第4話 即身仏になる男

「わたしが即身仏になります」

その僧は手を合わせて、村人の前で祈るまねをする。

この村では水害が多く

どうすればいいのか右往左往しているところへ

旅の僧が現れる


話を聞くと、自分が犠牲になるという

神仏へ祈願すれば、災難は消える

村人は喜び、彼をもてなした。

なにやら難しい経文をとなえたり

護摩壇を作ったりと、それらしい事をする僧だが

実は、この男は偽物である


どこかの庄屋の息子でなまけもの

仕事もせずに、ぶらぶらしているため勘当された

坊さんに化けて

あちこちで悪さをして、逃げ出す

そんな繰り返しで、村を訪れた


「村人なぞちょろいもんだ、適当な所で夜逃げするか」

甘いもくろみも、村人は最初から見抜いていた

人柱が居れば、誰でも良かったのだ。

都合あるといいわけをして、外に出ようとするが

逃げられない


とうとう即身仏になる当日に、白状をする

「私は僧ではありません、何もできない男です」

泣きながら謝るが、村人は許すわけもない

穴を掘り石で周囲で固め、そこに男を押し込める

平べったい石を乗せて完成だ


何も見えない穴の中で、男は真剣に祈る

心の底から、神仏に助けを求めた。

それがどれほど続いたのだろうか、飲まず食わずで

意識もなくなり、穴の中で男が倒れる


ふと目をさめる

壁が崩れている

そこから、這い出すと

洪水でもあったのか村は跡形も無い

即身仏の石室だけ残り、ふらふらと外に出た男は

呆然と見るばかり

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る