手袋
『バカだね~って、彼には説明していなかったししょうがないかな? 鑑定は発動したときにMPを1消費するんだよね。ツクル君は1しかないんだから、使ったら魔力欠乏症になっちゃうんだよ。本当はあのスキルを使っている時に鑑定して欲しかったんだけど』
『……鑑定結果はログに残るし、まあ大丈夫か。さてさて、まさかツクル君が僕のアレにクレームを付けてくるとは思ってもいなかったよ。せっかくバレないように■■■■を誤魔化したのに……まったくもう、あの娘に怒られちゃったじゃないか』
何もない空間で、その存在──■■■はツクルについて呟いていく。
一種の享楽として手を加えてみたが、思いの外自身を楽しませてくれる……矮小な人間について。
『万物創生ね~。あながち間違ってないね。わざわざ縛りプレイで星を救っていけば、ツクル君は本当の意味で万物創生の力を身に付けられるかな? さすがに材料の方は再定義すると、あそこじゃ何もできなくなるから防いだけどね』
ツクルは本当に:DIY:が自分の考えるDIYと違っていたことにクレームを付けていたのだが、そのことが分からない■■■には、ツクルがそういった風に考えていると思われていた。
『さて、そろそろ魔力欠乏症も治って目が覚めるはず、今度は何をしてくれるのかな?』
■■■は再び真っ黒な世界へと意識を向けていく……部下に頼まれた仕事を放棄して。
◆ □ ◆ □ ◆
「痛ッ! 頭にズキズキ響いてるな……」
目が覚めると、俺は頭痛に苦しんだ。
鑑定って、MPの消費が必要だったみたいだ……ちゃんと説明してほしかったよ。
それに気づかなかったから、俺はMPが0になって気絶してしまったと。
……[ログ]を見なければ、まったく分からなかっただろうな。
ああ、当初の目標だった手袋の鑑定結果もログに記されていたぞ──
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万能手袋 製作者:ツクル
神器:手袋
説明:全能の手袋、使用目的に合わせて最適な姿へと形を変えることができる
例:空気や時間、概念に触れられる・工具を出現させ、どんなに不器用な人でも上手く工作ができる・触れた相手と場所を入れ替える
[詳細を開示するには、条件を満たしていません]
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――俺的には、指先から工具が飛び出す手袋しかイメージできていなかったのだが……他の手袋やグローブの効果も引き継いでいるみたいだ。
「こ、これもこれで使いづらいな。俺の予想が正しいなら、誰にでも勝てるグローブとか猛獣をならす手袋とかそんな効果も付いてそうだなー」
あとは……土竜な手袋とかか?
一部はメガネが無いと見えないから、もし秘密道具を作るなら、最初はそれらだな。
「とりあえずやることはだなぁ……[ログアウト]してみんなに相談することかな?」
ほ、本当にできる……よな?
少し不安になりながらも、メニューを調べると──そのボタンは今なお健在だった。
「良かった、ちゃんとできるみたいだ。──[ログアウト]!」
ログアウトの確認も出たが、そこにも承諾の意を選択する。
白い光が俺を包み、俺はこの黒い世界から抜け出した。
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