遅れて異世界に来たんだけど、幼馴染を助けに来たついでに世界救います。
鮭蜜柑
第1話 俺だけ遅れた異世界召喚!?
異世界系とは現代日本で人気があるラノベ小説のジャンルの一つである。
その人気は凄まじく、気軽に投稿することができるネット小説サイトから
書籍化されたり、コミカライズされアニメ化までされる可能性があるという
コンテンツである。まさに、現代日本のサブカルチャーを語る上では外せない
ジャンルの一つとなっている。
そんな異世界系が好きでネット小説を読みあさっている男子校高校生
「あ~。平和だな~。隕石とか落ちてこねぇかな」
「ま~たそんなこと言ってんの?平和なのはいいことじゃない」
なんとなく言った独り言にいつもどおりの返答が帰ってくる
返した人物は湊にとって幼馴染の関係である女子高生。
彼女のことを説明するなら容姿端麗、文武両道そして何よりも
分け隔てなく誰にでも優しいところだろう。そんな彼女が人気がない
わけがなくクラスだけにとどまらず学校全体の人気者である。
「美月か、平和なのは確かにいいけどさ。何かこう刺激が欲しくない?」
「全然欲しくないから!平和が一番だって、それに湊が言う刺激って読んでる
小説の影響でしょ?」
全くその通りの返答をされたので少し曇った表情になる湊であったが幼馴染の
美月には全てお見通しなのだ。それもその筈、湊と美月の家はすぐとなりであり
夜になると窓を開けてよく話をしているのだが、湊が話す内容が今読んでる小説の
感想や自分だったらこう書くんだよな~といったような内容が多いからである。
というか小説の感想以外に話す内容が思い浮かばない為に感想をひたすら美月に対して話しているだけなのだが、美月は毎回笑顔でずっと聞いてくれていた。
その理由は簡単なのだが湊が気付くはずもなく美月が幼馴染だからしょうがなく付き合ってくれているくらいに考えていた。
「確かに、小説の影響だけどさぁ。まぁ、いいや。ちょっとトイレ行ってくるわ」
「授業始まりそうだし、急ぎなよ?」
軽く返事を返しつつ教室をあとにしてトイレに向かう、廊下を歩きながら外をみると
何も変わらない日常がそこには広がっている。
「きっとこのまま平和に暮らしていくんだろうな。」
湊自身、さっきはあんな事を言っていたがわかっているのだ。
あくまでも小説で語られる物語はフィクションで自分たちの現実は
ここであることを。
トイレで用を足し、さっさとクラスに戻るため廊下を歩いていると
少し違和感を感じた。
自分のクラスに近付くにつれて静かになっていくのだ、確かに自分たちのクラスは
校舎の端っこに位置しているがここまで静かなのはおかしい。
そう思いつつクラスに戻ろうとすると
「おい、鹿島どこへ行く?お前の教室はここだろう」
突然、後ろから話しかけられて振り返るとそこには隣のクラスの担任である
男性講師が立っていた。
それ自体は普通のことなのだが気になる点が一つあった。
そう、この目の前にいる先生は今隣のクラスを指さして
ここがお前の教室だろうといったのだ。
「え?何言ってるんですか先生。俺はとなりの2-Cですよ」
そう返すと先生は表情を曇らせながらこちらを見て
「何を言ってるんだ?2年生だけは定員割れが起こって2-Bまでしかないだろう」
一瞬先生が何を言っているか理解ができなかった。だが先生の表情をみると変な事を言っているのは湊で先生自身は間違ったこと言ってるようには見えなかった。
湊は先生との会話を切り上げると急いで自分のクラスがあるはずである
教室に向かったが、そこで見たのはまるで最初から誰もいなかったかのように
人気のない教室だった。
「おい、急に走り出してどうした?この空き教室になにか用事でもあったのか?」
「先生・・・。倉瀬美月って知ってますか?」
なにかがおかしい、そう思った湊は自分が知ってる中で誰もが知っているであろう
幼馴染について聞いてみたのだった。
「倉瀬?誰だそれ。うちの生徒にそんな生徒はいないぞ?」
帰ってきた返答は、湊の思っていた返答とは180度違う答えだった。
たまたま次の授業が移動教室だったなんてオチを考えていた湊の考えをはっきりと
否定する返答だったからだ。そのあとは、当たり前のように隣のクラス
で授業を受け、自分だけを置き去りにして平和な日常が周りでは流れていた。
「確かに、美月はさっきまでいた。そして俺はそれを覚えてる、ということは何か現実ではありえない何かが起こったってことか?」
小説の中でしか起こらないと思っていた非日常が自分のすぐ側で起こっていたことに湊はまだ気付いていなかった。そして、その非日常に自分自身が巻き込まれる時がすぐそこまで迫っていることもまだ知らなかった。
「さて、さっき確認してきたけど美月の存在自体がなかったことになってるみたいだな」
クラスメイトが消えるという事件を目の当たりにしてから数時間気づけば放課後になり家に帰宅していた湊だったが、帰宅途中に真っ先に確認したことがある。
それは隣に住んでいる美月の家へ行き美月の存在を確認しに行ったのだが
「美月?何言ってるのよ湊くん。うちに子供はいないわよ?」
そう返してきたのは美月の母親である
自分が産んだ子を忘れるなんて普通に考えてありえない。
つまり、普通ではない出来事が起こっている。
そうでなければ今頃警察が動き出しているだろうしテレビにだって報道されるはず。だが、まるでこれが当たり前の日常であるかのように美月たちが消える前と変わらない日常が湊の周りでは流れている。
「そういえば、最近読んでた異世界系の小説で似たような物語があったな」
最近、湊が読んでいる小説の中で今の自分の周りのような出来事から始まっていた小説があるのを思い出したのだった。
その小説の始まりは主人公以外のクラスメイトが異世界に召喚されるが、主人公だけ教室にいなかったため巻き込まれずに済んだのだが彼女を救うために自ら異世界に向かう方法を探すというちょっと変わったものだ。
「けど、似てるよな。未知の力を使ってるから召喚された人が現実から消えたことが気づかれないところか。まさかね?」
そんなことを考えていた湊だったが、現実的に考えてあるわけがないと思考を放棄してベッドに倒れこんだ。そのまま、意識を手放そうとした瞬間だった。
「やぁ。少年」
中性的な声が突然自分の横から聞こえてきたのだ。きっと、疲れているのだろう
そもそも美月達が消えたのだって夢で今は夢の中だったのではないか?という
現実逃避にも近い思考になりつつ声を無視して寝ようとした時だった。
「倉瀬美月だったかな?助けに行かなくていいのかい?」
「なっ!美月のこと知ってるのか!?って・・・・え?」
中性的な声から幼馴染の名前が飛び出してきたことに驚いて湊は
ベッドから飛び起きて声の主の方を見るとそこにいたのは
現実離れした銀髪と琥珀色の宝石のような瞳を持つ少年?だった
「ようやくこっちを見てくれたね。鹿島湊くん」
「・・・・に、人間じゃないな。」
「おや?驚くより先にそっちに気付くなんて
さすが彼女が助けを求めるだけあるね」
「いや、当たり前だろ。普通に考えてこんな夜中に誰にも見つからず他人の家に侵入できる奴がまともな人間なわけないだろ。それよりも彼女って誰の事を言ってんだ?」
少年?は満足そうな笑みを浮かべながら湊をのことをまるで宝石をじっくりと
目利きする宝石商のように見ていた。
少しすると満足したのか湊が聞いた質問にこう答えた
「さっき言ったじゃないか、倉瀬美月本人からだよ。彼女たちは今悪しき神を信仰している異世界の人間に召喚されて強制的に戦争の道具として戦わされそうになってるんだよ」
普通の人間ならば何言ってんだ?コイツという反応をするのが普通なのだが生粋の
異世界系の小説が好きな湊の場合はこういうリアクションになる。
「キター!テンプレ設定!それって異世界召喚っことだよな!?俺だけ取り残されたってこと!?」
「あ~。普通は信じるわけ無いようなことも素直に信じちゃうし召喚されてないことを残念だと思ってるよ。ますます彼女の言うとおりだ」
少年?は美月から聞いていた通りのリアクションをする湊を苦笑いで見ると
これならばすぐに話を切り出せそうだと感じたのようですぐに目的を話し始めた。
「君にはクラスメイトと同じ異世界に転移して世界をあるべき姿に戻して欲しい。」
「おぉー!いざ言われるとなんかくるものがあるね。というか魔王を倒す、じゃなくて世界をあるべき姿に戻す?ってどういうこと」
「さすがだね。そこに気付くなんて、説明してあげたいけど今僕がここに来れてるのはあいつに見つかってないからなんだ。」
「あいつ?ってことは黒幕がいて、そいつを倒せばいいってことか?」
「うーん、惜しいとこをついてるよ!もう、時間がないや。ごめん!もう転移させちゃうね!人間の国に転移させちゃうとあいつにバレるから
魔族の国に転移させるけど君なら大丈夫さ!」
「え?ちょっと、こういうのって特典とかそういうのは!?って体が消えてる!
待って、まっ!・・・・」
湊の静止も虚しく彼の姿は光に包まれて次の瞬間ベッドから消えていた。
そして、そこに残っていた少年?は少し微笑み、言葉を残して消えた。
「鹿島 湊くん、君に異世界大陸アルバレストの命運がかかっているんだ
どうか魔族と人間族の間の戦争をなくし昔のように争いのない手を取り合っていた世界へ導いてくれ
僕の・・・いや、わたし達の
遅れて異世界に来たんだけど、幼馴染を助けに来たついでに世界救います。 鮭蜜柑 @sa-monmikan
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