第6話 悪魔は死にたがり
4日。首を吊った。頭が破裂しそうになる感覚と息苦しさに悶える。
15日。首をナイフで一思いに掻き切る。痛み。痛み。まもなく意識は途絶える。
23日。教会へと赴く。聖水を浴びせられる。焼けるような暑さ。それを奪い取り、一気に飲み干す。
本日、崖から転落。とてつもない衝撃と痛み。
気付いたらいつもの街にいた。
不死とは困ったものだ。死にたい。僕は死にたい。
なのに死なせてくれないこの身体を呪ってしまいたい。いや、呪われているのだ。
僕はこの街で男と暮らしていた。お父さんと呼んでいた。呼ばされていた。
だけど僕の父親は、あんな男ではなかった記憶が朧気にある。
毎日レイプされ、訳も分からないまま性奴隷にされた。小児性愛者だったんだろう。
食事もろくに与えてもらえず、パン一欠片で一日をすごしたこともざらにあった。
ついに7歳になった僕は、男を殺した。
果物ナイフでメッタ刺しにした。あの家から逃げたい一心だったとはいえ、我ながらどうかしていたと思う。
飛び出した矢先、待っていたのは外の世界。そう、この治安の悪い貧民街。
まだ7歳の少年。フードを被った優しそうなお姉さんに導かれるまま歩いた。
待っていたのは実験室。
気付いたら僕は、人を食べずにはいられない悪魔の子にさせられていた。
僕はそんな自分が嫌いだ。
悪魔なのに人間の身体。
人間なのに悪魔と呼ばれる。
「客も寄り付かなくなってきたな」
娼婦だというのにこの街ではすっかり悪魔として知れ渡っている。それでも好き好んで僕とセックスをしたがる変わり者も一定数いる。
「ねえ、お兄さん。カッコイイね」
「お、なんだお前。男か?女みてえな身体して」
「そうだよ。僕と遊ばない?」
慣れた手つきで男の腰を触り、ぐっと引き寄せる。
人間として生きたい僕には食べるためにお金が必要だ。
それでも何も変わらない。気付けばもう一人の自分は空腹に身を任せて人を喰っている。
だけど足掻いて生きるしかない。
ああ、こんな生活終わらせてしまいたい。
早く死にたい。
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