のちの話
戦後しばらくして、その館の所有者の何代目か後の人物が、国営放送の取材に応じたことがあった。
「ええ、この館は戦前には幽霊屋敷と呼ばれていたんですよ」
「ほう、それはまたどういう」
「ちょうど居心地が良かったのですかねえ。国会議事堂にも近かったから、貴婦人達のサロンが行われている、って噂が立ったものですよ」
「今は大丈夫なのですか?」
「ええ。私の祖父がですね、効くのか効かないのか判りませんが、その筋の方に頼んだそうです。ただそれがあの、ザ・ブリッツの時でしてねえ」
「何と! あの時期に!」
「いやいや館が壊されるかも、というのは、住み着いた者達にとっては大変なことだったそうですよ」
「それで、その筋の方というのは? なかなか興味深いものですが」
「いやそれがですねえ。その辺りになると祖父は口を閉ざしたんですよ。報酬はしっかり渡したから、それ以上のことはと考えるな、と言われてましてねえ」
「今言ってしまっていいんですか?」
「いやあ、それを言っても判らないでしょう?」
あはははは、と持ち主が笑ったその時。
『判ったらどうするの?』
え?
と、持ち主と国営放送のアナウンサーはぎょっとした顔になった――かもしれない。
暇を持て余す19世紀英国のご婦人方が夫の留守に集まったけどとうとう話題も尽きたので「怖い話」をそれぞれ持ち寄って語り出した結果。 江戸川ばた散歩 @sanpo-edo
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