ニンギョウアソビ

埴輪モナカ

マ・リ・・ッタ


 目を覚ますと、見慣れたはずの知らない人形が、寝ているベッドに一つ転がっていた。

 どこかに置こうと人形を持ち、周りを見渡すと、たくさんの人形や縫いぐるみの置いてある場所があった。どれも知っている気がするのだけれど、一つとして買った覚えももらった覚えもない。

 しかし何だろうか、どれにも親近感のようなものを感じる。

 ・・・いいや、人形とはそういうものなのだろう。


 居間に降りると、親はいない。なんとなく違和感が無いので、そのままパンを食べて、当たり前のように登校した。

 1限の時間が近づいてもクラスの席は埋まらず、とうとう授業が始まっても、来ている人間は少なかった。

 教師はそれをもう当たり前のように、あきらめたように気に留めず授業を始めた。


 学校が終わって放課後になった。

 たった一人の友人と一緒に寄り道しながら下校することになったのだが、不意に、不思議なものが見えた。友人が車にはねられる場面が見えた・・・気がした。

 本当なら、安全を取るために寄り道を中断するべきだったのだろうけれど・・・。そうしても、変わらないような気がした。

 無力感にさいなまれつつ、それを隠して友人と遊び、帰るとき。友人は目の前ではねられた。見えた気がした光景そのものだった。

 あれが未来視だったのかなんて考える暇はなかった。ただ救急車を呼び、友人の名を呼び、目を覚ますことをそばで祈り続けた。

 病院内のベンチで医師を待っていたら。長い時間が過ぎてから来た。

 曰く、『即死』だそうだ。友人が死んだ。帰っていたら変わったんじゃないか。むしろ家で遊べば違ったのだろうか。学校で勉強会をすれば生きていたんじゃないか。

 計り知れない後悔が脳裏を照らしていく。暗い暗い、いくつもの「もしかしたら」が、闇が光のように支配していく。

 頭の中がまとまらないまま帰宅し、なにもやる気が起きなかったので、そのまま寝てしまった。



 朝、優しくない肌触りに違和感を覚えて起きる。

 あぁ、昨日は制服のまま寝たのか。

 それとは別に、隣にぬいぐるみが落ちている。ぬいぐるみを見ていると、どうしてかあの「友人」の雰囲気を感じる。

 死んだはずの友人の雰囲気を人形に感じるなんて、昨日はこれを友人だと思いながら謝罪して寝ていたのだろうか?

しかし、そのぬいぐるみの雰囲気は作り物でないと直感した。それは友人そのものであるように感じるのだ。気味が悪い。

昨晩よく眠れなかったせいか、体調も芳しくなく、寝起きで吐いてしまった。

吐き終えてから、もしやと思い、たくさんの人形を見たり触れたりして見ると、やはり知っている気がする雰囲気を感じる。それこそ、どれも友人だったりするかのような・・・。

 もしかしたら、これは人の死体なんじゃないだろうか。死んだ人のなれの果て・・・。だとしたら、いいや、そうなってほしくない。


私が決めた行動は一つ。人を殺すことだ。誰かを殺して、一つでもぬいぐるみか人形が翌朝にあれば、彼らが・・・。いいや。人形や縫いぐるみが無ければ、彼らは人ではないと断言できる。

まず、古びた商店街に出向いて、裏道を歩いていたお年寄りを殺してみた。運よく、というべきか、誰かに気付かれることなく帰宅で来たし、お年寄りは確実に殺した。

しかし、翌朝ベッドに人形もぬいぐるみも発生しなかった。

どうして・・・、これじゃぁ私は・・・友人に謝れない・・・。もしかしたら、ほかの人なら・・・。自分の知り合いなら・・・。


一日一人。人間が殺されていった。犯人が捕まることが無く、足取りをつかんでも、大勢で囲っても、それは全てを殺しつくした。

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ニンギョウアソビ 埴輪モナカ @macaron0925

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