声劇台詞 「くちづけ」 

欠け月

第1話 ~瑠夏と一希~《BL編》 


『くちづけ』 〜瑠夏るか一希いつき編〜




瑠夏「一希、これを全部打ったの?」


一希「そうだよ。 でも、見た目ほど大変じゃないんだ。タイピングの機械があるからね」


瑠夏「それにしても、すごい量だよ。普通に読むだけだって大変なのに。

   これって、ボランティアでやってるの?」


一希「頼まれた時は、いくらか貰える。でも、プロじゃないから、お金の問題じゃないよ」


瑠夏「凄いな、一希。やっぱりお前、偉いよ。だけどさ、なんで、これ打てるようになったの?  あ、もしかして聞いちゃいけなかったかな」


一希「別にいいよ。 妹が視覚障害者なんだ」


瑠夏「あっ…そうか…」


一希「それで、琴音の………妹の為に点字を覚えたんだ。(微笑みながら)

瑠夏、何でそんな悲しい顔するの? 妹は目に障害はあるけど、生活するのにさほど支障はないよ。障害者用の機材が充実してるからね。それに、光は感じられるし、失明する前の記憶も持ってる」


瑠夏「そうなの? なんか、ちょっとホッとした。良かった。僕、凄く無神経だったから、ごめん」


一希「瑠夏は、素直なところが長所なんだからさ、謝らなくて良いんだよ。

妹のお気に入りの本ばかりを集めたんだ。最初、妹に読んでやって、点訳されていないものを、少しづつね。 時間が空いた時に、点字にしていくんだけど、集中すると気分転換にもなって、意外に面白いんだよ」


瑠夏「僕も、テンヤク?っていうの、それ、出来ると良いんだけど。難しそうだね」


一希「慣れれば、そうでもないよ。瑠夏は、賢いから直ぐに覚えると思うよ」


瑠夏「今度、教えてよ」


一希「良いよ」


瑠夏「僕、もし目が見えなくなっても、一希の顔はわかるよ。

 (言いながら、目を瞑りつむゆっくりと一希の顔を撫でる)

ほら、鼻が高いし鼻梁が細いだろ。手の平に君の鼻先が当たって、くすぐったいや。  

 (目を開けて、くすくす笑う)

一希は顔も小さいよね。僕の掌(てのひら)にすっぽり収まってしまいそうだよ」

 

 (そう言いながら、一希の顔を片手でそっと包み込む。一希は静かに、目を閉じる)


一希「瑠夏の手が大きいんだよ。   僕も、瑠夏の手の平は分かるよ」


瑠夏「嘘だ!今、初めて触ったのに?」


一希「嘘じゃないよ。瑠夏は良い匂いがするからね。この、ふわふわした巻き毛と同じ匂いがするよ」(瑠夏のクセのある、猫っ毛をいじる)


瑠夏「一希・・・」


一希「ん?」


瑠夏「手に、キスしてみて」


一希「チュッ」(小さな、口づけを瑠夏の手の甲にする)


 (瑠夏、自分の手の甲の同じ場所に、口づけをする)


瑠夏「これで、間接キスだね」


 (二人とも、静かに小さく笑う) 


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