By-eveシリーズ登場キャラ表(完全版)

伏潮朱遺

その1 主要人物

・斎市 朱咲(ものまち スザキ)(18)

 本作主人公。復讐代行を生業とする祝多出張サービスdEVEry(デバリィ)二代目店主。

 通称スーザちゃん。本名は雀翼朱裂(すばさ・アカザキ)というが、裂の字が気に入らないので名字ごと変えてしまった。チューザとも呼ばれるが、本人はこれも気に入っていない。

 ベイ=ジンとタ=イオワン(女体)の血を引く。ゲングウとは顔かたちがまったく同じ。生物学上の父親は徒村。

 過去にタ=イオワンの手違いで双子の妹と間違えられ、子宮を摘出された。ことになっているが実は、双子の妹に後継者の座を譲っただけ。代わりに双子の妹は、後継者という椅子から逃げられないように眼球を摘出された。言い換えるならスーザは、子宮か眼球か、失ってもいいほうを選んだ。

 徒村に想いを寄せるが、徒村に言わせればタ=イオワンからだいじなものを奪いたかっただけとのことでまったく相手にされていなかった。実の親子なので家族愛以上の意味で好かれるわけにいかなかったというのが徒村側の真相。

 祝多に存在を殺された胡子栗を助けたのも、祝多に嫌がらせをするためと使い勝手のいい手駒が欲しかっただけ。胡子栗に対して特に深い思い入れはない。

 叔母キジ=ハンの裏工作により、徒村を逃がした濡れ衣を着せられ、家畜同然に放り出された。後継の座も妹に譲り、徒村がいないなら実家にいる理由もないので、放逐自体はむしろ願ったり叶ったり。祝多の店に転がり込み、師と仰ぐことで生き延びた。徒村と再会するためなら、彼女は何でもした。しかし、徒村が逃げた本当の理由が祝多と会うことだと知り、嫉妬のあまり祝多(タ=イオワン/男体)を殺害する。

 祝多出張サービスで少女のSOSを受け取り、復讐代行としての組織的強姦を指揮する。先代の祝多を殺したため、店主の役割を押しつけられた。胡子栗を先兵として派遣し、基本的に自身は実働に加わらない。見た目に寄らず体育会系の技を操り、複数のガキを回し蹴りで昏倒させていた。祝多の残した手足にお面をかぶせたのは特撮好きなスーザの趣味。

 身体のラインが出る、膝上丈のワンピースを好んで着用する。気分に応じて色を変えるが、名前にも入っている赤系が好き。

 対策課というつながりを通して徒村と一緒にいたのは一年にも満たないが、彼女にとってこの一年未満が人生で一番楽しくかけがいのないものだった違いない。望み通り徒村に殺されていたほうが幸せだったかどうかはまた別の話だが、入浴時まで二丁の拳銃を携帯する徒村といえど、実の娘に引き鉄を引くことはできなかった。

 アダム出産まで出張サービスに居座っていたのはゲングウではなくスーザであり、出産後に交代し、アダムを胡子栗に預け、「やらなければいけないこと」をしに行った。ゲングウを自分のスペアとするならば、アダムを自分の子と主張しても問題はなく、ゲングウから奪ったとは認識していない。両の眼球を潰してまで「最後に選んだのがアダム」と意味深な言葉を胡子栗に残したが、その真相はいずれ明らかになる予定。(家楼最終話にて)

 




・徒村 等良(あだむら ナドヨシ)(30)

 本作のもう一人の主人公。対策略的性犯罪非可逆青少年課(略して対策課)の新人。

 通称ムダくん。本名はとむらヒトラ。本人としては改名した覚えはないが、1作目でスーザに読み間違えられたときに訂正を怠ったため、作中では「アダムラなどよし」と名乗り続けていた。違う名で呼ばれた瞬間に過去を封じ、ただの「アダムラなどよし」として生きようとしたのかもしれない。本人の認識としては、島で船に渡った際に自分は死んでしまったので、その後俳優になったり公安に所属してみたりしたのは、作中で本人が言及した通り「余剰部分」である。

 父親は20年前に対策課課長をしていたほう(4作目登場)の登呂築。母親はタ=イオワン(女体)。

 20年前、タ=イオワンの企てた少年少女大量失踪事件の被害者における唯一の生還者。本人は母親が迎えに寄越した船に乗っただけだが、殺されなかった理由は、タ=イオワンに気に入られていたというより、ベイ=ジンの血を引いていたから。

 タ=イオワン(男体)に対し限りなく恋心に近い想い(本人は認めていない)を抱いていたが、スーザに殺されたと知るや、レゾンデートルが揺らがされるほどに絶望する。そもそもタ=イオワンを捕まえる部署に入ったのは、島の外で個人的に会うため。

 1作目時間軸の一年前にタ=イオワン(男体)と再会することが叶うが、陣内千尋の存在理由と目的がタ=イオワンの組織との癒着と存続と知り、陣内千尋を射殺する。そのことで志遣の恨みを買い、油断したところを後ろから頭蓋を撃ち抜かれたはずだったが、応接室に控えていたビャクローが銃弾をはじき、徒村には当たっていない。徒村の死因は、志遣のヘッドショットではなく、スーザの口移しの麻酔からの生きたまま食い散らかされたことである。ビャクローは胡子栗を気遣ってあえて嘘を教えた。実際に遺体を見た瀬勿関が徒村の頭部に銃痕がないことに気づき、現場に駆け付けた荒種に、胡子栗の耳に入れないという約束で説明した。よって、本当の死因を知らないのは胡子栗だけである。

 悪を滅ぼす云々や、正義の遂行云々は、徒村の根底から発した目的ではなく、それを免罪符にタ=イオワンを殺す動機を正当化したかっただけ。長年タ=イオワンと一緒にいたことでタ=イオワン由来の毒物に長期間晒され、正常な判断認知ができていたかどうか疑わしい場面が散見される。

 タ=イオワン(男体)に焦がれるあまり性癖が黙示録レベルで歪んだ。ことになっているが、ガキやただの女に興味がないと言い続けていたのは、実の娘のスーザに関心を持たないようにするための自己暗示だった。

 警察庁の陣内千尋の下で志遣と同じ部署にいたはずだが、志遣のことはまったく憶えていなかった。興味がないので記憶に留めていなかったのか、本当に面識がなかったのかは不明。





・胡子栗 茫(えびすり トール)(33)

 対策略的性犯罪非可逆青少年課(略して対策課)課長。厳密には二代目。

 本名は小頭梨英(オズなしひで)というが、荒種は「オズりえい」と読み間違えてそのまま。ただ、身体的には女なので戸籍上は「りえい」であり、「なしひで」のほうは自称の可能性もある。いずれにせよ本人は「りえい」という名を気に入っていない。作中でも何度も名を変えている。

 別宅で性的暴行を繰り返す父親、それを見て見ぬをふりし金銭を口封じのごとく与える母親に挟まれた過剰なストレスから夜の街で立ちんぼしていたところを荒種に拾われ、まさかの求婚を受けるが、身体的には女でも男でもなく、内面的には男で、志向は男というわけのわからない自分を受け入れられるわけがないと、祝多が企てた大量失踪の道連れをフライングエイジヤのサイトで集う。荒種を振り切り港まで行くが、結局乗ることはできず、仲間を見捨てた罪の意識から、真冬の海に飛び込む。すぐに荒種に助けられたため命に別状はなかった。

 自分と同じ境遇の孤独なガキをなんとかしたい一心で立ち上げた飛行(非行は誤り)少年グループ:フライングエイジヤだったが、結果として祝多の材料調達を幇助するだけとなったためサイトごと閉鎖。少年課の刑事になり、荒種に頼んで対策課を復活させる。大量失踪事件でいなくなったガキの居所を探るため、情報開示の見返りとして祝多のお気に入りの登呂築(のちの3代目課長)と寝たことで祝多の怒りを買い、存在を抹消される。祝多出張サービスの雑居ビルの地下2階で“商品”以下の“備品”と化していたところをスーザに拾われ、男に変わる性転換手術を受ける。

 自分を助けてくれたスーザに忠誠を誓い、祝多出張サービス営業部社員として働いていたが、1作目で対策課課長の座を取り戻す。スーザに男性器があると思い込んでいるのは、本人も詳細を抑圧している記憶(4作目)でスーザと同じ顔の男に性的に暴行されたことがあるため。顔と性別だけ断片的に思い出してしまったことによる弊害。

 瀬勿関は、性転換後のケアも含め20年前来の主治医。貴重な実験体だと嘯きながらも、それなりに心配してくれるので頼りにはしている。

 保護者のような存在だった荒種の熱心なアプローチに折れ、結婚以上の関係を踏まえた同棲を始める。

 スーザが連れて来た赤ん坊アダムを3年間育てる。別れが突然すぎたために空いた穴を埋めるように、対策課出動の事件で出会った赤火(あかほ)他兄3名を養子に迎えた。




・瀬勿関 シゲル(せなせき シゲル)(?)

 本名は瀬名 雪季(せな セキ)。3作目で助手の悟桐にシゲルという名を返す場面があるが、悟桐の求愛を受け入れたリップサービスでしかない。不遇な死を遂げた不破への罪悪感から、戒めとして不破の名を背負った。スーザの云う「呪い」はこのこと。

 凶悪性犯罪者更生収容施設;国立更生研究所E-KIS(エキス)所長。精神外科医。文葦(ぶんい)学園校医。

 祝多と共同で、未成年の女子を保護するための文葦学園を創る。追ってできた性犯罪被害者団体イブンシェルタとも連携を取り、性犯罪被害者への支援に力を入れる。というのも、過去性的被害にあった経験があり、そのときの怒りと悔しさがあらゆる原動力となっている。加害者に対しては厳罰と社会的制裁を掲げ、性犯罪者更生プログラムを作った師の正しさを証明する目的もあり、師の名前を冠した国立(くんだて)(のちに名実ともにこくりつと読んで差し支えなくなる)更生研究所を構える。性犯罪は不治かつ再犯を繰り返すという持論の下、彼らに期日という去勢手術を執行する。未成年は更生研の対象外という記述が本文中に見られるが、犯行当時13歳だった無人を収容していることからも、「瀬勿関の手に負えない」未成年は対象外という意味合いでしかない。

 大学病院勤務時代に、外科医の緑野リョクヤに暴行され、マリアを身ごもり、迷った末に出産を選ぶ。そののち、クリニック開業の傍ら大学で教鞭を取るが、付き合って振った女を無意識のうちに殺しているかもしれないと、学生の不破に相談を受ける。彼を重篤かつレアケースとして大学病院をたらい回しにし、不破の信用を裏切った挙句、不破の模倣犯に不破を暴行の末殺され、それを見ていた娘のマリア(当時の不破の彼女)はPTSDを発症する。

 不破を治療できなかった後悔と懺悔の気持ちに向き合えず、不破を殺した模倣犯に登呂築無人(とろつきナサト)というラベルを貼り、研究所の地下で7年間軟禁。マリアがナサトを殺害することで事件は7年越しに終結し、クリニック開業当時に浮気相手として同棲していた看護師・悟桐の長年積もりに積もった悲痛な訴えをようやく受諾し再婚。

 研究所内では過激なデザインの下着に白衣を羽織るという格好でうろつくため、胡子栗には「妖怪露出狂」と揶揄される。老いゆく身体を厭い若さを維持する方法だと豪語して已まないが、本当は、収容中の性犯罪者ならびに自分を性的に暴行したリョクヤを精神的に追い詰めるため。過去に暴行を受けてから心に分厚い防壁を張り、自分の身体がどうなろうと頓着しなくなった。患者という立場の人間に対し多大な愛を注ぐのも、自分が一番救われたかったという悲しみの裏返し。

 尚、作中で明言がないので、瀬勿関が徒村を必要以上に高評価する理由について補足する。徒村は、タ=イオワンによる大量失踪事件の唯一の生還例(サヴァイヴァ)つまり犯罪被害者である。買っていたというより手厚く面倒を看ていた、に近い。一連の犯罪被害者に対する過剰な思い入れに端を発する反動でしかないが、瀬勿関が気づいていたかどうかは微妙である。実の娘を可愛がりたくても可愛がれない複雑な感情のやり場として、荒種、胡子栗、徒村、朱咲をまるで我が子のようにいい意味で同列に扱っていた。

 少女や性犯罪被害者といった弱者を支援する姿勢に感銘を受け、祝多のことは友人と認めているが、祝多の趣味である人体蒐集に関しては難色を示す。あろうことかその材料をガキを大量に誘拐することで果たそうとする祝多のやり方に激しい憤りを覚えるが、自分では止められないこともわかっており悲嘆に暮れていた。荒種を県警本部長に、胡子栗を対策課課長にすることで、共に闘う仲間が欲しかったのかもしれない。

 ゲングウを保護し、アダムの出産を研究所で手伝った。徒村に何もしてやれなかったのでせめて、スーザの心には寄り添おうと思った。




・荒種 温大(あれくさ ウンダイ)(48)

 県警本部長。通称:大王。

 新人時代は捜査一課にいたが、口の堅そうな(何も知らない)若者という立場を見込まれ、通称カツブシ(課潰し)と呼ばれる同業者からも疎まれる汚れ部署に引き抜かれる。そのときの上司が胡子栗の実父だが、最悪のタイミングで知ることとなる。

 夜の街で立ちんぼしていた小頭梨英(当時13歳)に出会い、どうしていいかわからずとりあえず自宅に連れ帰る。それが一目惚れだったことはあとから気づいたが、警察官という立場や常識、世間体に挟まれ苦悩する。というのも作中では触れられていないが、胡子栗に出会うまでは何の変哲もない至極まっとうな人生を歩んできた(と本人は思っている)ので、まさかこんなことになるとは本人も予想だにしていなかった。が、一旦受け入れたら早いタイプなので、20年間付かず離れず胡子栗を見守り続けた結果、ようやく想いが実を結んだ。

 5作目でビャクローを庇って銃弾に倒れるが、守るべき存在と敵対すべき存在を即座に見切る天賦の才が備わっているので、頭より先に身体が動いてしまった。お陰でビャクローの信頼を勝ち取り、胡子栗が真相に辿りつくことができた。くどくど悩まず、その都度直感を信じて動くことで最上の結果を導ける人。

 徒村が胡子栗と幾度となく寝ていた件だが、そこそこに激しい嫉妬を感じており、徒村にも直接圧力をかけていた。が、その間にも胡子栗が自宅に訪ねてきてくれていたので、しつこく追及はしなかった。それをすると嫌われることがわかっており、胡子栗に嫌われるくらいなら我慢しようと腹を据えた。

 いつまでもオズくん呼びを直さないのは、胡子栗が自己否定の為に何度も何度も被った仮面(名前)に惑わされず、本人の核であるところの本名を捉まえていたいという無自覚の願いからくる。が、胡子栗としては、とっくに捨てた本名(素の部分)をいつまでも握られているので居心地が悪い。

 胡子栗が祝多に存在を殺されたときは、本気で祝多に殺意を憶えた。持ち前の直感が働いて祝多に対し攻勢に出ることができなかったが、祝多の傍でちょろちょろしていた小娘が胡子栗を助けたと知り少なからず感謝を覚える。荒種がスーザに頭が上がらないのは、このときの恩があるから。

 胡子栗が望んだとはいえ一気に4人も養子を迎えた件だが、パートナに胡子栗を選んだ時点で「世間一般の幸せな結婚生活」が送れないことは覚悟していたので、嬉しくないわけがない。が、時折悪ふざけが過ぎる長男と二男にきついお灸を据えることも忘れない。同棲を始めてからのほうが、胡子栗に対し殊更に独占欲が強くなった。




・祝多 イワン(いわた イワン)(?)

 祝多出張サービス初代店主。タ=イオワンという名は、本拠地の台湾をもじって陣内千尋が付けた通称。

 黒く長い髪、白い肌、青い眼、赤い唇が特徴。眼鏡をかけていることもある。

 タ=イオワンには男体と女体の2タイプが存在する。祝多はいわば二人の人物の総称。誰にもわからないところでこっそり入れ替わっていた。が、二人の内面はすでに状況と場所依存になっており、祝多出張サービスにいれば祝多イワンであり、徒村が「タ=イオワン」と呼べばタ=イオワンになる。それだけのことである。

 タ=イオワンは、最高権力者ベイ=ジンとまったく同じ顔だと志遣が説明していたが、志遣の知るベイ=ジンと陣内千尋の知るベイ=ジンは実は別人。

 人体アーティストの舞飛椿梅(マイヒ=ツバメ)、人体コレクタの椿梅(ツバメ)アザミユウこと燕薊幽(エン=ケイユウ)も基本的にはいずれも同一人物だが、多重人格というよりはこれらも状況依存の演じ分けに近い。

 肉体が死ぬたびに器を乗り換えているため、時折思考と行動にバグが発生する。少女から依頼を受けた復讐代行を生業とする祝多出張サービスならびに、未成年の少女を保護する文葦学園、性犯罪被害者支援団体イブンシェルタも、そのバグが創らせた気まぐれかもしれない。祝多を師と仰いでいたスーザでさえ、心の内がわからないとこぼす。

 国立更生研究所からお気に入りを見繕い、瀬勿関に頼んで自分の傍に置いていた。瀬勿関に怨み事を述べていたように、それなりに心の拠り所にしていた様子。

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