第8話 母のお迎え ~ホラーな話し④~
さて、~ホラーな話し~を書いていると、ふと実母のことも思い出しました。
流れでドドーンとご紹介しようと思います。
母のネタは二つ。
今回はそのうち一つを聞いてもらおうと思います。
母は五人兄弟、男、女、女、女、男のちょうど真ん中です。
父親を戦争で亡くし、母親が一人で五人を育てたようです。
大学に進学したかったけど、兄(長男)を東京の音楽大学に行かせるために下の姉弟は進学できなかったと言っていました。
そんな「愛情ゼロ地帯」(母がよく言っていた)の母も大恋愛にて結婚。
小烏と妹の二人のそれはそれは輝くように可愛い女の子(言うのは自由だと思うの)に恵まれました。
小烏は小さい頃は体が弱くすぐ熱を出す子どもでした。
風邪でもひこうものなら、十日は寝込みます。
小学校の時はがりがりに痩せていて、夏半袖を着ると痛々しいくらいでした。
一方妹は健康で活発でしたが、今ではよく聞く「登校拒否」を幼稚園で発動。
おたふくかぜをこじらせて髄膜炎で入院したことがあります。
その上姑は体が弱いことを理由に婿を取り、家事もお手伝いさん任せ。
つまり、母は子育てにかなり気力を削られながら大変な嫁生活をしていたと思います。
そんな母は、69歳の時ガンで「この世から旅立ち」ました。
実家のお墓は県の山間部にあります。
母が元気な時は一緒にお彼岸とお盆には参っていましたが、だんだん足が遠くなっていました。
それでも義実家に帰省する途中寄り道をして行ける場所なので、年末以外の五月の連休とお盆には必ず家族で参っていました。
母の三回忌が終わった頃だったと思います。
その年小烏は体調が悪く、買い物に行くと帰ってから横にならないと動けないような状態でした。
お盆の帰省の時も車の座席に長時間座っているのが辛く、背もたれを倒して乗っていました。
実家のお墓は小高い山の中腹にあります。
日当たりのいい場所でお彼岸の頃には暖かくて気持ちがいいのですが、夏真っ盛りのお盆のお墓参りには少々日差しが厳しいのでした。
お墓の周りを掃除して、花を供え水を注ぎ線香を立てたころにはもうぐったりしていました。
今から思うと、熱中症になりかけていたのかもしれません。
車に戻って座っていられず、ワンボックスの3列目の座席を占領して横になりました。
車の揺れに身を任せてそのうち眠ってしまったようです。
夢を見ていました。
心配そうな顔をした母がコップに入った水を差し出しながらこちらを見ていました。
「つむぎ、暑かったろう。」
「うん、暑かった。」
「大丈夫?」
「いや、ちょっとダメっぽい。
しんどいわ。」
「水、飲む?
冷えてるよ。」
「胃がおかしいからいらないわ。」
「なら、ちょっと休んいく?
ここは涼しいよ。」
夢の中の母は骨壺の並ぶ薄暗い空間に小烏を誘います。
え、そこ?
骨壺の隣とか、いろんな意味で「涼しすぎる」わ!
夢の中とはいえ、さすがにそこはマズいと思いました。
「いや、これから帰省なん。
休んでると遅くなるから、いいわ。」
「そう?
少し涼んでいくと楽になるよ。」
「うん。ありがとう。
でも、いいわ。」
「そう?
なら、気をつけてな。」
そこではっと目が覚めました。
子どもが肩をゆすっていました。
「お母さん!お母さん!
大丈夫?」
「う、うん。大丈夫。
いまな、おばあちゃん(母)にお墓に誘われていた…。」
子ども達はそれを聞いてびっくりしました。
小烏の顔は、真っ青を通り越して白くなっていたそうです。
娘(小烏)の体調を心配してくれるのはありがたい母心なのですが、誘う先がお墓の下というのはどうなのでしょう。
もし、あそこで誘いに乗っていたら?
差し出された冷たい水を飲んでいたら?
もしかしてそのままだったのかも…、と思う小烏なのでした。
近況ノートに写真があります
(あ、お話しとは直接関係ないんですけど)
https://kakuyomu.jp/users/9875hh564/news/16817330652784649466
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こちらもございます。
「第9話 母のお誘い ~ホラーな話し⑤~」
https://kakuyomu.jp/works/16816927861004084671/episodes/16817330652444443312
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