第2話

 意識が芽生えてから二日が経過した。

 わかったことは、ここが化け物だらけのヤベェ森の中ってことだ。

 なんか黒いワニとか、デカイ虫とか色々いやがる。


 多分日本じゃねぇな。

 アフリカだわここ。

 よく知らんけど、アフリカには黒いワニとかデカイ虫とか、歩く卵とか、手が四本ある熊とかいっぱいいるだろ。

 もうちょい国外のことに目を向けるべきだったな。

 外国がここまでヤバいとは知らなかった。こんなん泣くわ。


 因みに二日の間に、〖飢餓耐性〗と〖毒耐性〗を得ることができた。

 腹減ってキノコ喰って苦しんでたらこうなった。マジで辛かった。

 よくわからんけど、まぁでも手に入れてもそこまでヤバいもんじゃないだろ。


 後、〖転がる〗のスキルとやらを試してみた。

 念じると本能的に前転し、辺りに転がり回ることができた。

 〖転がる〗のスキルLvも2にアップした。

 転がったせいで高いところから落ちたせいか、〖落下耐性〗のスキルLvも2にアップした。

 死にかけたけどな。


 なぁ、俺もう疲れたよ神の声ちゃん……。

 家帰ってシャワー浴びてポテチ食べてぇ。


【特性スキル〖神の声:Lv1〗では、その説明を行うことができません。】


 もうちょっとプライベートな会話しようよ。

 俺もう、人恋しくて死んじゃいそう。

 そろそろ泣いちゃう。


【耐性スキル〖孤独耐性:Lv1〗を得ました。】 


 ゴメン、そんな気の利かせ方いらない。

 気遣いは嬉しいけど、そういうのは求めてないです。

 人の暖かみが欲しいです。


 俺は孤独に耐えられる男になりたいんじゃなくて、孤独じゃない男になりたいの。

 強さはいらないの。弱さを認めた上で生きられる人生を歩みたいの。


 人生じゃねぇか、卵生か。なんか意味変わっちまうなこれ。

 そういや俺、ここに来るまで何やってたっけ?

 全然思い出せんな。日本人だったってのはわかるし、俺の常識の中にはこんな化け物がいなかったのはわかるが。

 男か女かすらあんま自信ねぇのよね。いや、多分男だと思うけど。


 研究所に誘拐されて身体を弄られ、アフリカに送り込まれたのか?

 どうよ神の声ちゃん、名推理っしょ?


【称号スキル〖ただの馬鹿:Lv1〗を得ました。】


 ……その答え方やめてくれねぇかな。

 結構、普通に傷ついちゃうから。


 ステータス画面を確認してみる。


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

種族:ドラゴンエッグ

状態:通常

Lv :1/5

HP :5/5

MP :1/1

攻撃力:1

防御力:3

魔法力:1

素早さ:10

ランク:F


特性スキル:

〖卵の殻:Lv--〗

〖神の声:Lv1〗


耐性スキル:

〖物理耐性:Lv1〗〖落下耐性:Lv2〗〖飢餓耐性:Lv1〗

〖毒耐性:Lv1〗〖孤独耐性:Lv1〗


通常スキル:

〖転がる:Lv2〗

〖ステータス閲覧:Lv1〗


称号スキル:

〖竜王の息子:Lv--〗〖歩く卵:Lv--〗

〖ドジ:Lv2〗〖ただの馬鹿:Lv1〗

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


 ああ、ドジも上がってたね。

 思い出したくないこと思い出しちまった。

 これ本当、何の役に立つんだよ。


 HPは寝ると回復するらしい。

 この二日、なるべく傷つかないよう細心の注意を払って生きてきた。

 化け物には近づかず、落ちた果物やら小さな虫を喰い、泉の水を飲んで生きてきた。


 抵抗はあったが、仕方なかった。

 腹減って死ぬかと思った。

 我ながら、二日はちょっと折れるの早かったと思う。

 仕方ない。人間のときより空腹感半端なかったかんね。


 育ち盛りなんだろな。

 卵だし。


 にしても……なんか、自分のLv上がんねぇなぁ。

 闘わなきゃいかんのか?

 あんなモンスターとぶつかんのなんか嫌だぞ俺。


 だって俺、卵だし。

 いつ孵化するんだ?

 ドラゴンの卵とかって神の声ちゃんが言ってたけど、一向に自分が成長してる実感ないんですか?

 ひょっとしてLv上げなきゃ駄目なの?

 化け物倒したりして?


 無理だろ! 俺、卵じゃん!

 巣か? 巣から落ちたせいか?

 俺が最初に落ちた木ィ、ひょっとしてドラゴンの巣だったんじゃねぇの?

 あそこにいたら順調に成長できてたんじゃなかろうか。



 あ、ヤベ。

 向こうの木の根からグロテスクなデカイ芋虫が出てきた。

 考え事してたせいで発見が遅れた。


 奴の名はダークワーム。

 ここに来たその日から、俺と鬼ごっこを繰り広げている相手だ。

 勿論、俺が逃げる方な。


 あのダークワーム以外の化け物は基本的に俺を無視してくる。

 動物は大体じっとしてると俺を見逃してくれる。


 ドラゴンの卵に触れたら親が飛んでくる可能性があると、確か初日に神の声が言っていたように思う。

 きっと動物達はそのことを知っているのだ。


 しかし、奴は襲ってくる。

 ダークワームを見て、〖ステータス閲覧〗と念じる。


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

種族:ダークワーム

状態:通常

Lv :3/8

HP :8/12

MP :3/5

攻撃力:5

防御力:2

魔法力:3

素早さ:8

ランク:F


特性スキル:

〖芋虫:Lv--〗


耐性スキル:

〖毒耐性:Lv1〗


通常スキル:

〖噛みつく:Lv1〗

〖仲間を呼ぶ:Lv2〗


称号スキル:

〖卵喰らい:Lv1〗

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


 やばいやばい。

 全体的に俺よりステ高そうなんよね。

 ギリギリ俺のが素早さ速いから、今までなんとか逃げてこれたけどな。


 なんでコイツだけ俺をしつこく狙ってんのか不思議だったけど、けったいな称号スキル持ってるんだな。

 〖卵喰らい:Lv1〗

 多分これのせいだな。

 何か知らんけど、奴は卵の味を知っちまってるらしい。

 和解は不可能っぽい。意思疎通不可。


 どうやら今、ダークワームは少しだけHPが削られているようだ。

 放置していたらいつか寝込みを襲われかねんし、ここでやってしまうべきか?

 Lvは俺より上だが、防御は俺よりも低い。

 一発攻撃を受ければアウト臭いが素早さでは俺が勝っている。


 行けるはずだ。

 奴を倒し、俺はLvを上げ、孵化する。そうすればこのエッグライフも終わるはずだ。

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