第12話 鉄道マニアが鉄道を知らない王族に鉄道を説明する
「4~50台ですか。多いですね。なにか目的がお有りでしょうか?」
「ええ、食堂車に設置するためですね。」
鉄道に必須だからねぇ。
「え?食堂……しゃですか?」
「ええ、食堂車です。ああ、俺は今ドリュフェス王国で鉄道を建設してまして、長距離列車には食堂車が必要でして、その食堂車に設置するための携帯用コンロが必要でこの国まで来たんです。」
俺は身を乗りだし食堂車について説明する。
「ええと……。」
おっと、そういえばこの世界に鉄道は今までなかったよな。
「あ、鉄道からわかりませんよね。鉄道とは鉄でできた線路の上を高速かつ大量に人や物を運ぶ公共交通機関です!決められたルートしか運行できませんが、その速さと量は圧倒的です!!1時間に7~80㎞進み、一度に馬車70~80台分の荷物か800人以上の人を乗せて移動ができます。弱点は特定のルートしか走ることができず小回りが利か無いことと、勾配に極端に弱いことですね。あとは、ある金属を大量に使うのでその金属の高騰が予想されることでしょうか。現在ドリュフェス王国内での延伸工事中ですね。それが済み次第各国に鉄道建設の契約を持ちかける予定です。といってもまだ開業半月で、第2期線の建設が始まったばかりなので、まだまだ先ですね。」
俺は鉄道事業について簡単な説明をする。
「ええと、いくつか確認していい?」
「……あ、はい。どうぞ。」
王女殿下がスッと真面目な顔をして聞いてくる。
「じゃあ、まず一つ。携帯用コンロは全てドリュフェス王国へ持っていって使うのよね?」
「そうですね。車両工場がドリュフェス王国にありますし、それ以前に鉄道路線があるのはまだドリュフェス王国だけですからねぇ。」
まあ、普通の冒険者や商人だったら転売しか考えられないから、この質問は当然だ。
「じゃあ次に、もしテツドウ?を作る目的は?」
「乗りたいけど無かったからです。ああ、俺は鉄道のある異世界から来た鉄道マニアなので、鉄分が足りなくなりそうなんで、作っちまえって作りました。」
「では次に、そのテツドウとやらを我が国で作ることはできるか?」
おっと、この核心を突く話……、この国に鉄道を作って軍事物資や部隊の輸送に使う気だな。そうなると……。
「建設できるかどうかなら作れますが、建設するかどうかだと作らないです。」
「ヤマト様!?」
メフィが驚くのも無理ないよなぁ。明確に拒否したんだから。
「まあ、そうだろうな。だが、話をするのはヤマト殿、貴方にではない。メフィリア王女殿下、貴女の国と交渉するわけだが。」
「……あの、すみません。鉄道事業に関してはこちらに交渉する権利がないんです。」
「えっ?」
メフィと交渉をしようとして断られる。そりゃあなぁ。それでも諦めきれないのかメフィに交渉を続ける。
「……では、本国に持ち帰っていただいて……。」
「いえ、我が国が鉄道事業を行っているわけではないので、交渉のしようが無いのです。ヤマト様と交渉してください。先ほど私が驚いたのは、ヤマト様が断ったことが意外で驚いたのです。」
メフィどころかドリュフェス王国には仲介しかできないからな。しかも交渉すべきなのは俺だ。
「どういうことですか?」
「ああ。それは単純に鉄道は俺が俺の資産を使って俺の知識から再現したものを俺が雇った従業員に俺が技術を教えて俺が運営している個人企業だ。ドリュフェス王国は俺が恩を売った代わりに鉄道事業を行う契約を締結し俺の資産から購入した資材を使って俺が計画し俺が建設を指揮し俺が事業で儲けたお金をドリュフェス王国に納税している。ドリュフェス王国が契約を反故にしたら鉄道関連の全てをドリュフェス王国から引き上げる契約だからいくらドリュフェス王国に圧力や根回しをしても無駄だ。契約内容には俺がどう建設するかの決定権を持つことになっており、提案はできても政治的圧力や袖の下を渡す行為自体を禁止している。」
王女……というか、もう将軍でいいや。将軍は諦めきれないようだ。さあ、さっき断られたうえに上司に交渉して命令させようとしたら、そもそも交渉相手に最初に断られている状態だからここからどう交渉するのだろう?
「では、テツドウ建設の技術を教えてもらいたい。報酬は貴方がドリュフェス王国に支払っている納税をこちらで払うというのはどう?」
なるほどな。技術供与してもらう方にシフトしたか。ま、税額を言ったら諦めるよね。
「……まだ見込み額だけど、金貨5000枚は超える見込みだけど。」
「すまない、無理だ。というか、どんな稼ぎかたをすればそれだけ納税するんだ?」
だろうな。
「まだ開業半月ですけど貨物輸送だけで金貨数百枚の稼ぎが発生しているんで。今後の開通予定を考えれば、貨物だけで半月後には月金貨千枚を超える予定です。」
ま、まだ旅客運用より貨物運用の方がボロ儲けなんだがな。それでも見込み額でこれだけだ。ナンユウゲキ~サイユウゲキ間が開業したら確実に儲かるしな。一区間一区間ちゃんと作っていけば間違いなく儲かる。半年後には3期線、1年後には山岳トンネルを掘らなけりゃならない区間以外は開通させたいな。
「なるほど、馬車より割高だから儲かると……。」
「馬車より安いから需要が追い付いてないんですよねぇ。幹線は早めに複線化するべきかな……。」
なにせ、馬車より人件費もその他の費用もかかってないからねぇ。
「……なぜそんなに安くできる?」
「そりゃあ貨物量で80倍で数日かかる物を3人で2~3時間で運んでいたら圧倒的に人件費を抑えられるよね。それに機関車や貨物車の減価償却を20年で計算し、1列車あたりの経費を計算したら、1日あたり馬車1台の2割程度しか経費がかかんないんだ。馬車の半額で運賃を貰っても儲けがかなり出るよ。」
人件費の時点で馬車の1%もでないし、他の費用も同じく1%以下だ。そうなると馬車よりも利益率は良い。まー、これには建設費や運行指令員、駅員の分は含まれてないんだが……。価格破壊に繋がるからやれないけど、最終的には利益率を10%くらいまで下げたいなあ。
「……あー。安ければそれを使う方に流れるか。」
「そういうことですね。あと、自分で経営していてもこれだけ儲けが出る技術を流出させようとは思えないですね。」
「そうなるな。……では、携帯用コンロを無償で供給する代わりに――――と言っても。それなら買いますと言うでしょうね。」
「そうですね。」
資金は十分あるからな。
「どうやったら作って貰えるのでしょうか……。」
作る条件?いや、だって……。
「そりゃあ、ちゃんと契約を締結できれば作りますよ。」
「え?」
クリス将軍は驚いたみたいだ。でも最初に言ったよねぇ――契約を持ちかける予定って。
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ラドファライシス側から見た話も「最強の王妃」に同時公開しています。
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