第2章 鉄道建設への準備

第1話 契約締結(鉄)

第2章始まります。


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「よく来た。さあ、先程の続きといこうか。」


 執務室には国王と宰相、秘書官、そしてメフィ王女が居た。


「まず、契約についてだが、一応さっき言っていた『軍事利用の禁止』だけかい?」

「それは、『軍事利用の禁止』にしてください。国防に利用するのは有りです。」

「ふむ、具体的にはどこまでを容認するのだ?」

「そうですね、平時は1両貸し切りで、1方面に2回まで。それ以上は送った兵が帰ってから送れるという方向で。物資は武器は不可、糧食は無制限かな。有事の判断は、相手国からの宣戦布告もしくは国境侵犯を基準で、兵員、武器は防衛に必要なだけで、糧食は1日分を毎日輸送。糧食の輸送は敵軍の撤退をもって終了。撤収は制限無し。平時は通常運賃、有事は割増運賃で請求するということでどうでしょう?」

「有事の割増はこちらは困るのだが。割引にならんか?」

「こちら側としては、通常運行を取り止めた損害が発生することになるので、むしろ割増です。それに、相手国への損害賠償として請求した中から払ってもらえば問題ないです。」

「なるほど、そういう意味での割増か、なら認めよう。」


 秘書が内容を書き留める。


「次に、『鉄道建設の間接的な妨害行為の禁止』です。具体的には、建設予定地の地上げ行為――――格安、もしくは強引に土地を入手し、高額でこちらに売り付ける行為になります。それと、――――政治的に強引な鉄道誘致活動の禁止になります。」

「それはどういうことだ?」

「ぶっちゃけると、国王陛下には全く関係ない話なんですが、例えば――――。」


 俺はノートに簡単な山田線の地図を書き、我田引鉄の説明をする。


「なるほどな~。確かに問題になるな。」

「なので、建設のルート作成は俺に一任してほしいのです。もちろん各領の領都は結ばせてもらいます。というか、それが一番収入に繋がるので。」

「確かにそうなるな。では、国王として鉄道建設に必要な土地は先の報酬の一部としよう。これなら誰も文句もあるまい。」

「文句はあると思いますよ。まー、利権で動く奴には国の命令に従わなかったということで処罰できるけど、国を守るために善意で文句……というか、諫言だったらちゃんとした形で説明しなければならないですよ、陛下が。」

「ええっ!俺か!?……俺だよなぁ。頭痛ぇ。」


 頭を抱える国王。


「じゃあ、私が――「無いな。」「却下だ。」」

 俺と国王でメフィ王女の発言を即時に却下する。

「な――――「何故なら、この契約が国との契約になるので、説明義務は国王にあるし、それに、王女の土地にする理由もなく、さらに鉄道用地が王女の土地だと、他国には王女の輿入れの事前結納に見える。これが一番問題だ。」」


 有無を言わさず、被せて回答をする。


「あともう一つ、重要な契約がある。」

「重要?これまでも重要な話だったかと思うのだが。」

「これまでと違うのは、こちらの必要なものではないということですね。」

「必要でない?」


 3人ともなんだろうと首を捻る。


「ええ、それは、です。」

「「「!!!」」」


 完全に頭から抜け落ちていたらしい。


「――――税金はなくても構わん。」

「税金は取ってください。」


 国王の妄言にツッコむ俺。


「だが、娘の命の恩人から税を取るわけには……。」

「取れ!税金は!というか、普通は税金を納めるこっちが免税を求めるだろ!なんで納める側のこっちが税金を取れって言わなきゃならないんだ!!!!!」


 と、変な怒り方をしなきゃならない俺。


「では、いくら位納めてもらえるのでしょうか?」


 宰相は冷静に聞いてくる。


「宰相さん、税金の話は俺たちでやりましょう。」

「は、はぁ。」


 当惑する宰相。


「税金ですが、こちらは輸送業になりますので、運賃から費用――――人件費や維持費、設備投資もお金がかかりますので――――を引いた収益の10%でどうでしょう。」

「ふむ、どれくらいになるのでしょうか?」

「そうですね、初乗り料金が銀貨1枚、そこから距離に応じて料金を上げます。さらに、車両を等級別にし、3等車はそのまま、2等1等車は距離に応じた追加料金を加算。指定席料金や寝台料金も用意する予定です。貨物は手回り品を除き大きさで計算した運賃をもらいます。実際に運用しないと計算は難しいですが、年金貨5000枚くらいかなと思います。」

「!!」


 驚愕する3人。


「あれ、少ないですか?ならもう少し――――。」

「いや、多い!多すぎます!1つの都市が国に納める税を越えてます!!」

「えーと、国中に路線網を作ろうとしていますから、それくらいは――――。」

「いえ、それだけの税を払える商家も貴族もいないのです。そこまでの税を納められても困ります。」

「多い方がいいだろ?」

「多すぎるのです。我が国の法では税は領主である貴族に納め、そこから国に納める形になるので、そんな額をどの貴族が得るか争奪戦になり、内戦も考えられます。」

「なるほど。……では、『鉄道は公共性が高いものであり、その範囲は多数の領に跨がるので、国との契約として税を主に国に納め、駅の所在する領の貴族に対し一律年金貨10枚を支払うこととする。』というのはどうでしょう?」

「それは、些か少なすぎるのでは……。」

「いえ、実は駅を作ることでの経済効果が高いのと、もし国に納める税を求めた場合、駅を作らなければその土地は衰退します。さらに、契約の第2条に引っ掛かり、路線を誘致できないので、こちらが『国との契約に違反するので作らない』というと、のですよ。」

「え、謝罪もできないの?」


 メフィ王女が聞き返す。


「はい。謝罪して誘致すること自体が『』に当てはまると言えるんです。しかも、『こちらで費用を出す』だとか、『税を支払わなくてもいいから』も、俺の方から当てはまると言ってしまうと二度と作らないと言えてしまう、こちらに有利な契約になってるんです。」

「あ、そうなんだ。」

「えーと、契約内容はこれくらいかな。」

「いえ、まだどの町を結ぶか決まってませんよ。」


 宰相が聞いてきた。


「それは、町の規模、そして地形を加味して考えます。鉄道建設には地形に左右されますから。」

「まあ、こちらからはどう結ぶかは決められませんが。」


 苦笑する宰相。


「いえ、意見は聞きますよ。ただ、地形や、その他要因で意見通りは作れないですね。」

「……聞いてはくれるのか。」

「そりゃあ、この国の流通網を再構築することになりますからね。それに今の街道も勾配の参考になりますから。」

「そうか。」


 無下にはしないことを伝えると、安心する宰相殿。


「まずは、ですね。」

「「「あっ!!!」」」


 すっかり忘れてたなこの人たち。





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第2章の投稿は毎週月、水、金の21時からになります。なお、前回第2章前半の投稿について書いていましたが、第2章の最後まで、週3の投稿になります。

また、今日から『婚約破棄令嬢、追放され……ない!?』を投稿しています。

全5話、1万字ほどの短編になります。よかったら読んでみてください。

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