JUSTICE

@kain_aberu

序章

第1話

 深夜零時。

 都内某所。


 例え深夜を過ぎても、眠らない街として知られるこの街は、昼間とほとんど変わらない喧騒に包まれている。


 沢山の人が歩き、あちこちの建物から明かりが漏れ、ネオンが輝き、道行く人の顔を照らしている。

 若い男女、スーツ姿のサラリーマンやOL、果ては老人の姿もあった、皆、思い思いの方向へ歩いて行くけれど、彼ら彼女らの目的は一つ、酒を呑む事だ。


 すぐ隣の人間がどんな顔をしているのかさえ、ほとんど気にしないで、自分の目的地に向かう彼らは、自分が向かう先以外の道が、どうなっているのか、あるいは誰がそちらに向かっているのかなど、もちろん見ていないし、考えもしない。


 だから、彼らは気がつかなかった。


 沢山の人が向かう方面、飲み屋街、あるいは場末の酒場……

 そういった場所とは、全く逆の方向に向かって歩いて行く小さい人影に……


 そして……

 その人影が……

 例え『眠らない街』と称されるこの街の中でも、こんな時間に一人で歩いているのが、明らかに不自然な少年である事にも。


 誰も、気がつかない。


 ネオンの明かりが、少年の表情を照らす。

 少年の、その顔には……

 楽しそうな、笑みが浮かんでいた。

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