こちら、動物学園高校生徒会執行部

レイ&オディン

第1話生徒会執行部役員エンジの憂鬱

僕は、動物学園2年のエンジ。

人よりも少しパソコンが得意だから、このあだ名がついた。

今日も生徒会の奴らは、僕の方が作業が早いからという理由でパソコン操作を押し付けてきた。

渋々引き受けたのだが、それは演技だ。

面白い事を思いついたのだ。

それは2週間前に遡る。

この学校は学校終了時に生徒会役員が夜の校内を見回りをする習慣がある。

更に、生徒会の中で一番可愛いE子さんは、ステキな癖の持ち主なのである。

僕は期せずして、その癖を聞いてしまった。

「ねえ、E子、そろそろ夜の校内であの大声の歌、やめてくんないかな。恥ずかしいのを通り越して、うるさいし。騒音だよ、騒音。」と生徒会で一番男前な女子でE子の大親友のI子が言った。

「だって、Iちゃん。怖いんだもん。」

確かにそうなのだ。

冬の校舎は、照明を落とすと真っ暗なのである。

「じゃあ、見回りの時だけ、照明をつけてもらおうか?」

「ダメだよ、Iちゃん。見ちゃあいけないものが、見えたらどうするの。私、その辺りを2度と通れなくなっちゃうじゃん。」

僕はこれを聞いてて、女子ってめんどくせ~と思った。

でも、生徒会で一番男前なI子のセリフは違った。

「大丈夫だよ、E子。確かに、この学園には、その手の話はたくさんある。でも、霊的なものは、目立ちたくないから、人の気配がすると、避けてくれるよ。」

かっけぇー!

不思議だ、I子が言うと、なんでもかっこよく聞こえるし、安心感が半端ねぇー。

僕も、未だにこの人だけはスゲーって思う。

そして、こんな男前な性格が校内の1/3生徒の心をつかんでいる。

特に、女子なのに女子のファンが多いから、この人を敵に回すと厄介なのだ。

でも、僕はそんなことを考えながら、この時ある事を閃いてしまった。

だから、今日はパソコン入力の仕事を引き受けたのだ。

そして、気が散るという理由で、一人で作業をさせてもらっていた。

結構仲間思いなE子とI子は、「エンジ、ごめんね!今度、埋め合わせをするよ。」と言ってくれた。

しかし、この表情が今日の下校時に阿修羅になると思うと、楽しくてたまらない。

その習慣にある事をするために僕は頑張るのだから。

その光景を頭に思い浮かべながら、僕は、仕事にとりかかった。

ふっと気づくと時刻は6時を回り、辺りは真っ暗になってしまっていた。

⦅おっ、もう少しで、時間だな⦆じゃあ、さっさと済ませなくては!フルスピードでキーボードを打っていると聞こえてきたのだ。

「ぼぉ~くらは、みぃーんな、いきている~♪・・・」

「しめしめ、今日もちゃんと見回り、ご苦労様。さあ、これをUSBに記録して。」と、呟きながら、クリックした。

ジ~、ジジジー、ジー、コットン。

パソコンを閉じてから、パソコン室の戸締りを終え、照明を消し、懐中電灯をスタンバイして、廊下の電気を消した。

外に面したガラス窓が今までの鏡効果から、夜の風景の眺めに変わった。

4階ともなると結構、夜景がキレイなことに気づく。

例の「ぼぉ~くらは、みぃーんな、いきている~♪・・・」の歌が大きい声で聞こえてきた。さっきより、近づいているらしい。

僕は、ニヤリとほくそ笑み、階段を降りていく。

懐中電灯を点けて、廊下ではなく、自分の顔を照らしながら。

静かに、足音を消して。

3階まで降りると、向こうに明かりが見えた。

⦅やった!⦆っと僕は心の中で拳を握って、ガッツポーズを決めていた。

僕は懐中電灯を消して息をひそめた。

コツコツ。

足音が近づいてくる。

⦅何か、変じゃないか?⦆僕の中の冷静な部分が言う。

⦅えっ、何、今、緊急事態、後にしろよ。⦆僕の中の悪魔が言う。

⦅じゃあ、良いよ。知らないからね。⦆僕の中の冷静な部分は引っ込んでしまった。

今だ。僕は顔に向けて懐中電灯を顔に当て、階段の陰からぬ~っと出て行った。

「うぎゃ~、はあ、はあ。」そこには、たじろいだ英語の先生の氷の女王がいた。

もう少しで、転びそうなぐらい後ろに跳んだ。

⦅やべぇ~⦆

「うん?エンジ。あんた、何やってんのよ!心臓が止まるかと思ったじゃない。」

「先生?やだな~。僕見て驚かないでくださいよ。僕お化けじゃないっすよ。」

僕もかなり焦ったが、なんとか誤魔化したかった。

なぜなら、「ぼぉ~くらは、みぃーんな、いきている~♪・・・」の歌声がかなり近くに来ていたからだ。

⦅あ~、今日の僕の努力がフイになる。神様、力をかして。⦆

多分、そんな状況で顔面蒼白の僕の顔が懐中電灯ではっきりと見えていたのではないだろうか。

やっと、冷静になってきた氷の女王は、「解ったわ。」と一言言ったのを皮切りに「あんたねぇ~、私を驚かそうなんて、100年早いわ。」そう言うがいなや、氷の女王は、僕の制服の襟首をつかむと、職員室まで引きずっていった。

「先生、誤解なんです。」

「まだ、言うか!みっちり絞ってやる。」と言い、氷の女王は、この後1時間説教を続けた。

途中、見回りを終えたE子とI子が職員室にカギを返しに来た。

「エンジ、何してんの?あ、わかった。また、何か悪さをしたんでしょう。」と笑いながら言い、カギを返すと、とっとと帰って行った。

結局、E子とI子を驚かす計画は黙ることにした。

だから、まだ、E子とI子を驚かす作戦は準備中で、今夜も「ぼぉ~くらは、みぃーんな、いきている~♪」の歌が真っ暗な校舎の中で響いている。

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