第2話 ナンユウゲキ駅移設計画(鉄)
「うーん、どういう風に作ろうか。」
今回の視察メンバーは俺、ほぼ秘書なアモリ、技術班のシルベス、土木課課長のドワーフであるゲイル、運行課最高運行責任者でエルフのフィリス、そして鉄道院折衝担当のバルベリッサの6人である。
「まず、前提条件を確認することからですかね。」
「そうだな。条件①東西と南からのルートの合流。条件②町の南の踏み切りをなくす。かな。」
アモリの提案に対し、俺は前提条件をあげた。
「ふむ、なら町の北側に踏み切りを作ればいいのでは?」
「ですが、町の北側はあの崖ギリギリまで建物が建ってますよ。」
フィリスの案にバルベリッサが異を唱える。
「では、あの崖を削って作るのはどうだ?社長なら可能ではないか?」
「ん?ああ、できなくはないけど、あの景観は残しておきたいかな。」
ゲイルの案に、俺は考えを言う。
「じゃあ高架を作ります?」
「「「「高架?」」」」
ポカンとする4人。まあ、高架はまだこの世界にないか。
「高架は……、ちょっと違うけど陸橋と言い換えたらわかりやすいかな。簡単に言えば道の上に橋を架けるんだよ。」
「ちゅー。」
”それならば街道の踏み切りを無くせますね。”
そうシルベスが板書した。
「まあ、問題があるなら素材と勾配だな。まあ、高架橋のレール面を4mくらいの高さにすればなんとかなるかな。そうなると貨物の方が問題か……、まあ福島駅みたいに貨物線だけ踏み切りにすれば対応しやすいかな。」
「え?福島駅に踏み切りなんてありましたっけ?」
「ん、ああ地元の人間か鉄じゃなきゃ知らないよな。あそこには梅田貨物線の踏み切りがあるんだよ。」
「……そうなんだ。」
あの踏み切りって貨物列車、はるか、くろしお以外は通過しないから環状線に乗ってるだけじゃあ踏み切りあるの知らないよなぁ。
「とりあえず確認事項は鉄筋コンクリートはどれくらい持つ?」
「うーん、一応技術的には作れるんだけど、日本みたいに大量のってなると難しいかも。コンクリートの質を考えても50年もてばいいかな。」
この世界の建物のほとんどが木造か石造りだ。そもそも大量のコンクリが作れるなら枕木もコンクリート枕木にするからな。
「じゃあ、シンプルに盛り土にするか。そういえば、一応石垣ってのはあるんだよな。」
「一応ね。戦国時代みたいな石垣は無理だけど。」
「というか、魔物が町にはいるのを防ぐ防塁みたいに作ればいいよ。そうなると、旅客駅として高架駅を盛り土上に作り、それとは別に西側の今の駅の場所を貨物駅として整備し直す。いっそのこと町の防塁をかねてぐるっと囲むか。」
「その場合の工事範囲はどうなります?」
土木課長のゲイルが聞く。
「既存線は貨物線に転用。それでも2kmは高架化することになる。反対側もナンユウゲキ方面2kmほどとメリカズフォス方面からの勾配部が大規模ですね。ナンユウゲキ方面はトンネルにするか上を通すかが難しいですね。貨物列車を考えるなら勾配を減らす方向に持っていきたいからトンネルを掘りたいんだが。」
「トンネルってどれくらい?」
「約2kmってとこだな。一応トンネル建設は鉱山に近いから不可能じゃないだろ?」
「まあそうだけど、それでもかなり時間がかかるよ。」
「そこは俺がチートるから。」
MP5桁と土魔法10レベルでごり押しすれば大丈夫だろう。
「高架ホームにするに当たって俺の考えなんだが、ホームは2面3線。併合の時は一旦行きすぎてからのバックで連結。運行上この駅止まりの列車を作る。もしくは折り返し別方向の列車にする場合に2番線は使い勝手がよくなるかもしれないからな。」
構造上伊勢中川と梅田貨物駅があった頃の梅田貨物線を組み合わせたものになりそうだからな。
「駅舎はいっそのこと盛り土と一体で作ろう。」
おおさか東線の駅って元々盛り土だったところに駅を作っているのが多いから、最初から一体で作れば簡単に作れそうだ。
「駅改札は町側だけに作ればいいと思う。それと高架下を町の門として整備すればどうかな?どっちにしろ踏み切りがあるから。」
「いいですけど、その部分は領主代行と擦り合わせておかないといけませんよ。」
バルベリッサにツッコまれた。
「あーそうか。とりあえず概略図だけ作って領主代行のところに行くか。」
これはこの町が鉄道の町になる第一歩になるだろう。整備兼車両工場も併設したいな。
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