第11話(外伝)
皇を殺した感覚が、未だに残っている。
もちろん俺が密告したわけじゃないし、
俺が物理的に殺害をした訳ではないが、
そうとしか言い得ない。
刑事警察と言う職業柄、死体など飽きるほどに見てきた。
その度に、
しかし、誰もいなくなった。
俺には友人と呼べる人間がいない。
彼だけが、俺の支えだった。
ここに来て、真っ先に思ってしまった。
「こいつの存在は、邪魔だ」と。
自分の中に眠っていた汚い本性が姿を現した。
そんな自分に、恐怖を
彼に告げた。
「少しの間、僕との関係を隠してくれないか?」
彼は快諾した。
どこまでも、扱いやすい奴だ。
俺は見せかけの正義感を保ち続けた。
誰にもばれていない。
誰にもばれていない。
誰にもばれていない。
「ボクね、知ってるんだ♪」
ただの盲信だったようだ。
普通に勉強し、普通に進学し、
普通に就職し、普通に生活する。
親友の1人がいれば、
それほど苦ではないのだ。
実際は、そんなことは無い。
誰しもが、普通の生活に退屈を憶えるはずだ。
そしてそれは、俺も例外でない。
だから、彼の提案に乗った。
「誘いを断る」というNG行動。
もともと、断ることなど出来なかったのだ。
それが無ければ断っていたか?
まったくの愚問だ。
自分の悪に気づいた以上、
虐殺に走っても構わないと思った。
興奮だ。高揚だ。
この手で、人を殺せるんだ。
それなりの地位についた人物を殺すのは、
快楽以外の何物でもない。
親友の仇となれば、尚更だ。
俺は、虐殺の第一歩を踏み出したのだ!
矛盾が生じた。
「京介を切り捨てた」
「彼の仇を殺害した」
できれば認識したくなかった矛盾が生じた。
本心に嘘はつけなかった。
俺の本心は、
正義でなければ
悪でもなかった。
「車田 京介」を親友だと思う気持ちだ。
失って、より一層自覚した。
「胸を張れる人生を歩みたい。」
「俺にとってのそれは、人を信じることだ。」
「お前も、胸を張れているか?」
俺には分からなかった。
「胸を張れたか」ではない。
「胸を張るとは何なのか」、それが、
俺には分からなかった。
俺は、彼を失って壊れたのかもしれない。
もしくはもともと壊れていて、
彼を失って初めて傷を認識したのかもしれない。
でもそんなことは、もうどうでもいい。
皇を、殺害するべきだったのか。
私怨に任せて、
親友の仇と理由づけて、
生きるためだけに尽力した彼女を......
かつて高揚した自分に腹が立つ。
親友を見捨ててしまった。
人を殺してしまった。
その重圧に、押し潰された。
誰が悪いかなんて、もう分からない。
俺は、あることに気がついた。
Qの効果を発動する際、“自分”も選択出来る。
その事に気がついた。
そして同時に、あることを思い出した。
決して、嘘をつくことはできない。
これは、Qの能力の特性だ。
ならば、
気づいていない本心に語りかけることも、
できるのかもしれない。
静かに、【是本 真理】の項目を押した。
【能力:尋問 を使用しました。】
【質問をしてください。】
「胸を、張れたか。」
「いいえ。」
ノエル。
カードの配布がランダムだか知らないが。
ありがとうな。
さて、もう終わりにしよう。
俺はきっと、
彼を見捨てた時点で、
生き残ることなどできなかったんだ。
生き残ったところで、彼のいない世界など、
なんの意味も持たないのだから。
なんとなく、
親友をゲームで失った同じ者として、
東雲を選択した。
それ以外に、特に深い意味は無い。
【K】
<是本 真理が、東雲 直斗の密告に失敗しました>
「......できることなら。」
[生存者、6名。]
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