おしまいの人間

 首を吊った日、そこで僕はおしまいになった。


 おしまいになった人間はツケを払わなくてはいけないらしい。


 ニキビみたいな人のストレスを潰し続ける傀儡になるらしい。


 いつのまにか僕の手にはしめ縄が握られていて、彼は意志を持って僕に話しかける。


「死ぬなら、ちゃんとツケを払ってちょうだぅ!」


 それから、気持ちの悪い生活が始まった。


 いろんな形をした肉塊が見える様になった。


 「あれを潰してちょ!」


 「どうやってだよ」


 「すっごく簡単、僕でアレを締め殺すだけぇ」


 無理無理。

 中には心まで貧そうな痩せこけた肉はあるのはあるが、大体はジャングルにいるような動物の異形バージョンみたいなのが有象無象している。


 「とにかく、試しにガリガリをやってみなよぅ!」


 「へいへい、」


 ぱーぶめんと に わんだりんぐ したガリガリを始末した。

 

 すると縄が長くなってもう少し縛りやすくなった。


 「ね?かんたんだしょ?」


 「………」


 虫を潰した時と同じ感覚がした。


 「それがお前が自分にしたことだよゴミ野郎ぅ」


 流暢に喋るしめ縄は気持ち悪かった。

 僕はすぐさま捨てた。

 でも、手元に戻ってくる。

 そして捨てるたびに首の痣が鮮やかになる。


 「もうあれを狩るしか道はないめぅ!」


 「五月縄い」

 

 ひどく興醒めだ。

 ツケってなんだよ…


 「ん?アレのことぉ?」


 そうだねぇ、アレはこうやって形容するんだよぉ


 『ルサンチマン』


 ———そう、クソ生意気なしめ縄は言い垂れた。

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