「ジェローム君から聞いたぞ。婚約破棄とはどういうことだ？　わけは自分からは言えないと頑なに拒否されてしまった」

　娘の婚約者から一方的に婚約破棄を告げられた父親は娘クラリエットに理由を尋ねた。

（あいつ……自分が言いたくないからって）

「お父様、醜女（しこめ）とは結婚できないと言われました」

「ん？　なんだって？」

「醜女ですわ。わたくしの顔が醜いので結婚が出来ないそうなのです。最高の女性にも出会ってしまわれたそうですよ」

「なんだと！？　本当にそう言ったのか！？　お前の顔が醜いなんてそんなことあるはずがないではないか！　むしろ醜い顔なのはジェロームの方ではないか！　あのクソガキ……殺してやる！」

「お父様！　待ってください！　わたくしもあのような男と結婚しなくなってせいせいしております。結婚相手はまたすぐ見つかりますよ。実はわたくし色々な貴族の方から言い寄られているんですよ」

「なに？　そうなのか？　それは良かっ……いや、それも駄目だな。心配だ」

「心配などしないでください。わたくしは父上が決めてくださった相手と婚約いたしますわ」

　そういってクラリエットは満面の笑みを見せた。

「とにかく一度両家で話そう。もちろん婚約は破棄だ！　ジェロームが出会ったという最高の女性にも来てもらう」

「わかりました」

　婚約破棄を前提とした両家の話し合いが行われることとなった。

　その場でクラリエットは衝撃を受けることになる。

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