5.蒸発する地球
女神様を悪しざまにけなし、頭を吹き飛ばされても死なない司教が自分を殺そうと廃工場を吹き飛ばす。そんな現実感の伴わない事態にソフィーは混乱の極みにあった。
しかし、シアンはそんなソフィーに構わず、叫んだ。
「ちょっと身体借りるよ!」
「へ? 借りるって?」
シアンは自分を包んでいたスカーフからピョンと飛び出すと、ソフィーの胸元に潜り込み、自分をソフィーの胸と融合させると手足を勝手に操作し始めた。
「ちょ、ちょっと!」
驚いたソフィーだったが、シアンは背を丸め、手足に力をこめると、全身を光り輝かせ、
ウガァァァ!
と、
すると、立ち昇るキノコ雲の中から、頭の吹き飛んだ司教が青白い光を纏いながら飛び出してくる。
「ひぃ!」
おびえるソフィーをそのままに、シアンは両腕を司教に向けてブンブン! と振り、緑色に輝く光の刃を乱射した。鳥の大群のように司教に迫った刃だったが、司教は金色に輝く魔法陣をシールドとして攻撃に耐え、逆に真紅に輝くエネルギー弾を無数放ってくる。
シアンは「きゃははは!」と楽しそうに笑いながら、ジグザグに高速移動し、それらを避けていく。ただ、少し避けそこない、ソフィーの銀髪がジュッと音をたてて焦げる。
ひぃぃぃぃ!
ソフィーは顔面蒼白になって悲鳴を上げた。
「当たらなければどうということは無いよ!」
うれしそうなシアンだったが、
「髪に当たってるわよ!」
と、ソフィーは抗議する。
外れた弾は次々と地面に落ち、ズズズズン! と麦畑のあちこちで大爆発を起こした。まるで空爆を受けたかのように麦畑は燃え上がり、煙がもうもうと立ち込める。さらに一部は王都にも着弾していく。城壁は吹き飛び、石造りの建物は崩壊し、火の手が上がった。
「なんだお前! 顔だけか!」
司教は叫ぶが、
「顔が無いよりマシだね! きゃははは!」
と、シアンは笑った。そして、ボワッと紫色の光を纏うと、直径一キロはあろうかと言う漆黒の球で司教を覆った。
「ぐわぁ! しまった!」
司教の叫んだ直後、ピュン! という電子音が響き渡って球は数センチの小ささにまで縮退する。
しかし、シアンは何かを察知して数キロほどワープした。
直後、宇宙から謎の青い閃光が降り注ぎ、シアンのいた辺りの麦畑が大爆発を起こした。
きゃぁぁぁ!
激しい閃光に思わず目をギュッとつぶるソフィー。
さらにワープするシアン。
次に来たのは巨大な空間断裂。辺り一帯の空間がずれ、ズン! という重低音と共に麦畑には巨大な地割れが走った。
うひぃぃぃ!
もうソフィーは限界だった。
更に敵の攻撃が続き、辺り一帯は火の海と化し、麦畑は原形をとどめていない。
どうやら複数の敵が参戦してきているようである。
「こりゃダメだ……」
シアンはそう言うと宇宙へとワープして逃げた。
満天の星々の中にぽっかりと浮かぶ青い惑星、地球。
今までの激しい戦闘が嘘のように静まり返り、ただ、美しい雲の模様を浮かび上がらせる青い惑星だけが静かに
しばらく呆然とするソフィー。
攻撃を受けない所に逃げてきたのだろうが、それがどこか分からなかった。
「あ、あれは?」
「あれは地球、ソフィーの住んでる星だよ。空のずーっとずーっと高い所から見るとこう見えるのさ」
シアンは何かを必死に準備しながら説明した。
「あぁ……。美しい……。こんな綺麗な所に住んでいたのね……」
ソフィーはホッとしながら、初めて見る自分の星をウットリしながら見入っていた。
「はい、準備OK!」
シアンはニヤリと笑うと巨大な黒い穴を空間に開いた。
「え? 何するの?」
ポカンとするソフィー。
「それ行け! ガンマ線バースト!」
直後、激烈な閃光が黒い穴からほとばしり、宇宙最大の爆発現象ガンマ線バーストのエネルギーが地球に降り注いだ。そのエネルギーは太陽が放出するエネルギーの百億年分を数十秒に凝縮したけた外れのもので、全てのものが一瞬にして蒸発してしまうレベルだった。
1万キロ以上の大きさを誇る岩石と金属の星、地球も数秒しか持たず、けた外れのガンマ線に焼かれていく。
地球は蒸発した。
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