第8話  初めての肉体労働

「王子様……朝です」


「もうすこし……ねいぞ~」


「早くお金を稼がないと、今日の夜は豪華な宿に泊まれませんよ!!」


「おう!! 目が覚めたぞ!!」


 キースは飛び起きた。朝ごはんを食べて街に出た。

 オーリが神殿の方に行った。


「なんで、神殿!?」


「日雇いの仕事は、神殿を通して募集されるんですよ」


「この、世界は神殿の力が強いな~」


「そうですね」


 オーリは大きな溜息をつく。


 パン屋の新築の手伝いという仕事の募集があった。

 三割は神殿に持っていかれるのだが、パン屋の引っ越し手伝いの方が銀貨一枚と銅貨3枚で、キースは迷わず、単価の高い仕事を選んだが、オーリは王子に出来るはずはないと思っていた。


「王子様、力仕事ですよ……出来ると思ってるのですか!?」


「愛があれば、なんだって出来るさ」


 オーリは、更に大きな溜息をついた。


 王都、ブリスジンの西の外れのパン屋で、改築した所に荷物を運ぶ仕事だった。大きなパン屋だったから、手当も良かったのだろう。


「ここの家具を、みんな、運び込んでくれ。今日中に終わらせたいんだ」


 雇い主のパン屋の主は言った。


 早速、キースとオーリの仕事が始まった。

 重い家具まである。

 オーリはこれは出来まいと思ったが、キースは意外にも軽々と運んでいる。

 中には、年代物の調度品もあったが、キースと運ぶとそんなに重いと感じられなかった。


「!?」


 良く王子を見ると、王子の手が銀色に輝いており、運んでいる物との間に少し隙間があったのを見つけた。


「王子様~ 何か魔法の力を使ってますね~」


「バレたか~?」


「その銀色に光ってる両手は!」


「お前、見えてるの? 凄いな!! これは見える奴が少ないんだぞ。俺を怪力にしてくれるんだ。手に風の精霊を纏わせてるんだ」


 キースは大笑いした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る