第23話 霰魔法3

 今私は、魔法を発動させている。

 私が纏っている小さな氷……、あられ魔法の発動だ。


「うん、いいね。無意識にだけど、魔法吸収ドレインが付与されている。

 ちなみにだけど、その状態で飛べる?」


「……」


 無言で浮き上がる。

 私のあられ魔法は……、消えない。飛翔時でもあられ魔法を維持し続けていられる。


「おお! 現時点で結構、強くなったかもしれないね。

 風魔法による『飛翔』。近接戦闘時の『切断』。遠隔用の『炸裂』。

 それに加えて、氷魔法の『凍結』や『圧縮』。

 これにあられ魔法による『防御』が加われば、もう欠点なんてないよ」


 こいつは、褒めるのだけは上手い……。


「飛翔可能な高機動型……、定点襲撃部隊になれそうだね。

 戦争であれば、指揮官を襲いまくって、負け知らずの一人隊長になれるよ」


「……私は、戦争には行かない」


 前言撤回。私の嫌な思い出を蘇らせた。戦場は見たことあるけど、あの空間で生きていけるとは、とても思えなかった。


「う~ん。じゃあ、大物専門の狩人ハンターかな? 僕の趣味を取られちゃいそうだね」


「ノアは……、なんで竜に挑んだの? 腕試し?」


「……素材が欲しかったのが、一番の理由かな。ちょっと、困っている錬金術師がいてね。

 一部だけど、置いて来た。後は、彼女次第だけど……、昨日確認したら薬が作れていたよ。もう大丈夫だと思う」


 ……彼女ね。


「そうやって、手伝いし続けているの?」


「手伝い? ちょっと違うかな。世界全体を見て、必要な人に協力してるだけだよ。その錬金術師が薬を作れないと、大勢の死者が出ていたかもしれない。そう思ったので、素材だけ置いて来たんだ」


「私もその一人ということ?」


「そういうこと。リディアが、怪我で燻っていると、困る人が出て来る事を知ったから、こうして、教育しているんだよ。いや、『教導』って前言われかな」


 良く分らないな。

 私が燻っていると、困る人が出て来るって、未来の情報じゃないの?


「僕の話は、置いておこう。

 それよりも、バリエーションを増やそうよ。あられを広げられる? とりあえず、半径5メートルくらいがいいかな」


 はぐらかされた。多分、追及しても教えてくれない。

 それよりも、今は魔法が楽しい。

 私は、あられを広げた。


「うん、いいね。それじゃあ、密度を上げてみて。目視できないほどの氷のカーテンとか。きりかすみをイメージしてね」


 言われるがまま、あられを作り出して行く……。

 魔力の消費が激しいけど、今の私であれば、それほど問題にはならなかった。


「!?」


 ここでノアが、私のあられ魔法に触れたことが分かった。

 そのまま、進んで来る……。

 手には石を持っているな。それと、全身の装備は、全て魔力が宿っている。効果は分からないけど、私の魔力を弾いている。

 ここで、ノアが石を投げて来た。

 首を傾けて躱す。


『解る。手に取るように解る。この空間は、私の領域テリトリーだ』


 ノアが、私の手を取った。

 私はあられ魔法を解除する。


「ふぅ~。魔法を解除すると魔力が戻って来るのね。使い勝手はいいかも」


「それは、自分が解除した時のみだからね? 僕が石を投げて砕いたあられは、霧散した事は分ったでしょう?」


 なるほど……。

 あの石は、そういう意味があったんだ。


あられ魔法の基本は、この二つ。『纏う』か『陣を敷く』かのどちらか。もし、他に思いついたら、リディアのオリジナルになるね」


 震えるほど、嬉しい。

 これは、応用の幅が広い。私の発想次第で、色々と応用が利く。


「……ノアは、なんでも知っているのね?」


「まあ、長く生きているからね。あられ魔法の使い手は、昔仲間だったんだ。

 その時代では、最強の一人にも数えられてたよ」


「え? 最強?」


「そうだよ? リディアの魔法は、極めれば、誰よりも強くなれるよ」


 驚いてしまう。目を丸くして、ノアを見る。

 私の魔法が……、最強と呼ばれるレベルまで到達できる?


「さて、そのためにも闇魔法を覚えようか」


「……うん」


 その日は、日暮れまで闇魔法の講義と練習に当てた。

 私が覚えられたのは、暗闇ブライン妖霧ダークネスの二種類だった。昨日の、吸収ドレインは無意識に発動できていた。

 初歩中の初歩だ。

 でも、初日に3種類って凄くない?

 まあ、ノアが教えてくれたからなんだけど……。


 日が暮れたので、メグのお店へ。

 今日は、嬉しかったので、甘い物を頼んだ。ノアは、なにを食べていいのか分からないみたいだから、私が選んであげると喜んでくれた。

 感想は……。何時も『美味しいね』のみなのが、不満かな。


「それじゃ、明日もお願いね」


「うん、また明日ね……」


 それだけ言って別れた。

 そして、次の日。


 街からノアの姿が消えていた……。

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