第22話 フランス戦艦現る
敵味方が入り乱れる海戦では敵艦の特徴を捉え認識する事が重要だ。
フランス戦艦の特徴として主砲射撃指揮所と副砲射撃指揮所を二段に重ねる他国にはない特徴があり見間違えるハズがなかった。
間違いなくリシュリューだ。
「イギリス艦隊の動きは?」
「本艦に続行しようとしていますが追いつけません」
ダカール沖に展開したイギリス艦隊はバーラム、レゾリューションの二隻。いずれも第一次大戦の戦艦で二五ノット以下の速力だ。
対して大和は二七ノット以上の速力を出せる。
他に重巡が三隻いるが彼等に戦艦の相手は無理だ。
「速力を調整しますか?」
「いや、敵に優位な位置を占められたくない。このまま進む」
宇垣は松田の進言を退けた。
確かに戦力は集中して使うべきだ。
だが、敵に優位な位置を占められたくないのも事実だ。
大和の速力で、少しでもフランス艦を優位な位置から叩き出したかった。
「自由フランス船団が続行してきます」
「反転退避させろ」
「伝えていますが、観戦すると言って聞きません」
送られた兵力で勝った気になって、しかも総司令官気取りで観戦。
その神経を松田は理解できなかった。
宇垣も黙ったままだが同じ気持ちだろう。
何度言っても聞きやしないと考え戦闘指揮に集中することにした。
「艦長! 大和を敵艦の鼻先を押さえるように航行させよ」
「了解」
松田は直ぐに宇垣の意見に従った。
助言者として選択肢を提示した、任務を果たしただけだ。
大和だけでリシュリュー級と戦いたいという思いを抱いていたので、願ってもないことだ。
むしろ旧式の英国戦艦など、面と向かって言えないがお荷物と考えていたので尚更だ。
「最新鋭艦との戦いか」
宇垣が珍しく嬉しそうに言う。
建造途中でドイツの接収を免れるため逃げ出した艦だが九割方が完成し、主砲も乗っている。
戦闘力はあるはずだった。
「楽しみです」
松田も期待していた。
フランス艦は重量軽減のため多連装砲塔を前方に二基纏めて配置している。
大和の計画案でも上がった方式であり、どれほどのものか期待していた。
「敵艦発砲!」
リシュリューから激しい光りが放たれた。
「針路そのまま、敵艦に近づく」
宇垣が命じた。
発砲から着弾まで一分以上時間があるが、近づくためあえて大和をまっすぐ進めさせた。
それにフランス艦の射撃能力を見極めたいという思いもあった。
直後、大和の横に水柱が上がった。
海に林立した水柱の数は一二本。
その多さに、見ていた乗員達は目を見張った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます