異星探索記

オグリ

プロローグ

プロローグ

「今日、集まってもらったのは重大な報告があるからだ。まずは、カルロの話を聞いてもらう」


 町の屈強な男たちが町長の家に集まり、何やら怪しい会議をしている。家の周りには父親の跡を尾行してきた子供たちが数人いる。ただならぬ雰囲気に興味津々しんしんのようだった。

 ある男が立ち上がり壇上に立つ。


「カルロだ。集まってくれてありがとう。早速本題に移る。多分だが『神殿』が見つかった」


 カルロのその一言で集まっていた男たちはどよめき始める。

 『神殿』とは、大昔に存在していた一人の異星人の所有物であり、この世界のどこかに存在するといわれている幻の建築物だった。この世界にはないような高等技術で建設されているというその建築物をこの星の全ての住民が欲していた。


「その話は本当か!」


 座っていた男の一人が興奮を抑えられないといった表情で立ち上がる。


「あぁ。二日前に話してた俺の息子が行方不明になった話を覚えているだろう? あいつが今日、のこのことまるで何もなかったかのように平然とした顔で帰ってきやがったんだ。何があったか話させようとしたら『山を彷徨さまよっていた』って言うだけなんだよ。最初はうちの息子が馬鹿なだけだと思っていた。だがよく確認してみると、山を歩き回っていた時間は1日だけって言うんだ。計算がおかしいだろ? つまりあいつの記憶は1日だけ空白の時間があるんだ。しかも、おかしな能力を持っている事も判明した。その能力があの『異星探索記』に書いてあった異星人の能力と全く同じなんだ!」


 異星探索記、およそ1000年前の異星人が執筆したといわれている日記である。計3巻で構成されているその日記はこの星では使われていない文字で書いてあり、誰も読むことが出来なく、原書の行方は国の役人の一部しか知らない。ただし、その異星人と知人であった獣人が執筆したとされている日記が現在出回っている『異星探索記』である。


 町長が立ち上がり腕を振り上げ、叫ぶ。


「かつて、異星人のおかげで得られた我々の権力はほぼ全て失われた! 魚人、獣人、地底人、精霊の一族のような特別な力がない我々は何としてもあの異星人の『神殿』を得なくてはならない! もし、この話が本当であるならば、我々人間が再び権力を持つことも可能なのだ! 私は早速、王へ報告しに都に行ってくる! その間に何としても探し出すのだ!」


 町長の掛け声と同時に集まっていた男たちが歓声をあげて、立ち上がる。


 全ては、人間の地位向上のために......

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