第13話 (祖)母のもてなし ~ホラーな話し⑥~
以前立て続けに亡き母のホラーな話しを公開しました。今回は長女から聞いた母の話しを書こうと思います。
実母は70才を待たずにガンで旅立ちました。元気な頃はとてもパワフルな人で、孫たちを連れてアチコチ遊びに行っていました。初孫である長女は特に可愛かったようで、長女が小学生の間は二人で旅行(最後はサイパン島)にも行っていました。
長女は中学生のときブラスバンド部に所属していて、音楽発表会とは別に地域のお祭りやコンクール等にも参加していました。母は体調を崩してもかかさず聞きに来てくれていました。(中二の地方大会が最後となりました)
やせっぽちで食の細い孫たちのことを気にかけてくれて、手料理を持ってきてくれたり実家に子どもたちだけで呼んで泊まらせてくれたりしていました。
そんな風にお祖母ちゃん子に育った長女は、お年寄りに気遣いの出来る人に育ちました。義母に一番優しいのもこの長女です。
さて、そんな風に母から可愛がってもらった長女から聞いた話しです。
◇
母が亡くなってバタバタと過ごし、あと数日で四十九日という頃だったと思います。長女(当時中二)が少しためらいがちに小烏を呼び止めました。
「お母さん、昨日な。お祖母ちゃんちに行った夢を見た」
「夢?」
「うん、お祖母ちゃんがおった」
「夢だもんなぁ。お祖母ちゃん元気そうだった?」
「うん、いつものエプロンして出迎えてくれた」
夢で「お祖母ちゃん」は訪ねて行った娘を喜んで家に上げたそうです。
いつも遊んでいる居間でお菓子やジュースを出してもらって、テレビを見ながらいっぱいしゃべって、学校の愚痴も聞いてもらったとか。
ご飯の時間になって、「お祖母ちゃん」は台所に立つと娘の好物をたくさん作ってくれたのだそうです。テーブルには食べきれないくらいお皿が並んだと娘は言いました。
娘がそれらを食べるのを箸も持たずにニコニコして眺めていた「お祖母ちゃん」は最後に
「お腹いっぱいになった?」
と娘に尋ねたそうです。
娘は
「うん、もうお腹いっぱい。美味しかった!
これ以上は無理!」
と答えたら、「お祖母ちゃん」はエプロンを外して立ち上がり、笑いながら言ったそうです。
「そうか、良かった。
なら、お祖母ちゃんもう行くね」
そして「お祖母ちゃん」は消えてしまったそうです。
◇
四十九日を過ぎたら魂はあの世に行ってしまうと聞きます。母は最後にお気に入りの孫にご飯を食べさせたかったのでしょうか。娘(小烏)のところにはご飯を作りに出て来てはくれないのに……と、ちょっと羨ましく思う小烏なのでした。
*****************************
小烏の母のホラーなお話しはほかにふたつあります。
よろしかったら覗いてみてください。
「第8話 母のお迎え ~ホラーな話④~」
https://kakuyomu.jp/works/16816927861004084671/episodes/16817330649911246467
「第9話 母のお誘い ~ホラーな話し⑤~」
https://kakuyomu.jp/works/16816927861004084671/episodes/16817330652444443312
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます