葬儀

今日は学校は休んで蜜柑の葬儀に出た。


蜜柑の両親は僕の顔を見るや涙を流して『ごめんなさい』と言ってきた。


蜜柑の家にはよく勉強を教えると言って遊びに行っていたので、蜜柑の両親とも顔馴染みになっている。


蜜柑の明るい性格はきっとこの両親譲りだと思うほど明るい人たちで、蜜柑と部屋で遊んでいるとよく乱入してきて冷やかされたものだ。

その度に僕と蜜柑は付き合ってないと否定していたが、あの顔は絶対付き合ってると思っていたに違いない。


そんな人たちに告白のことを説明するのがいたたまれなくて、昨日はただ普通に学校で別れたと説明した。


きっと蜜柑の両親のことだから、訳を話せば僕に責任はないと言ってくれるだろうが、それでは僕の気が済まない。


蜜柑は僕が振ったから、そのショックで自殺した。


これは間違いない。

だからこの気持ちを誰かに許されることで楽にしたいとか、そんな風に逃げに走りたく無いと思ったから、



この先の人生、蜜柑のことは僕が一人で背負って生きていくんだ。


安らかに眠る蜜柑の顔を見て、僕は心に固く誓った。


「全く、呑気な寝顔しやがって……」



自然と頬が上がり、そんな言葉が口から出た。


「ホント、今にも起きてきそうよね」


振り返ると、蜜柑の母親が一緒に蜜柑の寝顔を眺めていた。



「ホント何やってるのかしら、この子ったら、毎日アキくんのことばかり話すくらい好きだったのに、こんな……」


本当に何か知らないの?蜜柑がここまで追い詰められる原因に心当たりはないの?何か言ってなかったの?


内心ではそう思っているに違いない。

声には出さないが、思いはひしひしと伝わってくる。


だが、それを僕に言ってこないのは、僕に責任を感じさせないためだろう。

「……あまり自分を責めないでね。毎日顔を合わせてた私達ですら、蜜柑の異変に全く気づかなかったんだから。きっとアキくんにも相談できないようなことだったんでしょう」


そう言ってくれる蜜柑の母親の言葉が胸に刺さった。


「ありがとうございます。でも、蜜柑のためにできることはなんでもするつもりです。これからの人生、どれだけ使っても、僕の知らない蜜柑、僕に相談出来なかったこととは何かを調べるつもりです」


それが何かの償いになるとは思えない。



でも、蜜柑がそこまで追い詰められた原因、


自殺の経緯くらいは知りたい。


そして、最終的な償い方を決める。


「ありがとう、気持ちだけでも嬉しいわ」


そう言って微笑む蜜柑の母。


「では……」


蜜柑の胸の辺りに花を置いて立ち去る僕。


「線香、いつでもあげにきてね」


「はい」


寂しそうな蜜柑の母の誘いに一言答え、その場を後にした。

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