こんな田舎に白薔薇が咲くなんて

オルオフ

休日の朝

ある日村に家族が引っ越してきた。王国から随分離れたこの村には似合わない華やかな格好をした家族を見て、なんでこんな所に越してきたんだろうと思ったことを今でも覚えている。


何年もたった今でも当時の感情を思い起こせるのは、ひとえに貴女を初めて見た時の衝撃のおかげなのだろう。


あの白薔薇のような貴女を──────────



「⋯⋯リナ!カリナ!起きなさい!何時だと思ってるの!!」


「んん〜⋯⋯まだ寝る⋯⋯だってケーキは美味しいんだもん⋯⋯」


「なぁーにを寝ぼけてるのさ!休日だからって怠けちゃダメよ!」


休日って怠けていい日じゃないの⋯⋯?せっかく今日はvillage schoolも休みなのに⋯⋯


「それに今日はこの村に衛兵さんが来る日でしょう?きちんと支度しなきゃ、ボサボサのまんまでお出迎えすることになるわよ!」


そういえば⋯⋯今日は王国から衛兵?の人が村にやって来るってお母さんが言ってたな⋯⋯。最近戦争が多いから、何か起こった時にどうたら〜みたいな⋯⋯。


お城からこんなに離れた田舎で何かが起こるなんて思えないけど。


「はぁ〜い⋯⋯ファア」


夢の余韻を残した欠伸をひとつ披露して、カリナはダークブラウン色の階段をおりていくのだった。


眠気を吹き飛ばす程の出会いがあるとも知らずに。



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