僕のメイドはパーフェクト~誰か、このメイドの取扱説明書をください!~(休止)
山鳥 雷鳥
第1話 プロローグ
メイドの朝は早い。
日が出てくる前に、寝床から起きる。
睡魔に負けない様に目元を抑えながら、寝所から出ていくと、裏庭にある小さな井戸へと向かう。
「っ! 冷た」
井戸に着くと、冷たい空気にさらされながらバケツから冷たい水をくみ上げ、顔を洗う。
まだ朝の寒さに慣れていない手を誤魔化すかのように素早く顔を洗うと、睡魔に淀んでい意識が目を覚ます。
顔を綺麗に洗い流すと、かじかんだ指で持ってきたタオルを持ち、顔を拭く。
顔を吹き終わると、急いで部屋に戻る。
まだ寝ている
部屋の中に入ると、すぐに着ていた寝間着から仕事着へと着替え、主人に恥をかかせない様に最低限の
小さな鏡で、可笑しい所が無いかと何度も確認すると、忙しなく部屋を出ていき、近くの森で掃除、洗濯、
「おはようございます」
「おう、おはようさん。そこに朝食はあるぞ」
「毎朝、有難うございます……ではいただきます」
屋敷に戻り、すぐに厨房に向かうと、そこには白いエプロンを身に包むシェフがいた。
シェフと短い朝の挨拶を済ませ、端に置かれている
「あー、そう言えば、デメテルはどうした?」
「メイド長なら、先程、廊下でお会いしました」
「そうか、何か言っていたか?」
「何も、いつも通り早起きですね、と」
「そ、そうか」
厨房で他愛も無い会話をしながら、食事を済ませていく。
腹八分まで、満たされると使用した食器を綺麗に片し、厨房から出ていく。
当然、シェフに料理の感想を言ってから。
「これ、持っていきます」
「おう」
厨房から出ていく前に、シェフが準備してくれたティーワゴンを手にする。
カツン、カツン、とまだ朝日が差し込んでいない屋敷の廊下をティーワゴンと共に歩いていく。
それは自身の主を起こす為に、静かに歩き、冷たい空気の中、不気味ながらも美しく。
そして、一つの部屋の前につくと、懐から懐中時計を取り出し、時間を確かめる。
よくできるメイドとは、時間さえも操る。
それは何手先を読む軍師のように、一分一秒たりとも次に何をするべきで次に何ができるのかさえも即時で考え、片手間で主のサポートを行う。毎日、同じようなスケジュールでは無いからこそ、主を支えるために、脳内にある無数の構成の計算を用いて何通りと言う結論を見出す。
カチッ、カチッ、と鳴る懐中時計を眺め、そろそろ主人が起きる時間になると、起こそうと
「!!?」
ガチャ、ババババッ!
「なになになに⁉」
ご主人の為にスカートの下に隠していた、
「え? ………え?」
着ていた寝間着を乱しながら、部屋の主は戸惑いの表情を見せる。
「おはようございます、坊ちゃま」
「え、いや、え?」
「おはようございます、坊ちゃま」
「……いや、おはようございますじゃないんだけど」
「おはようございます、坊ちゃま」
「いや……」
「おはようございます、坊ちゃま」
「………オハヨウゴザイマス」
「おはようございます、坊ちゃま。朝の御機嫌はどうでしょうか?」
「………最悪です」
「そうですか、今日の予定ですが……」
「あれ? 会話出来てる?」
優雅な朝を迎えたメイドの主人は、メイドとの挨拶を済ませ、寝床から出る。
「坊ちゃま、今日は珈琲でよろしいでしょうか? それとも、
「あー、珈琲で良いや」
「分かりました」
メイドの主人がそう答えると、メイドは静かにティーワゴンから珈琲の入ったティーポットを取り出す。
そんなメイドの背後で、メイドの主人は寝間着から制服へと着替え始める。
「坊ちゃま」
「え、何?」
「珈琲でございます」
「あ、ありが………すみません、カップはどこにあるんでしょうか?」
「………………?」
「え………カッ………え?」
「どうかしましたか?」
「いや、カップは⁉」
「?」
「え、マジでないの⁉」
「なにがでしょうか?」
「カップだよ⁉ 普通、珈琲ってカップに入って渡す物じゃないの⁉」
「何を言っているのですか? 坊ちゃま、早く口を開けてください」
「え、これ、俺が間違えてんの⁉」
「なんて言うのは嘘です」
「そ、そうかぁ」
「手を出してください」
「手で受け止めろと⁉」
「そう言う事ではありません、珈琲を淹れたカップを渡します。ですので、早く着替えてください」
「あ、はい」
些細なお茶目な一面を見せながらも、小さなテーブルに珈琲が入っているカップを置く。
すると、着替えを終えた主人は、ゆっくりとソファに腰を下ろすと
「はぁ、やっぱり、この一杯だな。お前の入れてくれた珈琲が一番旨い、紅茶もだけどね」
「……そうですか」
主人のありがたい誉め言葉に、メイドは表情一つも変えず、静かに目を閉じていた。
「にしても……今日も怖かった」
「何がです?」
「………何でも無いです」
清々しい朝を迎えられた主人は、今から始まる一日に心を弾ませながらメイドに語る。
「今日の予定は………」
そして、静かに今日の
それを静かに聞きながら眩しい朝日を身に纏い、珈琲を飲み始める主人。
これは、そんな主人と
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