凱の阿修羅琴よ、なびけ
いすみ 静江
第1話 修学旅行で再会
「おい、
俺は、懐かしい声に呼ばれた。
スラリとした身長を活かして後列に並び、誰かの影に入ろうかと顔を動かしていたとき、小山が動く。
カメラマンの後ろから、大きく手を振る野郎の姿が見えた。
「おー。悪友、
「久し振りっちょ。凱こそ、右の瞳が金で左が銀の件で弄られたりしてないやんな? 元気やんね?」
雛飾りのような写真から解散すると、俺は、一目散に、
「んだよ。俺も平和な
秋色の風が頬を撫でると、俺の
前髪と襟足が少し伸びてしまったが、高校からはお
俺が読者モデルをするのも母の
細い顎すじに手を当て、久し振りに忌憚のない俺の瞳コンプレックスをぐっさぐさにする
「悪くしか言われへんのは、知り合い未満やん」
「でさ。どうして、
大勢の中から一際目立つ、彼の容貌が俺は好きだ。
彼の眉は美しい山を描いており、目が鳶色で、睫毛がなんと十五ミリのバサバサ愛らしさ。
髪は深緑で肩のあたりでばさっと切られており、頬がキュートな餅ぷになのを隠している。
「おーい、
班長の
「俺ってひょっとこじゃんね?」
「ぶひょ! お前、口尖らせて写真に写ってたやん」
ドンパッチョな君の仕草で、結果が読者モデルの営業妨害だとしても内緒にしておこう。
知らぬ顔をして、口笛を吹く瞬間のダサ顔記録だ。
こんな黒歴史、助けて黒騎士と叫びたい。
「いやあ、久々じゃん。
親しい野郎に出会えると嬉しいものだ。
特に餅がむしろもっちりして来たと伝えたかったけれども、それも内緒だ。
俺達ブレザーの中に、学ランの
寂しいだろうと、わちゃわちゃしている中から逃れた。
「あんな。オレやね。クラスの皆、
「
そのとき、風が強かった訳でもないのに、目を細めた。
「修学旅行は、
「そうか。
俺、とろいかも。
「
や、いないな。
いつの間にか
「おい、恥ずかしいじゃん。大きい声出すなって。子どもと同じじゃんよ」
もしかしたら、俺達の体重で軋んでしまうかも知れないとも思った。
「そのBL展開やめや。
「俺、お尻なんて触ってないじゃん! 不可抗力じゃんね!」
「もっと、抱いてもええやんよ。
「どこがじゃん! 品を作るのも駄目じゃんね。オージーザス!」
「そだ、こっち来いやあ。
「勘弁、勘弁じゃんよ」
それから、暫くお互いの近況を報告し合って、ゲラゲラ笑っていた。
会えて嬉しい。
「
ポンと肩を叩かれた。
てっきり、突き落とすのかと思った。
ヒイイイイイ。
「なら、いい店あったや」
「マジ? 俺、今日は
「かもかいな。
話をしながら、
「お湯吞み茶碗やんね。先にゲットしたんはオレや」
「だから、三度目になるけどさ。どんなのか、絵に描いて――」
そうだった。
「俺が、
参道の土産物を見て行くとこちらでも目が肥えそうだ。
「俺は、
一つ、店の奥で、深緑の地に椿の凛とした姿のお湯吞み茶碗と出会った。
「お客様、お買い上げありがとうございました」
さて、用事が済むと、バスの待つ駐車場へ戻らなければならない。
「そうだ、俺もスマートフォン買って貰えたんじゃん。連絡できるようにしとこうじゃんね。
「ああ、入学祝いってヤツやな。おめおめ。なら、
俺達は、ピピッと交換する。
実は、LISUへの登録は、初めてだ。
相手が
「この後、どこへ行くんじゃんね?」
「オレらは、
「ああ、
よっしゃーと、拳を突き合わせた。
「会えるのが楽しみじゃん」
「オレやってそうやん」
◇◇◇
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