帰宅部員の所属論

シヨゥ

第1話

「学校にしか所属していないというのが一番まずいと思っている」

 帰宅部の友達はそう話す。

「なんで?」

「気持ちが沈んだ時、その原因がある場所で自分を奮い立たせないといけないからだ」

「あーなるほど。それは辛い」

「だろ?」

「同じ場所にいたらまた同じことが起こるんだろうなって思うもん」

「そういうこと。そんな気持ちじゃ奮い立つものも奮い立たないだろ?」

「そうだな」

「だから学校以外に居場所を作らないといけない」

「学校以外? 例えば?」

「バイト先とか、ネットの集まりとか。とりにかく学校から遠い場所がいいな」

「遠くって言っても金がないしな」

「違う違う。環境が学校と違う場所って言ったほうがいいか」

「違う環境か。うん。なんとなく言いたいことはわかった。似たりよったりな場所じゃ連想してしまうってことだろ?」

「そういうこと」

「なるほどな。それにしてもお前、いろいろ考えて帰宅部になったんだな」

「いやいや違う違う」

 そう言って首を振る。

「違う? 校外でどこかに所属しているんじゃないのか?」

「そんな面倒なことするわけないだろ」

 そう言う友達は表情ひとつ変えることなく、

「だって、ただ群れたくなかっただけだからな」

 と言い放つ。ここまでの話が台無しである。

「自由を愛してるんだ。それじゃあな」

 颯爽と帰っていく友達を背を見送りながらちょっとした感動を返してくれと思わずにはいられなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

帰宅部員の所属論 シヨゥ @Shiyoxu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る