四話 友達との再会とハローワーク

 父には、

「スーパーマーケットで働こうと思う」

 と伝えた。すると、

「お前、本当にできるのか?」

 と訊かれた。

「友達がコンビニで働いているんだけど、結構大変みたいだからそっちはやめた」

 父は、

「だから、スーパーにしたということか。お前、世の中なめてんのか」

 優しい父にそんなことを言われるとは思っていなかったので驚いた。

「いや、そういうわけじゃないけど、何でそんなこと言うの?」

 父の顏をチラリと見ると険しい表情だ。怖い。

「世の中お前が思っているほど甘くないぞ。まあ、経験していくとわかることだからいいけどな」

 経験か、父が言うのだからきっと大切なのだろう、と思った。16歳の僕には父の言っていることがイマイチ、ピンとこない。まだまだ未熟ということかな。父は、

「挑戦してみるといいさ。お前はまだまだ若い。人生これからだ」

 と、言った。確かにそうかもしれない。僕はまだまだ若い。今の父に追い付くにはあと24年後だ。それまでにできることはやろうと思う。それ以降も人生は続くはずだから頑張ろうと思う。


 自転車でハローワークに行って来よう。スーパーマーケットの求人があるかどうか見てくる。

 今日は月曜日。午後二時時頃。晴れ渡る空。まるで、空が自転車で道中を走る僕を歓迎しているかのようだ。


 15分くらい自転車で走り、途中で中学の頃の同級生と出くわした。神崎志穂、16歳。女子高に通い、現在、1年生。外見は、肩まで伸びた黒髪で、身長は低くはない。赤い縁のフレームの眼鏡をかけている。学校の帰りなのか、制服を着ている。紺色のブレザーの中に白いニットを着て、リボンがついている。黒いスカートの丈は膝上で、白いラインが横に2本入っている。可愛い。

「おっ! 志穂じゃん。久しぶり」

「あっ、昭雄!」

 久しぶりの再会に僕は嬉しくなった。

「元気にしてたか?」

「もちろん! 昭雄は?」

「僕も元気だよ! 今からハローワークにいくところなんだ」

「そうなんだ。いい仕事が見付かるといいね」

「そうだね、ありがとう。今度、遊ぼうぜ! 連絡先交換しない?」

 志穂は少し躊躇った様子だったが、

「LINEでいい?」

 と、訊いてきた。

「いいよ」

 やった! これで、遊べる! 早速、僕はQRコードを彼女に差し出した。それを読み取り、交換した。

「今度、LINEするわ、じゃあね」

 僕は笑顔で手を振った。相手も同じようにした。


 志穂と少し話してから、僕はハローワークに向かった。

 ゆっくり走ったので十五分くらいかかって着いた。

 今は十五時三十分くらいで、相変わらず天気はいい。雨は降りそうにない。傘を持ってきてないから、降られても困る。


 建物内に入ると、若い男性が二名と、年輩の女性が一名、真剣な眼差しでファイルを見ていた。


 僕はスーパーマーケットを希望しているので、接客業のファイルを開いて見てみた。三件、掲載されていた。どれも、大手スーパーのものだ。部門は鮮魚、青果、デイリーと書いてある。意味が分からないので詳細を見てみた。鮮魚は、魚をさばく、パック詰め等。青果は、野菜や果物が傷んでないかチェック、パック詰め。デイリーは、品出し、発注、廃棄処分、値下げ処理など。と書かれている。自分では、もしかしたらデイリーの品出しならできるかな、と思ったのでファイルを持って窓口へ持って行った。


 職員と話した結果、高校卒ではないこと、車の免許がないこと、等が引っかかると言われた。でも、16歳なのは嘘じゃないし、この年で車の免許を取れないのも事実だ。ハローワークの職員が原付バイクなら、16歳から取れると言っていた。でも、果たして原付バイクで採用されるか、ということも気になるところだ、と言っていた。僕はダメ元で、

「スーパーマーケットの面接を受けたいです」

 と、言った。すると職員は、

「いいですよ、まず、電話してみるね」

 僕は頷いた。


 スーパーマーケットの人事部の人との電話が終わった後、職員は、

「履歴書と今から渡す紹介状を持って、明後日、午後二時までに行ってね。くれぐれも遅刻しないようにね!」

「わかりました」

 こうして僕は、面接を受けることになった。

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