1940年 ダカール沖海戦
第15話 ジブラルタル沖
1940年9月 ジブラルタル沖
「素晴らしい景色だな」
艦長席から天に伸びるような巨大な山脈を見て松田は呟いた。
ジブラルタルを出港した大和はアトラス山脈を左に見ながら大西洋を南下していた。
直ぐに対岸のアフリカ、そこにそびえ立つ世界有数の山脈であり日本の山々にも劣らぬほど雄大だ。
古からその姿は称えられている。
ギリシャ神話でゼウスとの戦いに敗れたアトラスは天を背負う役目を負わされ、石となり、アトラス山脈となったと伝えられている。
荒唐無稽な話だが、確かにそう思わせるほど、雄大な光景だ。
ヘラクレスが課せられた一二の功業の一つを達成するべく、近道を作るため砕いた名残とされるジブラルタルにそびえ立つ巨岩、ヘラクレスの柱も素晴らしい。
だが、大和の速力を以てしても、景色が変わらないのはそれだけアトラス山脈が大きいからだ。
様々な教養を学んだ松田は、そうした神話を思い出していた。
でなければ、やっていられない。
スカパフロー出撃以来、上官である宇垣が不機嫌なのだ。
宇垣は今回の任務が不満なのだ。
与えられた任務はかつての同盟国にして戦友、フランス海軍、ダカール駐留艦隊を攻撃することなのだから。
このような事態になった理由は、一九四〇年の五月まで遡る。
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