第12話:漸くのステータス確認
《……シズヤ、貴方ドライなうえに鈍感なのね。貴方に心奪われた女の子は苦労しそうね》
女神さまが何か言ってる。
さて、これで俺が中崎に絡まれる原因は分かったな。もしかして俺が覚えてないだけで、何かしたかなって考えた時間を返せ。秒だけど。
くだらないことで絡みやがって、何が女に困らない男だよ! 困ってるじゃん。てか、完全に嫉妬じゃないですか。やだー
「あーはいはい、分かった分かった。俺に絡む理由は嫉妬なわけね? じゃあもう二度と副委員長と話さなければ中崎は絡んでこない。オーケー?」
やっと原因が分かり、少しテンションが変かもしれないが致し方なし。だって意味不明なまま絡まれ続けたのが、解決するかもしれないんだもん。そりゃテンションも変になりますよ。
クラスメイト達がポカーンとしている。
《あーあ……》
女神さまは何故かやっちゃった感を出している。
「なっ!? おまっ!」
そして真っ赤になる中崎。意外と
「えっ」
副委員長の声が微かに聞こえた気がしたが、気にしている場合じゃない。
どうせ両思いが発覚して驚いているだけだと思うし。
「安心しろ。副委員長とは片手で足りるくらいしか、話したことはない。俺はお前の恋路を邪魔しない。寧ろ応援しようじゃないか」
はい、解決。解散解散!
《……》
女神さまから何か言いたげな気配を感じる。
そうですね。早いとこ部屋へ戻りましょうか……みんなの思考回路が復活する前に。
しかし俺が食堂を出ようとしたタイミングで扉がノックされる。
入ってきたのはロイルさん。
「失礼致します。シズヤ様、少しよろしいでしょうか」
中崎と副委員長のカップリング暴露に、ポカーンとしていたクラスメイト達の視線は、そのまま声の主であるロイルさんに向けられる。
「はい。どうかしましたか?」
本当になんの用でしょう。
「シズヤ様を部屋へご案内させていただこうと思いまして。」
え? どういうこと、さっき案内してもらいましたが……ボケま──ひぃっ 冗談です。その圧やめてくだしあ。
「えっと……?」
この行動の意味を
「はい。先ほどもお伝えしましたが、シズヤ様は
言外に察しろと言うロイルさん。
そして俺の適正魔法が無いとも有るとも言わず、言質は取らせない徹底ぶり……流石です。
あーなるほどね、みんなの前で言っておくことによって後々文句を言わせない、と……布石が役に立った、いや布石を利用してきた?
……壁に耳あり障子に目ありだな。
「ありがたいです。そういうことでしたら、よろしくお願いします。」
ロイルさんの真似をして、にこりとしてみる。
「畏まりました。」
本家のにこり。
俺とロイルさんがにこにこして異様な空間の完成。みんながどんな顔して、何を思っているか知らないが今のうちに食堂を脱出しよう。
◆───────◆───────◆
気持ち足速にロイルさんと二人して食堂を脱出。
食堂よりは俺の部屋の方が近くなった辺りまで歩みを進めると、俺が何か聞く前にロイルさんから話しかけてきた。
「これで一人部屋でも問題ありませんね。」
と、にこり。
「そうですね。あの……もしかして聞いてました?」
もちろん、食堂での会話のことだ。それくらいは察してくれる人だろう。
ロイルさんは無言でにこり。
俺は無言でぞわり。
この無言は肯定と見て間違いないだろう。俺はこの件に関して、取り敢えず思考を保留にすることにした。
俺の部屋の前に着くとロイルさんは、それではまた。と言って離れていった。
俺は部屋に入り扉を閉めて、今度は迷わず大きなベッドにダイブ。
なんか疲れた。と、それだけ思って
────────────────────
────────────
──────
ふと目が覚めた。寝落ちたらしい……どれくらい寝ていただろうか? 今は深夜帯だろう、正確な時間は分からないが。
《おはよう。シズヤ》
まだ夜だけどね。と女神さま。
ふぁい、おはようござぁます……。
起きたものの頭がぼーっとする、起動するまでごろごろ。
起きてから三〇分ほどして起き上がる。よし。
《頭起きた? シズヤ、ステータスを確認するなら今じゃない? 色々検証するんでしょう。》
あ、そうだった。やっと落ち着いて確認ができる。
《はい。では心置きなく──》
──アクセス
================
種族:人間/男
【状態異常】なし
【適正魔法】転移魔法▼
【称号】勇者▼
================
目の前に表示される半透明な板? 近未来的で凄くいいと思います!
机に投影するキーボードならネットで見たことある。確かレーザーキーボードとかバーチャルキーボードってやつ。
でもこれは空中に何かに映すでもなく……さすが異世界。異世界小説で、ある程度は想像の範囲内だろう愛読者K達なら、こういうのは常識なんだろうか?
しかし、んん……簡潔すぎやしませんか? え、みんなこんな感じなんですか?
《ううん、他の子はもっと色々表示あるわよ。保有魔力量とか体力とか他にもいくつかあるわ。》
《え、なんで俺のはこんなに簡潔にまとまってるんですか?》
《シズヤは魔力に限界はないし、体力も何もかも普通の人間とは違うのよ。だから表記がなくても簡単に死んだりしないと思うし、だから見やすいようにまとめたわ!》
ドヤッて聞こえてきそうな声で女神さま。
おや? 俺は異世界に来るにあたって異常な進化をしたようだ。
というか女神さまステータスいじれるんですね。
《他の子のは無理よ? シズヤのも基本値はいじれないわ。あくまで表示するかどうかだけ。》
なるほど……。
《でも本当に見えなくて大丈夫ですか? 不安なんですけど……》
《シズヤには表示していないだけで、私には見えているから大丈夫よ! 危ない時には表示してあげるわ。安心して。》
それなら常に表示してくれてもいいんじゃ……?
常に不安は消えない。ある意味慎重になれて、いいかもしれないけど……。でもまあ俺は数値強いから余裕〜って油断しているよりは確かにいい。増長はしないけど慎重な行動は大事だもんな。
では気になる三角をタップ──できた。
触れるか不安だったけど触れた。本当にどうなってるんだ……。
▲転移魔法:一度行ったことがある場所に瞬時に移動することができる……かもしれない。
▲勇者:最終的に神のようだと思える強さに至れる唯一の人間。
三角が下に開いて詳細が見れた。
けど、そんなの分かってますが? ってことしか書いてないんですが! あと何だよ、かもしれないって……曖昧すぎないか?
《それはそうよ。シズヤが分かっていることしか書かれていないもの。》
あー、なるほど。本当に想像力で魔法を使う世界なんだ……。ある意味〖自分の適正魔法の魔法を創れる〗ってことか。
他の人のステータスを見たわけじゃないから絶対ではないけど……いわゆるお決まりの魔法ってのは存在しないのかもしれない。
《レベルという概念はないんですか?》
よくタイトルなどで聞くのだが、表示されていないだけなのか、そもそもないのか。
《この世界にレベルは無いわ。あとスキルっていうの? もないからね》
レベルくらいはあっても……と思わなくもないけど
まさしく、〖剣と魔法の世界〗ってことか。
取り敢えず、やっとステータスが確認できた。まあ、あまり見れても見れなくても関係ない中身だったけど……でも見ておいて損はないだろう。
うーん、まずはやっぱり転移といえばどうしても移動手段なイメージなんだよなあ……どこの主人公にもチート持ちにはデフォルトなイメージが拭えない。国を越えて楽々魔物を狩りますっていう……。
いきなり国越えは怖いし、そもそも行ったことない所でもいけるのか検証してからがいいと思うし、取り敢えずはこの部屋の中だな。
この部屋は丁度扉から左手奥にベッド、右手ほぼ目の前の奥に二人がけくらいのソファとテーブルがある。
だからまずは課題を決めてその右のソファから、左のベッドへの移動で試してみよう……。
検証開始。
一回目は〖声に出して転移する。対象は自分〗──ソファに座った状態からベッドに座るイメージで声に出して転移してみた。
結果は成功。
身体中を確かめるも、どの部位にも欠損を出さずに転移ができた。
《一度で成功させるなんてね、おめでとうシズヤ》
女神さまからお褒めの言葉。
《ありがとうございます。一度で、というのは珍しいことなんですか?》
《想像力が大事だと言ったでしょう?他の子達もきっと一度でできた子は少ないんじゃないかしら? 手から火を出したことも水を出したことも、風を動かずに自ら起こしたことも、土を創り出したことも光を発生させたこともないでしょうからね。》
経験ないものをイメージするのは難しいじゃない? と女神さま。
確かに……寧ろ転移よりも基本属性の方が難しそうに思えてきた。
《確実に転移の方が難しいわよ……》
呆れ気味の女神さま。
《そうですか?》
《そうよ。基本属性は目に見えるでしょう? あちらの世界にもあったものだし。でも転移はそう言ったものとは違って例がないでしょう?》
ふむ……火はマッチやら日光を使ってガスを使用しなくても起こせるし、水は水道をひねれば出る。イメージならば
そして転移……確かに現代で転移に似たようなことをできる物は存在しない、そういうことか。転移に似たことをできるものがあれば車や電車はいらなくなるもんな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます