第34話 貴族とドレス

 部屋でしばらく待っていると、また侍女?たちがハンガーラックを持って部屋に入ってきた。


「ヤマト様、これより陛下に謁見しますので、お召し物をこちらに着替えてください。」

「あー、やっぱり謁見ですか。作法とかわからないんだけどいいのか?」

「少しお待ちください。」


 侍女?の一人が部屋を出る。そのうちに残った侍女?がメジャーを持って俺の寸法を測る。なるほど、この中から寸法にあった衣装に着替えるのか――――。

 着替えてしばらくすると、結構いい服を着た、まさしく貴族って出で立ちの男性が入ってきた。


「君がヤマト君だね。今日のところは作法は気にしなくていい。あくまでも非公式になるからね。」

「それはよかったです。いずれ馴れる必要はあると思ってるんですけど、まだ道半ば――――にもなってないか。駆け出したばかりで、目標が見えてきてから学ぼうとは思ってるんですが……。」

「そうかそうか。で、その目標っていうのは聞いてもいいかい?」

「うーん……。」


 さて、どうするか。

 まず、この人の立場を想像する。

 おそらく30代半ばだろう貴族だ。王宮でこういった顔合わせをするならそれなりの地位のある人物になる。そうすると、繋ぎがあるとかなり有利になるが、こちらの思惑である『』を考えると、難しくなる。なぜなら、鉄道のの有用を見破られ、その点をつかれると鉄道計画自体ができなくなる恐れがある。となると、鉄道の件は王様に褒美というかたちで契約に持っていけばいいな。となると、この人がこの王様にどういうふうに関わっているかだな。直接進言できる立場だったらいいが……、あの娘が王女なら国王陛下と同世代――――大臣クラスの立場か、国王に弟がいたらってところだな。やっぱり”地位が高すぎる”な。


「残念ながら、言えないですね。」

「……そうか。言えない理由を聞いてもいいかな?」

「そうですね……。理由を言えない事も理由だと思ってください。あなたが信用できないのではなく、俺が推測するあなたのが言葉を鈍らせると。」

「なるほど。ところで、褒美についてなんだが、何か希望はあるか?」

「んーそうですね……。」


 そうだなー、王女を助けたからっていうのをあまり公にできないだろうから、褒賞金+α位だな。なら、頼み事一つ――――鉄道建設の契約を頼むくらいだな。内容が内容だけに直接王様と交渉した方がいいな。


「一つ、頼み事があるくらいですね。内容は王様と直接交渉でということで。」

「――! そうか、内容によっては根回しがいるから、先に教えてもらいたいのだが……。」

「いえ、根回しの時点でにされると困るので、お断りします。」

「そ、そうか。」


 せっかく作る鉄道を利権やら軍事利用やらで国際列車を走らせられないのは悲しいからね。


「では、メフィリア――――王女は、どう思う?」

「どう思うとは?」


 突然、意味がわからん。


「あー、そうだな、あの娘はどう見える?」

「そうですね、いい娘だと思いますよ――――って、王女様にこの言い方はよくないですけど。」


 苦笑いで言う俺に、彼も苦笑する。


「確かにな。だが、まあここだけの話ということにしよう。」

「ありがとうございます。まあ、真っ直ぐで、行動力がある人ですね。好感を持てます。」

「そうかそうか。では、この国はどうだね?」

「この国ですか?」

「ああ。」


 少し考えた。だが、実は俺、この世界に来てまだんだよな……。


「……ハッキリ言って、この国に来てまだ数日しか経ってないので、俺がこの国がどうこうと判断するに値しないと思っています。そして、もう話が通ってると思いますが、初っぱなにがあっていい感情を持てないのは当然ですが、それはそうとしてあくまでもこの国の一面だと考えるべき事件になります。それに、この国でいい人たちに助けられたのも事実です。そんな感じですかね。」


 取り敢えず実際あった件を交えて当たり障りのない答えを出す。インフラは想定通りの中世ヨーロッパ系の一般的なファンタジー世界だし、将来的に交通インフラは俺が作るしな。


「なるほど、この国に来たばかりか、だから……。」


 なにやら呟く貴族の男。


「では、準備ができたら呼ばれるであろう。それまでこの部屋で待っていてくれ。他の女性陣もこちらに来るはずだ。」

「そうか。わかった。」


 貴族の男性(名前聞くの忘れた)が退出したあと、しばらくして女性陣が待っていた部屋に来た。

 女性陣はドレスを着ていた。正しくはだが……。


「みんな、ドレスを着たんだ。」

「ごしゅじんさま、動きづらい。」

「うごきにくいねー。」

「鍛冶できない。」

「私がこんなドレスを着させてもらっていいんでしょうか?」

「うちら平民やで。」

「ホントこんなの着ていいの?」

「ははははは……。」


 ドレスが煩わしそうな3人と、こんなドレスを着させてもらっていいのか?と困惑している3人と、他のメンバーがドレスの中ただ一人ドレスじゃない何かの制服っぽいものを着ているウリアさん。


「ねぇヤマト様、どうこのドレス!」

「うん、かわいいね。」


 ピクシーのミューもドレスを着て、飛び回っている。しかし、よくのドレスあったなぁ。


「オレは?」「ルナは?」「りーふはー」

「ああ、かわいいね。」


 ドレス煩わし三人娘も聞いてきたので、率直に答えた。


「皆さんも綺麗ですよ。」


 戸惑い3人組にも言う。


「……ええ、うん。」

「誉められて、嬉しい。」

「せやな。」


 喜んでもらえてなによりだ。それよりも……。


「なんで、あんたはドレスやないねん。」


 ツッコまざるおえなかった。大阪人のサガ


「ああ、ボクは更衣室でこれを渡された。みんなと一緒にドレスでいいと言ったんだけど……。」

「おお、そうだったんだ……。」


 そうこうしていると、謁見の間に呼び出された。

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