金髪ロリだったツンデレの元カノが黒髪巨乳美少女になって三年ぶりに俺の前に現れた。丁度いい機会だから嫌味な双子の妹を見返してやろうと思う。
瓜嶋 海
第1章
第1話 元カノの一人くらいはいる
双子の妹がいる。
それもとびきり美少女な妹が、同じ高校に通っている。
その名前を聞けばうちの高校の男は例外なく盛り上がる。
容姿端麗でノリが良く、その二つを器用に使いこなすコミュ力のおかげで、萌夏は学校一の美少女の名を誇っていた。
誰とでも明るく接するその姿は真の陽キャ。
陰キャと言って他を排斥する悪ノリ集団を称したものではなく、本当の意味で嫌味なく与えられた方の陽キャ——それが萌夏である。
ただ俺だけは知っている。
あいつがそんな人間ではないことを。
裏の姿は醜く冷酷な猫かぶり女であることを。
◇
「まーた一人でソシャゲやってんの?」
自宅のリビングでゲームをしていたところ、片耳のイヤホンを奪われる。
声の方を向くと、そこには制服姿の女子高生がいた。
「ちょっとは人と遊びなよ」
「うっせぇ」
「あぁ、遊ぶ友達がいないんだっけ?」
「黙れ」
小さな手からイヤホンを奪い戻す。
しかし妹は憐れむような視線を送ってきた。
「あんた今いくつだっけ?」
「わかりきったこと聞くな。お前と日付単位で全くの同い年だよ」
「高校二年にもなって友達の一人もいないってなんなの一体」
そんなことは俺が知りたい。
高校に入学してもう一年以上。
しかしながら俺には友達の一人もいやしない。
対するこの妹はスクールカーストの頂点に君臨し、青春という名の人生黄金期を謳歌している真っ最中。
何故双子でこうも変わるのか謎で仕方がない。
「はぁ、そんなだから彼女もできないんだよ?」
「余計なお世話だ」
ゲームの邪魔をされてウザいので手で追い払う仕草をする。
だが萌夏はなかなか離れない。
「私さ、大変なんだよ。実の兄が同じ学校の同じフロアにいるのに、隠さなきゃいけないって」
「……ッ! それはお前が勝手に隠してるだけだろ」
「そりゃそうだけど」
俺と萌夏は同じ高校に通っている。
しかしながら、俺達が双子の兄弟であることは誰にも知られていない。
奇跡的に偏差値の高い進学校に入学したこともあり、俺達をよく知る馴染みの友達はいないため可能な学生生活。
そして俺達が関係性を隠している理由は一つ。
「あんたみたいなのと双子って思われるの嫌だから仕方ないじゃん」
「……」
「せっかく私が頑張って作り上げたキャラが台無しになっちゃう」
「猫かぶり陽キャは大変なんだな」
「演技すらできない人に言われたくないし」
萌夏は生粋の陽キャとして認知されている。
だから俺みたいな陰キャと双子なことがバレると、彼女の人間関係に支障をきたす可能性が高い。
まぁ理屈は分かる。
そしてそれは俺も同様だ。
「お前みたいなのと双子だってバレたら、厄介な男たちが群がってきたりして面倒だからな。俺もお前と双子だとバレるのは嫌なんだ」
中学時代は地獄だった。
当時から可愛いという形容詞を欲しいままにしていた萌夏には、当然言い寄る男も多かった。
そしてそういう奴らはまず初めに俺に話しかけに来るのだ。
「ふぅん。まぁいいや。でもさ、彼女くらい作っとかないとこのままじゃ魔法使いになっちゃうよ?」
「……その時はお前に特大メラゾーマでもお見舞いしてやろう」
「きっも」
彼女か。
懐かしい響きだな。
実は萌夏が知らないだけで、俺には元カノというものが存在する。
三年前、とあるオンラインゲームで知り合った同い年の女の子。
別に出会い厨だったわけではないが、意気投合し、年齢が同じ事を知って会おうという話になったのがきっかけだった。
「……今何してんのかな。あいつ」
金髪ツインテールが頭をよぎる。
外国人の母親を持つ綺麗な容姿の中学生だった。
今は高校二年か。
きっと萌夏をも凌ぐ美人になっているに違いない。
「何ぼそぼそ言ってんの?」
「なんでもねーよ」
「明日から二学期始まるんだからしっかりしなよ」
「はいはい」
俺は適当に妹をあしらいながら、再びソシャゲの世界へ戻った。
‐‐‐
昨日あんなことを思い出した手前、本気で夢かと疑った。
「みなさん、おはようございます。今日から光南高校に転校してきた
教壇の前で少女は微笑む。
その瞳がロックオンしているのは間違いなく俺。
朱坂瑠汰は三年前に付き合っていた元カノだ。
前に立つツインテールの彼女にその面影はしっかりと残っている。
だがしかし、何故か髪の色と瞳の色が変わっていた。
当時は金髪碧眼だったのに対し、今は黒髪黒目。
そしてなにより特筆すべきは。
「これからよろしくお願いします」
薄い夏服の胸元が大きく膨らんでいる。
凄まじい成長だった。
「こんな事ってあんのかよ……」
三年ぶりに元カノが俺の前に現れた。
金髪碧眼ロリっ子だったのが、黒髪黒目の巨乳になって。
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