テコ



「──DIYって何なんだよ! そもそも異質な物じゃないだろうが! 細やかな休日に自分の趣味を追及するための物だろう! 何故に万物創生の力になってるんだよ! 神様のDIYだって、そんなに神々しいものじゃないだろうが!!」


 自分でも意味が分からなくなってきたが、今俺の前に説明文が出ているDIYが、俺の考えていたDIYと違うということだけは良く分かっている。


「材料を選ぶところからDIYってのは始まる物だろう! 自分でどんな材料が良いか、見て触れて決めていくんだろう! どうして『言ってね♪』とか書いてあるんだよ! 値段とかを妥協したり奮発したりしていくことが作品へのスパイスになるのに、それじゃあ面白くもなんともないよ!?」


「必要な道具だって? 素人が細かい材料まで分かる訳無いだろうが!! あぁ!? そりゃああれか? 昔ネットで見てて欲しかったネプ□スブランドも、言ったら出てくるのかよ!?(ポンッ)……あっ、出た……じゃねぇんだよ!! これ、いったいいくらすると思ってんだよ!?」


 俺の目の前には、かつてネットで欲しいと思っていた黒い工具箱が現れていた。

 DIYの派生から、少し精密機械に手を出して見ようと思った時に知った逸品である。


 お値段的に瑠璃に叱られそうだったので諦めたその代物が……その場に──俺の前に、存在していたのだ。


「……じ、じゃああれか? に、22世紀の猫型ロボットが持っていた、あの便利な手袋も(ポンッ)ってやっぱりかい! もう、何なんだよこの:DIY:って! どうせならそういったものも、一から作るような仕組みにしてくれよ!?」


 俺はツッコみ続け、そう叫んだ!!

 ……すると、神は応えてくれたのだ!


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:DIY:に、■■■■の規定値を超える効果を確認──スキルを再審査します。

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 目の前に表示されたそんな説明文。

 不穏な単語もいくつか見受けられるが、わざわざGMコールをせずともこんな簡単にプレイヤーの要望に対応してくれるとはな。


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 審査が完了しました。

 規定値以下へダウングレードを始めます。


 道具の定義を再設定します──地球歴A.D.21内で使われた道具のみに、出現可能な道具を変更しました。


 加えて、材料の定義を再設定──失敗しました。[原因の情報は秘匿されます]


 リソースに余剰が発生しました。

 要望者『ツクル』の願望を読み込み……最適なスキルを一つ付与します。

 スキル(鑑定)が付与されました。

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 ……あれ、これは?

 どうやら運営は、俺のツッコミによって道具に制限を掛けてくれたらしい。


 ……ふぅ、これでドラ○もんトークで道具の名前が出てきても困ることは無くなるな。


 だけど、俺の掌に置かれた1双の手袋。

 それがこの場から消えることは無かった。


「たしか、(鑑定)のスキルが追加されたんだよな……。“鑑てイッ!?」


 やっとそれっぽい──ゲームらしいスキルが入手できた。

 女神様には:DIY:のためには切り捨てても良いと言ったが、俺もゲーマーだ。


 少しぐらい憧れていたぞ。

 なので手袋の詳細を調べるために、(鑑定)スキルを発動させようとした。


 ──だけど、それはどうやら不可能だったようだな。

 俺は鑑定という四文字を何とか口にした途端、意識を失ってしまった。


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