第8話
私の表情から内心を読み取ったのか、兄さんは苦笑しながら自分の頭に手をやり、小さく「すまん」と言ってから言葉を続ける。
「いや、子供……というのはおかしいか。お前も、もう17歳だからな。いつまでも、昔のままのつもりで接するのはよくないな。よく見ると、身長も随分伸びたな。女の子で、こんなに大きい子はそういないんじゃないか?」
私の身長は160cm台の後半なので、確かにそうかもしれない。兄さんを真似るように苦笑し、私は軽口をたたいた。
「それでも、兄さんの長身には到底かなわないけどね」
「ははは、女の子で、俺と同じくらい身長があったら、それこそ目立って仕方がないよ。男の俺だって、ときどき用事で町の方に行くと、『随分でかいやつが歩いてるな』って感じで奇異な目で見られることもあるんだから」
「この辺りの地方じゃ、確かにそうかもしれないわね。でも、都じゃ兄さんくらいの身長の男の人って、そんなに珍しくないのよ。聖騎士団じゃ、190cm……ううん、2mはある人だっていたんだから」
「へえ、そりゃ凄い。その人たちと比べたら、180cm半ばの俺なんて、全然普通だな。……聖騎士団か、可愛い妹が三年間も世話になったことだし、そのうち、一度くらいは挨拶に行かないとな」
「ちょっ、やめてよ。『聖女』をクビになった後に、身内が挨拶に行くなんて、なんだかカッコ悪いじゃない」
「そうかな? 妹が世話になった礼を言いに行くのに、クビになる前も後もないだろう? 俺はそういうの、全然気にしないぞ?」
「私が気にするの!」
「ふふ、そうか。わかったよ。お前が嫌なら、やめておこう」
そうこうするうちにお風呂のある小屋に私たちは到着し、兄さんは小屋の外にある炉に薪をくべて、あっという間にお湯を沸かしてくれた。
都からここまで来るための旅で、気がつかないうちに、頭にも随分と塵がついている。私は髪を洗い、体を洗い、温かな湯船でゆっくりと体と心の疲れを取った。そして、お風呂から上がると、脱衣所には新しい服が用意されていた。
一瞬、私が実家に住んでいた頃に着ていた服を持ってきてくれたのかと思ったが、袖を通すと、そうではないことがすぐにわかった。もしもこの服が、私が14歳の頃に着ていた服なら、今の私の体に、こうもピッタリ合うはずがないからだ。
私は風呂上がりのしっとりとした髪の毛をまとめ、小屋の外に出ると、外で薪の管理をしている兄さんに尋ねた。
「兄さん、この服、まるでオーダーメードでもしたみたいに、私の体にピッタリだけど、どこかで買ってきたの?」
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