第97話

 …………。

 ……………………。


 薄っすらと、思考が戻ってくる。

 どうにも結構な時間寝ちまってたみたいだ。

 瞼が重い。身体の節々が固まってるみたいで妙に痛い。手足が動かない。


 力を入れて動かそうとしたら、バキッという音が鳴った。

 これ、駄目な奴じゃね?

 痛みはないけど、なんかすんげー嫌な感じがするんだけど。

 数時間じゃなくて、数日は経ってんなこれ。


 目を開けながら、関節を慣らしていく。

 視界いっぱいに広がるは、青い海だった。


 どうやら川からどこぞの海辺に流されて、そっから浜辺へ打ち上げられちまってたらしい。

 とりあえずは、生きていたことを喜ぶべきか。


 頭が冴えてきたところで、ステータス確認しとくか。

 結構スライムに引っ付かれてたし、なんかスキル持ってかれててもおかしくねぇ。


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

〖イルシア〗

種族:厄病竜

状態:通常

Lv :20/75

HP :249/249

MP :192/192

攻撃力:239

防御力:178

魔法力:164

素早さ:161

ランク:B-


特性スキル:

〖竜の鱗:Lv5〗〖神の声:Lv4〗〖グリシャ言語:Lv3〗

〖飛行:Lv5〗〖竜鱗粉:Lv4〗〖闇属性:Lv--〗

〖邪竜:Lv--〗〖HP自動回復:Lv3〗〖気配感知:Lv2〗


耐性スキル:

〖物理耐性:Lv4〗〖落下耐性:Lv5〗〖飢餓耐性:Lv4〗

〖毒耐性:Lv5〗〖孤独耐性:Lv6〗〖魔法耐性:Lv3〗

〖闇属性耐性:Lv3〗〖火属性耐性:Lv2〗〖恐怖耐性:Lv2〗

〖酸素欠乏耐性:Lv3〗〖麻痺耐性:Lv2〗


通常スキル:

〖転がる:Lv6〗〖ステータス閲覧:Lv5〗〖灼熱の息:Lv5〗

〖ホイッスル:Lv1〗〖ドラゴンパンチ:Lv3〗〖病魔の息:Lv3〗

〖毒牙:Lv3〗〖痺れ毒爪:Lv3〗〖ドラゴンテイル:Lv1〗

〖咆哮:Lv1〗〖星落とし:Lv2〗〖くるみ割り:Lv3〗

〖人化の術:Lv3〗〖鎌鼬:Lv1〗〖首折舞:Lv2〗


称号スキル:

〖竜王の息子:Lv--〗〖歩く卵:Lv--〗〖ドジ:Lv4〗

〖ただの馬鹿:Lv1〗〖インファイター:Lv4〗〖害虫キラー:Lv3〗

〖嘘吐き:Lv2〗〖回避王:Lv1〗〖救護精神:Lv5〗

〖ちっぽけな勇者:Lv5〗〖悪の道:Lv6〗〖災害:Lv5〗

〖チキンランナー:Lv2〗〖コックさん:Lv3〗〖卑劣の王:Lv4〗

〖ド根性:Lv2〗〖|大物喰らい(ジャイアントキリング):Lv1〗〖陶芸職人:Lv4〗

〖群れのボス:Lv1〗〖ラプラス干渉権限:Lv1〗

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


 ……しっかし、改めて見ると、本当に一気にパワーアップしたな。

 Dランク上位からCすっ飛ばしてBランク下位まで飛んだだけはあったわ。

 特に攻撃力の上昇が半端ない。

 あれだけ遠くに見えてたステ200台の領域に余裕で踏み込んでるじゃん。

 今ならリトルロックドラゴンでも正面から殴り潰せるんじゃないのかこれ。


 減っているスキルは特に見当たらない。

 とりあえずはそのことを知り、安堵する。


 〖転がる〗とかなくなってたら、俺本当に心折れてたぞ。

 もう俺の相棒といっても過言ではないからな、〖転がる〗さんは。

 黒蜥蜴との思い出のスキルでもあるし。


 むしろ通常スキル〖くるみ割り〗がLv3に、称号スキル〖ちっぽけな勇者〗がLv5に上がっている。

 俺自身のLvも一つ上がっている。

 スライム倒した分の経験値が加算されてるみてぇだ。


 スライムの言動を思い返し、長い眠りで忘れかけていたことを思い出す。

 戦闘中は深く考える余裕がなかったが、奴については引っかかることが多すぎる。


 俺が人語を理解していることを一瞬で見抜いたり、『スキル』だの『数値』だの、『耐性を上げた』だのと口にしていたり、まるでステータスの存在を知っているかのようだった。

 決定的な点は、黒蜥蜴の危険性を把握していなかったあいつが、毒を受けてからすぐ黒蜥蜴から〖解毒〗のスキルを奪おうと動いたことだ。


 あいつの虫食いになってるスキルの羅列の中に、〖ステータス閲覧〗らしきものがあったように思う。

 ひょっとしたら、〖神の声〗もあったかもしれねぇ。

 あいつが最期なんと言ったかほとんど聞き取れなかったが、『神様』と口にしていたように思う。


 スライムの言動から窺える性格から考えるに、あんなロクデナシの神擬きに様を付けて敬うような奴には思えねぇんだが……あいつには、何がどう見えていたんだろうか。


 あのスライムは、俺と同じで前世の記憶が残ってるんだろうか。

 でもあいつ、昔洞穴周辺で見たときは〖ステータス閲覧〗らしいスキルは持ってなかったはずなんだけどな。

 だとしたらあの持ち前の不気味な能力で奪ったものなのか、何かのきっかけで得たものなのか……。

 結構前だから、あんまし確信持てねぇけど。


 向こうも俺のステータス見てたような口振りだったから、俺が〖神の声〗持ちなのは知ってたはずなのに、俺と意思疎通を図ってじっくり情報交換しようって意図はまるでなかったみたいだったしな。

 ひょっとして俺より〖神の声〗と仲が良くて、あれこれ聞き出してたから情報には困ってなかったんだろうか。

 しかし、もう倒しちまったんだから、どんな仮説を考えても確かめる術がねぇのがなぁ。

 仮説の上の仮説みてぇなもんしか思いつかねぇ。

 どうやってドーズやらマハーウルフを操ってたのか、なんでステータスがしっかり見れなかったのか、それさえ結局わからず仕舞いなんだから。


 進化とか間の悪さとかスライムに関してとか〖神の声〗に色々言ってやりてぇことはあるのに、得体が知れなさ過ぎて怒る気にもなれねぇ。

 何が目的で、どこまで関与してて、どこまでわざとなのか。

 時折意志のあるようなメッセージが送られてくるが、本当に人格のある相手なのかどうかも怪しい。

 ホントにこいつ、何者なんだよ。


【特性スキル〖神の声:Lv4〗では、その説明を行うことができません。】


 ……まーたその定型文かよ。

 

 システム的な説明には答えてくれるようだが、それ以上のことにまともな返答がきた試しがねぇ。

 ぐだぐだ話し掛けてくんのも、向こうが一方的に垂れ流してるだけって感じだしな。


 ……まぁ、今んなこと考えたって仕方ねぇか。

 またスライムみたいな奴が出てくるかもしれねぇし、そいつが友好的なら色々と聞きだせるかもしれねぇ。


 とにかく、今優先すべきはこの辺りの調査だな。

 主に拠点と、それから食糧の確保を。

 今の体格だと以前の三倍以上の食糧が必要だろうし、長いこと寝てたせいか腹が減って仕方ねぇ。

 狩りやすくて美味しいモンスターとかがいるとありがたいんだけど。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る