黒猫のママ

Meg

プロローグ

「シャンソンシャンソン、あたしは恋するシャンソン。あたしはあなたのためのシャンソン」


 腕に抱える赤ちゃんのために、歌を歌った。

 薔薇色の夕焼けの空。緑の林。甘い土のにおい。畑や風車小屋の、のどかな景色。

 赤ちゃんはすやすやと寝ていた。


「かわいいあなた。いとしいあなた。あたしはあなただけのシャンソン」


 赤ちゃんの寝顔をじっくり見て、小さな頭をなでる。くるくるの金の巻き毛がいとおしい。ぽろぽろ涙がこぼれた。

 眠る赤ちゃんを、小さなかごにいれた。ひとりで林の中へ向かう。

 もう二度と、ここにもどることはない。

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