第103話

 玉兎の食事が終わったとき、二倍近いサイズへと変わっていた。

 喰ってた分は増えた量の五倍くらいあったと思うけどな。こいつ、本当にどうなってんだ。


 喰えるだけ喰った玉兎は、気持ちよさげに地面に蹲っている。

 大口を開け「ふぁお」っと、欠伸らしきものを上げる。


 その瞬間、玉兎の身体がどんどん膨張していく。

 ソフトボールサイズだった玉兎が、一気に小さめのスイカサイズにまで急成長した。

 おいおいこれ、進化したんじゃねぇのか。

 早速ステータス確認してみっか。


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種族:小玉兎

状態:通常

Lv :1/12

HP :3/10

MP :0/6

攻撃力:3

防御力:4

魔法力:6

素早さ:4

ランク:E-


特性スキル:

〖隠匿:Lv1〗〖食再生:Lv1〗


耐性スキル:

〖飢餓耐性:Lv4〗〖毒耐性:Lv1〗

〖過食耐性:Lv1〗


通常スキル:

〖穴を掘る:Lv2〗〖灯火:Lv2〗〖死んだ振り:Lv1〗

〖鞭乱舞:Lv1〗〖丸呑み:Lv1〗〖体内収集:Lv1〗

〖魅了:Lv1〗


称号スキル:

〖砂漠のアイドル:Lv2〗〖共喰い:Lv1〗〖寄生Lv上げ:Lv1〗

〖大喰い:Lv2〗

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 ……なんか、食関係のスキル増えてねぇか?

 やっぱ喰わせ過ぎたのよくなかったんじゃねぇのかこれ。


称号スキルの〖大喰い〗はいきなりスキルLv2だし。

 〖食再生〗ってなんだよ。

 つーか、〖過食耐性〗ってなんだよ。喰い過ぎて苦しいのに堪えながら喰ってたのか?

 そこまで我慢して大喰い通さなくていいんだぞ。


 これで小玉兎ってことは、まだこっから更にデカくなんのか。

 Eランク下位なら、もう一段くらい進化させてやれそうな気もするな。


 〖竜鱗粉〗の影響が、どれくらいしたら出てくるかにもよっけど。

 翼畳んでるから大丈夫か?

 でも……竜鱗粉、今Lv4なんだよな……。あんまし楽観視してもいられねぇか。

 次の敵は、〖病魔の息〗をぶつけてみるか。



 玉兎はぐうっと伸びをしてから、俺の方を見る。

 俺と目を合わせたかと思えば、次の瞬間、サボテンへと目を移す。

 それからまた俺へと目線を戻す。


 ……ひょっとして、こいつ、まだ喰うのか?

 まぁ、満足するまで喰わせてみっか。別にこのサボテン喰い尽くされても、俺は困らねぇし。


 俺がサボテンを爪で切ると、玉兎がこれまた片っ端から皮を残して内部を喰い尽くしていく。

 さすがにさっきあれだけ喰っただけあって、すぐに「ぷほ」と息を漏らし、食事を中断した。


 玉兎の成長、この辺で止めといた方がいいかもしれねぇな。

 これ以上デカくなったら、食事の調達が難しくなってくるかもしれねぇぞ。


 そういや、特性スキル〖食再生〗って持ってたな。

 ひょっとして今ので回復したんじゃねぇのか。



‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

種族:小玉兎

状態:通常

Lv :1/12

HP :8/10

MP :0/6

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 うわっ、予想通りだったけどなんかビビるわ。

 喰った分をHPに回せんのかよ。


 冷静に考えれば〖HP自動回復〗の劣化版っぽいけど、Eランクで回復手段持てるってことを思えばかなり優秀だな。

 俺としても、かなり安心できる。

 こりゃ〖過食耐性〗使って無理してでも喰う価値はあるか。



 また玉兎を頭に乗せ、砂漠を歩く。

 玉兎連れてるから、〖転がる〗での移動ができねぇんだよな。あれ使って探し回れば、なんか洞穴とか見つかりそうな気はするんだけど。


 ああ、身体が疼いてきやがる。

 更地を前にゆっくり歩いてっと、身体が〖転がる〗を求めてムズムズする。

 障害物もねぇ地面を転がり回って、ちょっとした山になってるところで跳ねてみたりしたら、さぞ気持ちいいことだろうに。

 抑えろ、抑えろ俺。

 なんか悪化したら禁断症状みてぇになりそうだ。


 結局、日が暮れても拠点化できそうなところは見つからなかった。

 玉兎が眠そうにふらふらしている。そろそろ休むとすっか。


 俺は玉兎を頭から降ろす。

 地に降りた玉兎は、その場に穴を掘って埋まる。

 ただぽっこり山になっているから、飢えたモンスターが来たらすぐ見つかりそうな気がすっけどなぁ……これ。


 俺は玉兎の砂山に覆い被さり、目を閉じる。

 これで寝ている間に玉兎が喰われてました、みたいなことにはならねぇだろ。


 ……しっかし、野晒しで寝るのって、なかなか落ち着かねぇな。

 どうしても気を張っちまうっつうか。

 寝こみを襲われる可能性考えりゃ、その方が丁度いいんだろうけどさ。

 爆睡してる間にあの大ムカデが来たらマジで死を覚悟するわ。

 俺、あれとは絶対闘いたくねぇもん。目ぇつけられたら玉兎乗せて全力で飛んで逃げるわ。


 こうしてみると、森での生活が如何に快適だったかがよくわかるな。

 毛皮の敷かれたゆっくり休める洞穴があって、外には食に困らねぇだけの干し肉があって。

 壺作りの趣味もあったし、洞穴だってまだまだ増築したかった。

 そんで何より、黒蜥蜴と猩々がいて……。


 いや、仕方のねぇことだ。

 ぐちぐちと考えるのは止めよう。

 進化の方向によっては、〖竜鱗粉〗を抑え込めるはずだ。

 そうなってから、ゆっくりと森に帰ればいい。

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