは、四体くらいか。

 俺はそのまま周囲が見えない中、暗闇の中を突っ切った。


 途中、壁が俺の前に現れる。

 通路の行き止まりにきたわけではない。

 敵の赤蟻が〖クレイ〗で造りだしたものだろう。

 俺はそのまま、止まらずに壁に突進した。

 通路内が揺れ、壁が崩れる。


 次にも、壁があった。それも力技で崩せた。

 三重の土の壁を粉砕したところで減速してきたため、俺は〖転がる〗を解除し、体勢を立て直す。


 再び〖転がる〗全力でもどうにかなりそうだが、敵を倒すより先に巣が崩壊しそうだ。

 普通に戦った方がいい。


 真上へと玉兎を吐き出し、頭でキャッチした。


「ぺふっ!」


 玉兎が〖灯火〗で火の玉を浮かべ、辺りを照らす。


「クチャ!」「クチャ!」「クチャ!」


 崩れた土壁の向こうに、赤蟻の集団が見える。

 この辺りにいるのは二十体ほどか。

 逃げ遅れて俺の〖転がる〗の餌食になったのが十体近くだから、ここに控えていたのは三十体前後ということか。

 そろそろここの赤蟻も尽きてきたのではなかろうか。


【経験値を110得ました。】

【称号スキル〖歩く卵:Lv--〗により、更に経験値を110得ました。】


 あれ、どうした急に。

 ちらりと背後を確認すると、後ろから自軍の赤蟻が追いかけてくるのが見えた。

 俺が撥ね飛ばして弱っていた赤蟻にトドメを刺すものと、こちらに加勢するものに分かれているようだった。

 俺が手出ししていた分の経験値が加算されたようだ。

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