■■■■〚出場!! キラー・トーナメント〛■■■■
「さて、君たちは今回が初めての参加だし、〚キラー・トーナメント〛の簡単な説明をしようか。」
教頭さんが話を進める。
「〚キラー・トーナメント〛はA~Dの四つのグループに分かれてそれぞれトーナメント方式で一位を決める。そしてそれぞれの一位をさらにトーナメント方式で戦わせて優勝を決める。簡単だろう?」
…なるほど。
あれ?…でも…
「勝ち負けってどうやって決めるんですか?あの男の人たちみたいにゴム製のナイフじゃあKO勝ちとかにはならないと思うんですけど」
教頭さんは「いい質問だ」といって続ける。
「それぞれの〚死刑執行人〛が得意な武器の模造品…まあゴム製のナイフやゴム銃の弾丸とかに特殊な蛍光インクをつけていて相手のどこに攻撃を当てたかで競うんだよ。…そして基本は頭や胴体に着ければ高ポイント、足や腕は低めのポイントといった具合で点数をつけて得点の高い方が勝ち。ちなみに制限時間は三分。」
説明を聞き終わった私たちにオーナーが声をかける。
「説明も終わったしもう参加してもらおうかしら、昨日申し込んだスケジュールだと…あら、三十分後からDグループでココアの第一戦目よ。」
…三十分後!?
そんなすぐに!?
私とココアは全く鏡合わせの動きで目を合わせた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
三十分後私とオーナーは一つのリングの周りに座っていた。
さっきはボクシングのリングみたいって言ったけど前言撤回。
テニスコートぐらいの広さがあって四隅には小さなライトがついてる。
「大丈夫かなぁ…ココア。」
今回の〚キラー・トーナメント〛でココアの武器は銃弾の代わりゴム弾を発射するゴム銃。
普段使ってる銃にかなりのこだわりがあるココアが使いこなせるのか…?
「そんなに心配する必要はないわよ。私は銃が変わったぐらいで弱体化するような教育はココアに施してないわ。」
…にしたって弾がただのゴムですよゴム
「それでは選手の方が入場します〚死刑執行人〛の皆さん。盛大な拍手で迎えてください!!」
薄暗く、そして〚死刑執行人〛同士の戦いをするにしては場違いな、明るい声でアナウンスが流れる。
最初に登場したのは身長が高くてかなりゴツイ体格をした30歳ぐらいの男。
…私が見る限り、一つ一つの歩く動作はナイフ使いに近いような感じがする。
「国内でトップクラスの量の〚仕事〛をし決して証拠を残さないことで有名なコンバットナイフ使い〚ジョー〛です!!」
男の名前が呼ばれた瞬間会場が歓声で湧き上がる。
「〚ジョー〛は七年前の〚キラー・トーナメント〛で優勝した実力者よ。…そして今回が七年ぶりの参加…もちろんのこと、今回の優勝候補の一人よ。」
オーナーの説明を聞いて私は軽く目まいを起こす。
なんでココアの一戦目の対戦相手がそんなにつよいヤツなの!?運なさすぎ!!
私がブツブツ独り言を言っているとココアが歩いてきた。
「かの〚死刑執行人〛、〚死神〛によって育てられた二人組の〚死刑執行人〛〚キラー・ラヴィッツ〛の一人。銃使いの〚ココア〛です!!」
ココアの名前が挙がってもあまり大きな声援は聞こえない。
…でもなんとなく理由はわかる。
入場してリングに上った二人、一人は大会優勝経験を持つ屈強な男でもう一人は普段は二人で活動しているうちの少年だけ…って組み合わせなんだから。
「…我ながら、私の名前と〚キラー・ラヴィッツ〛の名前は知れてるでしょうけど、やっぱり一人だけとなると期待度もなかなか上がらないみたいね。」
リングの上に立つ少年と成人男性、普通に考えたら勝敗は明白だ。
「…でも、ココアならきっと大丈夫…ですよね?」
私の問いかけにオーナーは縦に首を振った。
「それでは試合を始めます。二人とも武器を構えてください!!」
アナウンスに従ってココアはグミ弾が入っているっていう空気銃を、ジョーは大きなゴム製のコンバットナイフを構えた。
ひと時の間をおいて「試合……開始!!」というアナウンスと共に鐘の音が鳴ってタイマーが180秒を示す。
最初に攻撃を仕掛けたのはジョーだった。
ジョーはゴムナイフを逆手に持つと一気にココアとの間合いを詰めてゴムナイフを横に振り払う。
ココアが後ろに飛んでその攻撃をかわすとそのスキを狙ってさらにジョーがナイフを振り回す。
「ココア!!何で攻撃しないの!?」
さっきから何回もチャンスはあるのにココアは一向に引き金を引こうとしない
「もちろんココアにも考えがあるのよ。…これが本当の勝負だったらココアが銃を撃った時点で決着はついてる…でも〚キラー・トーナメント〛は違うわ。例え頭に命中させたって相手の攻撃は続くんだもの。」
「それでもさすがに避けに徹しすぎじゃないですか?」
「ジョーは並みの相手じゃない。ゴム銃だってしっかり反動はあるわけだから、ココアが反動を抑え込む一瞬を狙ってくる可能性がある。」
…なるほど…いやいや、納得はできるけどそれじゃ決着がつかないような……
「クソッ、俺のナイフが全然当たらねぇ!?」
私が一人で悩んでる間にもココアは一つ一つの動きを見切って的確にジョーのナイフを避けていく。
「あら、練習のせいかが出てきたじゃない!」
ココアの細かい動きを見てめずらしくオーナーが嬉しそうな顔をする。
確か、昨日私たちがやらされたのは敵の全体を見るんじゃなくてポイント一か所を注意深く観察して行動する練習。
今回の場合ココアはこれを生かしてジョーのナイフだけに集中して、よけに徹しているんだ。
最初のココアの攻撃が入ってからもう三分が経った。
しだいにリングの周りから「おい、ジョー!!そんなもんか?」とか「優勝経験者の意地を見せろ!!」とか「子供一人に負けるのか!!」とヤジが飛んで、その言葉を聞くたびにジョーの動きが雑になっていく。
時計が終了五秒前を示した時!!
ジョーが耐えきれなくなってギャラリーを睨んだその瞬間、ココアはゴム銃を構えてジョーに発砲する。
…ゴム銃が当たった場所はジョーの眉間のど真ん中、そこに蛍光グリーンのインクが付いてた。
でもゴム銃の反動を抑えながら立っているココアにジョーはすぐに最後の攻撃を仕掛ける。
「はい!!そこまで~!!両者動きを止めてください!!」
試合終了のアナウンスが鳴った時ココアは首から胸にかけてインクをべったりとつけられてた。
「…そんな…!?」
いくら相手の眉間にインクをつけててもあんなに広い範囲を塗られてたら…
「それでは得点の発表をします!!ココア選手50ポイント…」
私は肩をがっくりとおとしてココアにどんな慰めの言葉を駆けようか考える…でもそこへジョーの得点を告げるアナウンスが鳴った。
「ジョー選手0ポイント!!…よってこの戦いココア選手の勝利となります!!」
…へ?
会場の他の人たちもジョーが負けた事実がすぐに受け入れられないのかしんと静まり返る。
「おめでとう!!ココア!!」
私が彼に拍手をすると一瞬のうちに会場に広がって彼は大きな拍手に包まれた。
「…本当にギリギリの戦いだったわね…時間が。」
オーナーのつぶやきに私は激しく同意する。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「おつかれ」
私は珍しく息を切らしながら帰ってきたココアに声をかける。
「…ありがと。…訓練はしてても実際に激しい動きをすることはほぼないから、かな~り疲れたよ。」
確かに日ごろの彼の仕事は遠距離からの狙撃や援護射撃。
拳銃片手にナイフを持った相手とやりあう事なんてないからね。
「おい、お前。」
話をする私たちに近づいてきたのはちょうど話題に出しかけていたココアの対戦相手、ジョー。
「いい動きだった。俺の連続優勝の夢をぶち壊してくれやがったんだ。もちろん優勝を狙えよ。…そっちの女、動きでわかる。お前もナイフ使いだろ。…頑張れ。」
ジョーはそう言い残すと去って行った。
「…そうだ!!オーナー、私の試合っていつあるんですか!!」
「う~んと…あら、十分後ね。」
オーナーは日が笑いしながら答える。
…なんでギリギリに言うんですか…?
私は緊張と呆れでツッコミができなかった。
組曲コードネーム:キラー・ラヴィッツ〚〛 ゼロ・チッカ・ニア @zerotikkania
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