青春ドロップ

れもん

第1話 人の噂も75日

人生でたった一回しか訪れない"青春"という時間。

こんな時間が一生続けばいいのに、と思ったことはありませんか?

その時間、ドロップにしてしまいましょう。

そうすればあなたの記憶も永遠に…






「うわあああ!やばい、遅刻だ!なんで起こしてくれなかったんだ。」

僕の名前は町田悟。

普通の高校3年生だ。


「何回も起こしたよー?起きなかった悟が悪いんじゃん。」

こいつはもう10年の付き合いになる幼馴染、という名の腐れ縁。

見た目はいいが中身はおかん的な感じで残念だ。


「ん、なんか言ったか。」


「っっ、、!何でもないです俺が悪いです。」


「でしょー?じゃあ私先出るからね、遅刻気を付けて、今日の1限村上先生だからね。」


「まじっ、おま、それ早く言えよ。」


「言ったもーん。お先!」


「ちょ、おい!!」


はぁ。最悪だ。今から支度したって到底間に合わない。村上先生怖いんだよな。遅刻したら反省文3枚だっけ。うわ。きつ。

もうさぼってゆっくり行こう。




「ん-、こんなにゆっくり登校したのいつぶりだ?風が気持ちいいな。」


「いよっ!」


「うわあ!誰かと思ったら、」


「おはよ」


「おはよーお、町田。」


「おう。」


「相変わらずそっけないなあ。」


「そうか?普通だけど。お前が明るすぎるんだよ。」


「まあそんなにまぶしいってことか。」


「やかましい。」


「ナイス突込み!」



清々しい風に揺られながら久々3人で登校した。


「なんか今、すげえ青春っぽくね。」


「陽太は青春すぐ感じすぎなんだよ。」


「春香の言うとおりだ。」


「もう2人してそんなに僕が好きだからっていじめないでっ。」


「「好きじゃない。」」


「もう、照れ屋さんなんだから!あ、そういえば瞳は?お前らいつも一緒じゃねーの。」


「あいつは先行った。村上先生の授業だからーって。てかその誤解生みそうな言い方やめろよ。ただの幼馴染なのに。」


「村上先生、、、忘れてたああああ!なんでもっと早く言ってくれなかったんだよこの薄情者!」


「え?だってもう間に合わないし、俺、悪い?」


「知らない陽太が悪い。私は今日1限自習だから余裕。」


「お前も薄情者だったのか。」



こんな話をしていたらあっという間に学校到着。

まあ間に合うこともなく、ちょうど2限始まる少し前だったから村上先生とも出くわさず、「ラッキー!」と喜んでいる奴若干一名。この後放課後呼び出されるなあ。と感じている奴若干一名

まあ俺の予測通り昼休みに【放課後職員室へ】の手紙をもらった。

仕方ない。怒られるか、と腹をくくった俺を横目にあいつは逃げ出した。

本当に考えなしというか。あほというか。



「おい町田、望月はどうした。」

「なんか、用事があるとかで帰ると、、、あはっ、、」

「どうしようもない奴だな。」

「あはは。」

と俺が愛想笑いしていると先生が

「こんな瞬間ドロップにできないなあ。」

「ドロップ?飴ってことですか?」

「知らねえのかお前。学校の近くに古い駄菓子屋があるだろう。」

「はあ。」

「もしかしてそれも知らねえのか!右右左、一回回って左左右。だろ」


確かにそんなような話2か月前くらいにクラスの子が話していたような気がする。


「そのお店がどうしたんですか?」

「毎年うちの学校の3年はこの時期に青春をドロップにできるっていううわさが広まるんだよ。俺もここの卒業生だからな、懐かしい。」

「青春を、ドロップに、?」


何言ってんだ、と思う反面、気になる気持ちもある。何せ俺は昔からオカルトが大好きなのだ。あのロマンは癖になる。


「けどそんな話今はだれもしてませんよ?」

「人の噂も75日っていうだろ。あっという間に広がって、あっという間に過ぎていく。青春なんてそんなもんだ。」

「なんか先生、、、かっこいいっすね。」

「だろ??」

「あはは。」


俺は愛想笑いが得意だった。






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青春ドロップ れもん @lemo_nn

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