虚弱な生産士は今日も死ぬ ─小さな望みは世界を救いました─

山田 武

独りぼっちの開拓使

プロローグ

皆さん、初めまして(もしくはお久しぶりです)

なろうで出していますが、こちらでも出します


注:)なんだかプロローグというより、エピローグになりかねない話です

ここに至るまで、かなり紆余曲折が続きます(数千話ほど)

ただ、長続きすること間違いなし!

最弱無双(ある意味)は、二章以降となります

一章以降は基本的に1000文字ほどのサクッと読めるお話なので、ぜひとも読んでいただけますと……それでは、いずれ辿り着く未来をお楽しみください

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 トントントン トントントン


 ある昼下がり、軽快なリズムが何処からか聞こえてくる。

 それは、ある男が起こしているものだ。


「ふぅ、これで完了かな?」


 男が金槌を振るうことを止めると、目の前には小屋が出来上がる。

 その出来に満足げな笑みを浮かべ、男は完成した小屋の調子を確かめていった。




 そうしていると、一人の少女が男の前に現れる。

 優しげな顔立ちで、栗色の髪色を馬の尾のように括っていた。


 それ以上に特徴的なのは、頭部に生えた動物の耳……いわゆる獣人である。

 そんな少女は現在、唖然とした表情で、男に詰め寄っていた。


「──お父さん、もうできたの!?」


「ふっふっふ。可愛い娘のお願いだからな。お父さん、張り切って作ったぞ」


「だけど……これは大きすぎない?」


「マイは【調教師】だからな。これからも増えていくペットのことを考えると……これぐらいの大きさの方が良いと思ってな」


 少女の目の前にある小屋は、白馬山荘程の大きさを誇っていた(それは、小屋なのだろうかという質問は控えてほしい)。


 彼らはれっきとした血の繋がった親子だ。

 巨大な小屋の中に関して語り出す父親と、それを聞いて表情筋をヒクヒクとさせる娘。




 そんな混沌に染まり出した場所に、もう一人──母であり妻である女性が現れる。

 彼女の額にはこの世の物とは思えない、眩い輝きを秘めた宝石が埋まっていた。


「あらあら、まったくアナタは……こんなにデカい物を作って、いったい何処に置いておくつもりなのかしら? もう倉庫は満タンになったって言ってたじゃないの」


「あ。…………ま、まあまあ、ちゃんと仕舞えるようにしてあるよ。見てくれよ──」


 男はそう言って、小屋にある『危険!』と書かれたボタンを押す。

 すると、小屋が振動を始め、だんだんと折り畳まっていくではないか。


「マイがどこにでも従魔を連れて行けるように、こうやって仕舞えるようにしたんだ。お父さん、工夫したぞ」


「またこんな物を……前にもレジャー用だと言って、何でも入る時間が止まったクーラーボックスを作った時、生産ギルドの皆さんに怒られたのを忘れたの?」


「だって、ショウがいっぱい食べたいと言っていたから「何でも子供達のせいにしたらダメでしょ?」……はい、ごめんなさい」


 男の作った(時空停止機能付き)クーラーボックスの試作品は、生産ギルドの長が直々にやって来て購入交渉をしていった。


 ──そのクーラーボックスの存在が世に知られれば、生産界に革命が起こってしまうからだ。


 夫のしょんぼりとした表情に心を温めながらも、妻は注意を続ける。


「良いですか? アナタも少しは自重してくださいね。こっちでのアナタは、ただのDIY好きではないんですよ」


「そうかな? 俺はいつも、作りたいと思った物しか作ってないぞ」


「そう言って作った物が、何でも切れる包丁だったり、盗難を必ず防止するキーホルダーだったりする人は……普通に収まりませんからね」


「あ、あれだって……ルリが切れない食材があるっていったから作った包丁と、子供たちのために作った物が盗まれないように用意した防犯アイテムだぞ」


 そう言って作った包丁は石でも龍でも切れるような包丁に、キーホルダーはPKプレイヤーが敵視するような代物となっている。


「……ハァ。あまり無茶はしちゃダメよ。いくら死んでも死なない体だからと言っても、痛いものは痛いなんだから? アナタにだけは、私の魔法も効かないのも忘れないで」


「了解、気を付けるよ」


「それじゃあ、わたしはこれからマイといっしょに、クエストを見に行ってきますね。途中でショウも捕まえてクエストをこなしてくるけど──だから誰もいなくなるからって、あんまり危ない物は作らないでね」


「お父さん、行ってきます」


「ああ、気を付けていってらっしゃい……って、俺ってそんなに信用無いかな?」


 男は二人を見送ると、再び金槌を握る。


「たしか、ショウが戦闘力測定器が欲しいと言っていたな……ちょうどサンプルはあったし……よし、やってみるとしますか!」


 愛するもう一人の子供である息子のため、男は一つのスキルを行使する。


「――:DIY:、スタート!」



 ここはEvery Holiday Online。

 毎日が休日のように、ゆったりとした時間が楽しめるVRMMOだ。


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